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「新型コロナ」への危機管理に万全を期し、「稼ぐ力」による力強い経済復興を果たす

「新型コロナ」への危機管理に万全を期し、「稼ぐ力」による力強い経済復興を果たす

鹿児島県

県民の安心・安全の先に描く鹿児島独自の地方創生ビジョン

「新型コロナ」への危機管理に万全を期し、「稼ぐ力」による力強い経済復興を果たす

鹿児島県知事 塩田 康一

※下記は自治体通信 Vol.27(2020年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


各自治体が特色ある取り組みを見せてきた地方創生に、大きく水を差した新型コロナウイルスの感染拡大。各地で対応が進むなか、鹿児島県でも今年7月に知事に就任した塩田氏のもと、新型コロナウイルス感染症対策をはじめとする危機管理対策を重点施策のひとつと位置づけ、県民の安心・安全と経済活動・社会活動の両立を掲げている。大規模自然災害の頻発もあいまって重要性が一段と増す危機管理対策と、その先に描く鹿児島県独自の地方創生ビジョンについて、同氏に聞いた。

地方創生を実現するうえで、まずは県民の安心・安全が重要

―今年7月の知事就任以降、最重要課題と位置づけている施策はなんですか。

 鹿児島県が誇る豊富な地域資源を最大限に活用し、地方創生の実現を図ることです。本県には、南北600kmに連なる多くの離島が存在し、特色ある文化や自然に恵まれています。そうした多様で豊かな地域資源を活かした観光関連産業や農林水産業は、本県の基幹産業となっています。

 しかし、今般の新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、それらの産業は大変厳しい状況にあります。その支援は喫緊の課題ですが、地方創生を実現するうえでは、まずはその前提となる県民の安心・安全を実現する危機管理対策が重要になります。鹿児島県では、7月にクラスターの発生が続き、県民の危機意識が大きく変わりました。その直後の知事就任となったこともあり、特に新型コロナウイルス感染症対策に対する要望は大きいと認識しています。そのために、知事選の公約にもとづき、まずは新型コロナウイルス感染症対策をしっかりと進めます。

―どのような施策を進めているのでしょう。

 具体的には、基本的な感染防止対策や「新しい生活様式」の実践例を県民へ示し周知を図るとともに、不特定多数の顧客と接する機会の多い中小企業、個人事業者などにおける感染防止対策への支援、医療提供体制の強化などに取り組んでいます。また、クラスターによる感染拡大を抑制するため、濃厚接触者などに対するPCR検査の確実な実施に努めています。

 同時に、業種別のガイドラインを遵守しながら感染防止対策に積極的に取り組む事業者に対しては、鹿児島県独自の「新型コロナウイルス感染防止対策実施宣言ステッカー」を発行するなど、県民が安心して利用できる施設や飲食店などの「見える化」を図っています。

防災・減災対策の効果から、事前防災の重要性を再認識

―今年も大きな自然災害が立て続けに鹿児島県を襲いました。広く危機管理の観点から、災害対策の状況はいかがでしょう。

 昨年度に県独自の「地域強靱化計画」を見直し、ハード・ソフト両面で強靱化対策に全力で取り組んでいるところです。本県は集中豪雨や台風の襲来が多いうえ、本土の大半が水を含むと崩れやすいシラスなどの特殊土壌に覆われる地理的・地形的特性から、被害が深刻化しやすい状況にあります。「令和2年7月豪雨」では、河川の氾濫や土砂災害により、県内ではお一人が亡くなられたほか、住家被害をはじめ道路や農地、農作物などで多大な被害が発生しました。また、その直後に襲った台風10号でも停電・断水の発生や、港湾・漁港施設などでの被害が発生しています。

 一方で、これまで重点的に防災・減災対策を実施してきた箇所では、対策の効果が十分に発揮された例もありました。

―どのような例ですか。

 具体的には、今年度までの3ヵ年で約316億円の事業費を投じて、36河川の河道の掘削や、河川監視カメラの設置を16ヵ所、治山施設の設置などを11ヵ所でそれぞれ進めています。また、5漁港で陸揚げ岸壁の耐震化、農地海岸堤防を4ヵ所で整備するなど集中的な対策を実施しています。

 その効果もあって、今回の豪雨・台風では、甚大な被害が発生した昨年6月の大雨を上回る雨量が観測されたにもかかわらず、家屋の浸水被害はなく、事前防災の重要性を再認識したところです。引き続き抜本的な治水・治山対策や災害に強い道路ネットワークの形成など、強靱な県土づくりを推進していきます。

観光地域としての「稼ぐ力」を引き出す

―こうした危機管理対策を充実させた先に、地方創生をどのように推進していきますか。

 基幹産業である観光関連産業の早期回復とさらなる活性化が重要です。本県独自の経済対策として打ち出した「ディスカバー鹿児島キャンペーン」では、県民の県内宿泊需要の掘り起こしを図りました。

 さらに今後は、宿泊施設や交通事業者が行う感染防止対策を徹底するための取り組みへの支援や「感染防止コンシェルジュ」の養成とともに、県内外からの宿泊を促す旅行商品や宿泊料金の割引助成、事業者が行う誘客の取り組みを助成する「観光かごしま回復事業」を展開していきます。

―切れ目なく対策が実施されているのですね。

 はい。その先には、観光消費額の増加を図り、交流人口の増加を地元の雇用促進にしっかりとつなげ、観光地域としての「稼ぐ力」を引き出していきます。そのためには、商工業者や農林水産業者、さらには地域住民といった幅広い多様な関係者が連携し、「観光地域づくり」に取り組むことが重要です。


県民と一緒に、鹿児島の今と未来をつくる

―塩田さんが行政を推進していくうえで、大事にしていることはなんですか。

 政策に県民の声を反映させ、透明で開かれた県政運営を行う姿勢を大事にしています。県民の声を聞かなければ、効果のある政策はつくれませんから。県民と真の対話を行う場としては、この10月から新たに「知事とのふれあい対話」を開始します。初回は徳之島、2回目は北薩での開催が決まっており、その後も順次県内各地で開催していきます。そこでいただいたご意見はできる限り政策に反映し、県勢発展の基盤をしっかり築いていきたいと考えています。

―新型コロナウイルスの影響で延期になっていた「かごしま国体・かごしま大会」は、このほど3年後の開催が決まりましたね。

 今回の決定は、県民に大きな喜びをもたらしました。決定にあたり、大変難しい調整にご尽力いただいた後催県である佐賀県の山口祥義知事をはじめ、県民のみなさんには感謝の気持ちで一杯です。今回の決定により、2年続けて九州での開催となりました。山口知事からは「双子の大会」という言葉もいただきましたが、今後両県が連携を深めながら両大会を成功に導ければ、九州のさらなる団結のきっかけにもなると期待しています。

 「かごしま国体・かごしま大会」がアスリートにとっての夢だけではなく、経済効果の面でも県民にとって期待がもてる大会となるように、万全の準備を進めていきます。同時に、新型コロナウイルス感染症の収束後の力強い経済復興、そしてさらなる成長に向けて、県一丸となって取り組んでいきます。


塩田 康一 (しおた こういち) プロフィール
昭和40年、鹿児島県鹿児島市生まれ。昭和63年に東京大学法学部を卒業し、通商産業省(現:経済産業省)に入省。熊本国税局人吉税務署長、在イタリア日本国大使館一等書記官、経済産業省官房審議官などを歴任。平成30年、九州経済産業局長に就任。令和元年に経済産業省退官。令和2年、鹿児島県知事選挙に出馬し、当選。7月に鹿児島県知事に就任。
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