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県内一体の理念が随所に貫かれた県政運営方針

「オール岐阜」体制で地域の力を結集し、県民の誇りと魅力を込めた政策を推進

「オール岐阜」体制で地域の力を結集し、県民の誇りと魅力を込めた政策を推進

※下記は自治体通信 Vol.58(2024年6月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

コロナ禍が収束し、インバウンド観光の需要が回復傾向を強めるなか、近年存在感を高めているのが岐阜県だ。5期目を務める知事の古田氏のもと、「オール岐阜」を合言葉に、県内関係者が一体となって進めるプロモーションは海外からの評価も高い。この「オール岐阜」体制は、昨今の危機管理対応でも真価を発揮しているという。県内一体となった県政運営の取り組みについて、同氏に聞いた。(取材は令和6年2月14日に行いました)

インタビュー
古田 肇
岐阜県知事
古田 肇ふるた はじめ
昭和22年、岐阜県岐阜市生まれ。昭和46年、東京大学法学部卒業後、通商産業省(現:経済産業省)に入省。内閣総理大臣秘書官(羽田内閣、村山内閣)、経済産業省商務流通審議官、外務省経済協力局長などを歴任。平成17年2月、岐阜県知事に就任。現在、5期目を務める。

能登半島地震でも発揮された、「オール岐阜」体制の真価

―岐阜県知事として5期目も半ばを過ぎました。この間の県政をどのように振り返っていますか。

 5期目に関しては、新型コロナウイルス感染症への対応に代表されるように、「県民の生命と暮らしを守り抜く」ことを最優先に、県政運営を行ってきました。「コロナ対策」では、当時活用され始めたオンライン会議の利点を活かして、行政や医療機関、産業界など各界の幅広い関係者に集まってもらい、短時間で施策実行へのコンセンサスを形成する試みを重ねてきました。

 この難局を通じて構築された「オール岐阜」体制の精神やノウハウは、将来の新たな危機事案対応に活かされるものとして、継承すべき当県の貴重な財産になったと考えています。実際に、今年1月1日に発生した能登半島地震においては、その経験が当県の支援活動に活かされました。

―能登半島地震では具体的に、どのような支援を行ったのですか。

 石川県は当県の隣県であり、さまざまな御縁がありますので、まずは総力を挙げて支援することを決めました。一方で、当県も被災県でしたので、県内の被災状況などを確認したうえで、1月1日夜から石川県への応援派遣を実施してきました。その際には、行政や警察、消防、医療機関など関係機関が一堂に会して現地情報や当県の支援状況などを逐一共有し、リアルタイムに判断を下して応援体制を組んでいくなど、まさにコロナ禍で構築した「オール岐阜」体制を運用してきました。

 この体制の下、当県が対口支援*団体に指定された中能登町(1/4指定)や輪島市(1/13指定)をはじめとして、広範囲にわたる被災地への支援活動に、総力を挙げて取り組んでいます。

―今回の被災地支援では、どのような考えのもと、陣頭指揮をとってきたのでしょう。

 この対応の中で、私は「明日は我が身」ではなく「今日の我が身」だと周囲にも伝え、自分事として事態を捉えるよう強く戒めてきました。ですから、送り出す職員には、現地の状況や課題を自ら見つけて、それをフィードバックすることこそ、将来の岐阜県の足腰を強くすると説明しました。そうした考えに多くの市町村も力強く賛同してくれ、最終的には県内42市町村すべてから人を派遣する、文字通り総力を挙げての支援につながりました。

*対口支援: 被災した自治体のパートナーとして特定の自治体を決めて職員を派遣する制度

県民のアイデンティティ「清流の国ぎふ」

―県政の推進において、「オール岐阜」が1つのキーワードになっているようですね。

 そのとおりです。ただし、この「オール岐阜」体制は、危機管理に限った話ではありません。「『清流の国ぎふ』ブランド」の発信にも、県内市町村、関係団体と連携しつつ、「オール岐阜」で観光・食・モノの三位一体によるプロモーションを実施しています。岐阜県は、飛騨牛や鮎といった「食材」、美濃焼や関の刃物といった「ものづくり」、清流長良川などの「自然」、地歌舞伎や郡上おどりなどの「伝統文化」など豊かな資源を有しています。県では、こうした「清流の国ぎふ」が育んだ魅力をさらに磨き上げ、ブランディングし、国内外に発信する取り組みを進めています。

―「清流の国ぎふ」という語には、どのような想いが込められているのですか。

 この「清流の国ぎふ」というフレーズは、県の総合戦略の名称にも掲げられているものでもあり、「地域のアイデンティティ」を表現した語です。本県には、長良川、木曽川、揖斐川をはじめとする「清流」があまねく流れ、自然と人、地域、そして時代をつないでいます。県民にとって「清流」はいわば地域の誇りや魅力の源なのです。私は、政策の中には県民との共通の想いや依って立つ魂が入っていなければならないと考えており、観光政策や地域振興、健康福祉などあらゆる政策を展開する際に、この「清流の国ぎふ」をコンセプトとして打ち出してきました。

コロナ禍収束で見え始めた、インバウンド戦略の成果

―観光政策では最近、特に海外からの注目が高まっていますね。

 当県は内陸県なので、特にインバウンド観光には十数年前から力を入れてきました。世界に20億人を擁するハラール市場にいち早く注目し、「オール岐阜」でアプローチする戦略を地道に実行してきたのも、その一例です。当時は海外から当県への観光客数は年間15万人程度でしたが、コロナ直前には166万人に達するまでに拡大しています。コロナ禍が収束し、インバウンドが回復基調にある今、そうした取り組みの成果が表れてきているのだと思います。国際認証団体グリーン・デスティネーションズによる「世界の持続可能な観光地100選」において、令和2年から3年連続で「白川村」「長良川流域」「下呂市・下呂温泉」が相次いで選出されたのも、そうした成果の1つかもしれません。さらに、令和5年には国連の世界観光機関が推進する「持続可能な観光地づくり国際ネットワーク(INSTO)」に本県が我が国として初の加入を認められています。

県政運営の3つの柱

―最後に、今後の県政運営の方針を聞かせてください。

 確かな未来の創造に向けて、3つの柱で県政を運営していきます。第一に、「持続可能な『清流の国ぎふ』づくり」として、自然災害への備え、人や産業への未来投資、GX・DXへの積極的な取り組みを進めていきます。

 第二に、「暮らしやすい『清流の国ぎふ』の実現」として、経済対策や暮らしの安全安心の確保、少子化対策を推進します。

 そして第三に、「『清流の国ぎふ』の魅力向上と発信」として、本県が誇る「清流文化」の創造・発信、さらにはインバウンドの推進や国際交流の深化を図ります。今年7~8月には、文化部のインターハイである全国高等学校総合文化祭「清流の国ぎふ総文2024」を、10~11月には国内最大の文化の祭典である国民文化祭 全国障害者芸術・文化祭「『清流の国ぎふ』文化祭2024」を開催します。まさに本県にとっての「文化イヤー」であり、全国の注目を集めることが期待されます。あわせて、ポーランドやハンガリーなど本県とゆかりのある国々との交流も深め、世界に開かれた文化の大交流を実現していきたいと考えています。

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