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「地産外商」路線を継承した県独自の地方創生策を推進

中央と地方の共生が求められる時代は、高知の強みが活かせるチャンスです

中央と地方の共生が求められる時代は、高知の強みが活かせるチャンスです

「地産外商」路線を継承した県独自の地方創生策を推進

中央と地方の共生が求められる時代は、高知の強みが活かせるチャンスです

高知県知事 濵田 省司

※下記は自治体通信 Vol.38(2022年5月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


第6波を経験した新型コロナウイルスの感染拡大だが、医療逼迫の懸念が遠ざかりつつあるいま、各自治体ではそれぞれの特色を前面に押し出した独自の地方創生に力を入れる段階を迎えようとしている。これまで、「地産外商」をキャッチフレーズに県産業の振興に力を入れてきた高知県では、いまその政策の進化に乗り出している。取り組みの詳細や、そこでの知事としての役割などについて、同県知事の濵田氏に話を聞いた。

高知県の将来像を形づくる、3つの重点政策

―令和元年12月の就任から、1期目も半ばを過ぎました。この2年間をどのように振り返りますか。

 就任後2ヵ月にして県内で初めて新型コロナ患者が確認されて以降、第6波まで経験したこの間は、新型コロナ対策に追われた2年間でした。ただし、人口70万人規模の高知県では、大都市における「医療崩壊」のような深刻な状況はなんとか回避してきました。まん延防止等重点措置の指定も2回にとどまり、飲食店などへの営業時短要請も長期に及ぶことはなかったため、感染拡大の影響を最小限に抑えられたのではないかと考えています。

 こうしたコロナ対策の一方で、この間は将来の高知県像を形づくるため3つの分野で重点政策を進めてきました。アフターコロナ時代を見据え、それらの政策を力強く推進していくことが今後の最重要課題だと認識しています。

―3つの重点政策とは、どのようなものでしょう。

 一番の中心的なテーマは、「経済の活性化」です。将来を担う若者がイキイキと働ける環境をつくり出すために、経済的に高知を元気にしていくことは、就任時から県政の最優先課題に位置づけています。前知事時代以来、「地産外商」というスローガンを掲げて県産品を積極的に県外に売り込んでいます。

 2つ目は、「健康長寿県づくり」です。人口減少や少子高齢化といった社会課題が全国に先駆けて進展している高知県は、いわば課題先進県でもあります。健康寿命の延伸や子育て環境の充実を柱とする「日本一の健康長寿県構想」は、そうした課題に向き合う本県の重点政策にほかなりません。

 そして3つ目が「安心安全な県土づくり」。今後30年以内に70~80%の確率で発生すると言われている南海トラフ地震への対策は、本県にとっては近年、非常に深刻な課題であり続けています。

 この3つに、「教育の充実」「インフラ整備」を合わせて県政運営の「5つの基本政策」と位置づけています。

キーワードは「デジタル化」「グリーン化」「グローバル化」

―それらの重点政策を、いかにして推進していく考えですか。

 私は、これからの時代を動かしていくキーワードは3つあると考えています。それは、「デジタル化」「グリーン化」「グローバル化」です。この3つのキーワードは、県の政策を進化させていく際にも指針になるものだと考えているのです。先ほどの3つの重点政策が縦軸だとすると、この3つのキーワードは、いわばそれらの政策を貫く横軸と位置づけ、具体化を図っていきます。

―詳しく教えてください。

 たとえば、「経済の活性化」政策をデジタル化の視点で進化させる取り組みとして、本県ではIoTならぬIoP(Internet of Plants)を打ち出しています。これは、インターネットを活用した次世代型施設園芸農業プロジェクトです。長い日照時間と温暖な気候を活かし、すでに本県はハウス園芸農業の生産性が日本トップクラスと言われていますが、その強みをデジタル化でさらに伸ばしていくのが狙いです。ビニールハウスをインターネットでつなぎ、環境情報や生育情報といったビッグデータをクラウド型のデータベースで管理し、収量や収穫時期などを調整していくことで、農家所得の向上につなげていく。これは本県が取り組む、デジタル化を軸にした産業育成のど真ん中にある施策です。

グローバル化の促進は、県の施策の重要な切り口

―「グリーン化」や「グローバル化」の視点では、どのような進化を考えているのでしょう。

 「グリーン化」に関して言えば、先ほどのIoPにくわえ、林業の持続可能な成長を重要テーマに掲げています。林野庁のデータで森林面積率が全国1位の本県にとって、林業は古くから県の主要産業のひとつであり、経済のグリーン化が重視される時代において、林業の持続可能な発展はますます注目されるテーマになります。2025年の大阪・関西万博では会場整備に本県の木材の活用が決まるなど県産材の普及促進にも追い風が吹いており、林業の再生・振興には引き続き力を入れていきます。

 一方、「グローバル化」は、いまや地産外商路線の主戦場とも言えます。県産の柚子や土佐酒、クロマグロなどは海外市場への輸出が急増しています。インバウンド観光客の流入は一時的に止まっていますが、県産品の輸出促進や県産業での外国人材の活用といった点も含め、グローバル化の促進は県の施策の重要な切り口です。

高知の生きる道

―「経済の活性化」には、高知県の特色が強く反映されていますね。

 そこは強く意識しているところです。人口約70万人の小さな県ですが、歴史や文化、自然環境といった独自の魅力を備えているのが高知県だと思っています。これまでは、大都市圏からの距離がハンデとなり、製造業の立地が進まないといった課題がありました。しかし、だからこそ、自然環境が守られ、独自の一次産業の成長につながったという側面もあります。コロナ禍を経験した社会の価値観は、大きく変わっています。大都市圏に人や金が集中する経済モデルは合理的ではありますが、地方の豊かな自然や経済の持続可能性が見直される動きはさらに強まってくるはずです。中央と地方の共生が求められるこれからの時代こそ、高知県の強みが活かせるチャンスなのではないかと感じています。

―今後の県政ビジョンを聞かせてください。

 地産外商を推進してきた前知事は、「対話と実行」を県政運営の方針に掲げていましたが、私はそれをさらに一歩深化させて、「共感と前進」を掲げています。対話を重ねた末に県民の共感を得ていきながら、施策を実行した結果として一歩でも二歩でも前進させていきたいのです。共感を得るためには、徹底した情報の透明化が必要ですし、施策を前進させるためには、職員一人ひとりが使命感をもって行政にあたり、時代の変化に対応し県庁自身が進化していかなければなりません。その先に、世界全体が目指す持続可能な社会に、高知の強み・独自性を活かして貢献していく。それこそが、高知の生きる道だと思っています。

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濵田 省司 (はまだ せいじ) プロフィール
昭和38年、高知県生まれ。昭和60年、東京大学法学部を卒業後、自治省(現:総務省)に入省。省内において消防庁国民保護・防災部防災課国民保護室長、自治財政局公営企業課地域企業経営企画室長、消防庁予防課長、自治税務局都道府県税課長、自治税務局企画課長、大臣官房参事官(秘書課担当)などを歴任。その後、内閣府大臣官房審議官、大阪府副知事などを経て、令和元年12月、高知県知事に就任。現在1期目。
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