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「世界に輝く静岡」という壮大なビジョンで、今こそ まちをひとつに

「世界に輝く静岡」という壮大なビジョンで、今こそ まちをひとつに

静岡県静岡市

「平成の大合併」で誕生した静岡市が挑む「地方創生」に向けた取り組みの集大成

「世界に輝く静岡」という壮大なビジョンで、今こそ まちをひとつに

静岡市長 田辺 信宏

※下記は自治体通信 Vol.21(2019年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


平成11年の旧合併特例法改正以降、国が進めた「平成の大合併」。多くの自治体が新市移行に踏み切るなか、とりわけ、中核市の静岡市と特例市の清水市による合併は当時、「全国一の大型合併」として注目された。新生・静岡市が発足して16年が経過。市長の田辺氏は、「世界を意識した政策によって真の合併効果を発揮していくのは、これから」と語る。同氏に、そのビジョンを聞いた

8年計画で試される信条「一人の百歩より、百人の一歩」

―静岡市では、市の総合計画が8年間という長期スパンで策定されていることが注目されています。その狙いはなんですか。

 総合計画で打ち出す「世界に輝く静岡」という大きなビジョンを実現するには、ある程度長い時間軸で計画を進める必要があったからです。これまでの5ヵ年計画では期間としては短すぎ、しかも計画の途中でトップが交代し、継続性が担保できないケースも起こりえる。そのため、市長の任期に合わせたうえで、前期4年、後期4年の計8年計画としたのです。

 さらにもうひとつ、総合計画でこだわった点がありました。

―それはなんですか。

 市民に広く配布する冊子の編集スタイルです。従来の行政文書とは一線を画して右綴じの雑誌形式とし、内容も読みやすさを重視して、写真やイラストを多くあしらったビジュアルにしたのです。その狙いは、この冊子を、ひとりでも多くの市民の皆さんに手に取ってもらうためです。

 総合計画で打ち出したビジョンを実現するには、いかに一人ひとりの市民に当事者意識をもってもらい、市の取り組みに参画してもらえるかが最大のポイントになります。私自身、これまで「一人の百歩より、百人の一歩」を政治信条にしてきましたが、まさにそれが今後の政策で問われるわけです。

 同時に、市民に参画を求める以上、情報公開も必要で、それは伝わりやすいものでなければいけません。そのため、総合計画の策定にあたり特に意識したのが、行政の計画にありがちな総花的な計画から脱し、メリハリをつけること、そして、「17歳の高校生が読んでも理解できるような構成」でした。

大合併から15年「静岡市をひとつにしたい」

―総合計画にある「世界に輝く静岡」という壮大なビジョンに込めた想いを聞かせてください。

 そこには、「静岡市をひとつにしたい」という強い想いがありました。現在の静岡市は、平成15年から平成20年にかけて旧静岡市、旧清水市、旧由比町、旧蒲原町という4つの自治体が合併して誕生したという経緯があります。

 商業を中心として発展してきた静岡市に対し、港町として栄えてきた清水市、また漁業関係者が多い由比町に対し、ビジネスパーソンが多い蒲原町というように、それぞれの地域は、重ねてきた歴史に違いがあり、まちの個性や市民性も異なります。合併後15年を経た今も、まだ十分にひとつになった強みを発揮できていない部分があるのは事実です。

 こうした違いを乗り越え、一体感を強みに変えていくには、「世界を意識した静岡市をつくる」という壮大な目標を掲げることで、より高い理想を共有していく意識を市民にもってもらうことが重要だと考えたのです。

―「小異を捨てて大同につく」という意識をもってもらおうと。

 そのとおりです。総合計画で打ち出した「世界に輝く静岡」の実現に向けてSDGsという国際目標をいち早く取り入れたのも、同じ理由からです。世界水準の都市を目指すうえで、より強化すべき分野、取り組むべき施策群である「5大構想」、これに世界共通の目標であるSDGsを組み込むことで、本市の進める取り組みが「世界」を意識したものであると市民一人ひとりに訴えかけることにしたのです。

「5大構想」を通じた、世界水準のまちづくり

―「5大構想」の中身を教えてください。

 これは、本市が最優先で取り組む施策群のことで、「世界に存在感を示す3つの拠点づくり」と「生活の質を高める2つの仕組みづくり」を指します。

 まず、3つの拠点づくりとは、静岡都心における「歴史文化の拠点づくり」と清水都心における「海洋文化の拠点づくり」、草薙・東静岡副都心における「教育文化の拠点づくり」からなるハード整備を念頭に置いた都市デザインに基づくまちづくりです。本市が有する「オンリーワンの資源」を最大限に活用し、みがきあげ、まちの価値創造力を高めていくもので、静岡市が内包する多様な地域性といった魅力を活かすことが狙いです。

 たとえば、「歴史文化の拠点づくり」では、徳川家康公が晩年を過ごした駿府城公園周辺の魅力を高め、来訪者の増加による地域経済の活性化を図るとともに、「平和都市・静岡」を世界にアピールすることを目標にしています。

―2つの仕組みづくりとは、どのような内容ですか。

 「健康長寿のまち」と、「まちは劇場」という2つの政策に取り組んでいます。前者は、国が進める地域包括ケアシステムと連携し、気候が温暖で住みよい静岡の魅力を活かし、人生100年時代に、住み慣れた地域で暮らせる仕組みをつくろうとしています。

 後者は、まち全体が成熟したヨーロッパの都市のように、広場や街角など人が集まるスポットにストリートミュージシャンや大道芸人がいる風景を日常とし、「わくわくドキドキ」する空間づくりを進めています。

―静岡市では、大道芸ワールドカップが毎年開催されていますね。

 ええ。あの世界に誇れるイベントを常時、開いていくイメージですね。こうした都市文化の醸成を図る取り組みを通じて、文化・クリエイティブ産業を成長産業として育てていく狙いです。


一人ひとりが個性を活かし、人生を謳歌できる環境を

―8年計画はすでに折り返しを迎えています。これまでの成果はいかがですか。

 種は蒔き終わったと思っています。今年、開港120年を迎えた清水港を中心とした清水のまちづくりでは、行政と港湾関係事業者による公民連携により、20年後の目指すべきまちの姿を描いた「清水みなとまちづくりグランドデザイン」を策定したところです。このデザインで示されたまちの姿を実現すべく、現在、清水港周辺に集積する行政、民間企業、教育機関などとの連携による「国際海洋文化都市」の実現に向け、シンボルとなる海洋文化施設の建設などの取り組みを進めています。

―今後の市政ビジョンを教えてください。

 「世界に輝く静岡」とは、つまるところ、一人ひとりの市民が自分の個性を活かして人生を謳歌し、輝いている状態のことだと思っています。そのための生活環境、都市環境を提供することができるモデル都市として、静岡市の魅力を発信していきたいのです。端的に言えば、「静岡に住めば、健康で長生きできますよ」というメッセージを送りたいのです。これからの4年間で総合計画や「5大構想」の花を咲かせ、世界に輝く静岡を実現に近づけていきます。


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