公務員が幸せになることが住民の幸せにつながる!?
皆さん、はじめまして。島田正樹と申します。
2月に『仕事の楽しさは自分でつくる! 公務員の働き方デザイン』(学陽書房)という本を出させていただきました(拙著をご紹介する機会をいただき誠にありがとうございます)。
私は「公務員が充実した気持ちでイキイキと働くことが、住民の幸せにつながる」つまりは「幸せな公務員が増えることで住民をもっともっと幸せにできる」という想いを持っています。
その想いを込めて、公務員が仕事をつうじて幸せになるための様々な「デザイン」についてお伝えするために、この本を書きました。
税の申告を受け付ける職員も学校施設の修繕計画を管理する職員も庁内の調整に奔走する企画部の職員も、公務員ひとりひとりが幸せを感じ、充実した気持ちで働くことが、住民を幸せにするようないい仕事につながるはずです。
でも、私たちの業界で働いているとこんな声も聞こえてきます。
…どうせ、あと1~2年しかこの仕事も担当できないし…
…どうせ、新しい取組は上司に認めてもらえないし…
…どうせ、あの部署は自分たちの仕事じゃないと言うだろうし…
人事異動、上司との関係、独特な慣習や価値観など、役所で働いていると様々な「どうせ」に直面しますが、「あの人たち」や「組織」が変わらなければ、このモヤモヤを解消できないのでしょうか?
この問いに対する私の答えは「否」です。
確かに「あの人たち」も「組織」も私たちの想うように変えることはできません。
でも、人事異動であれ上司との関係であれ、そこに課題があるとしたら、私たち職員ひとりひとりにできることが何かしらあるはずです。
私たちは微力かもしれませんが無力ではありません。本書では、そんな「私たち職員ひとりひとりにできること」を実行するための「行動と考え方のデザイン」をお伝えしています。
本書の内容
私自身は、飛びぬけた実績のない、どこにでもいる地方公務員です。
でも、常に「自分のキャリアの違和感」と向き合いながら、それでもイキイキと楽しく働き、求められた役割を果たしてきたつもりです。
元々、さいたま市に化学技師として入庁して最初は公害対策といった化学技師らしい業務を担当していたのですが、いつの間にか化学技師としては珍しいキャリアを歩むようになる中で、しばらくの間モヤモヤを感じていました(下の囲み記事「~著者の経験~」参照)。
当時は、心のどこかで「この組織は化学技師である私のキャリアをどう考えているんだろう」という不安と不信感の入り混じった思いを抱えていたのだと思います。
~著者の経験~
◎官民連携の電気自動車のプロジェクトを立ち上げ自動車メーカー等と連携
◎内閣府で規制緩和や地方創生、広報などを担当
◎市役所に戻って長年実現しなかった駅前の公有地の有効活用を担当
◎昨年は住民に10万円を給付する特別定額給付金のチームにも臨時で配属
本書は、そんな私の経験や学びの中から、「仕事」「人間関係」「心のあり方」「プライベートの時間」そして「キャリア」の5つの分野(CHAPTER)の42のデザインについてお伝えしています(下図参照)。
5つのCHAPTER、42のデザインでお伝えしようとしているのは「自分の人生のハンドルは自分の手で握ろう(=主体的に生きよう)」というメッセージです。
本書は本文の中に多くの問いかけを散りばめるとともに、各項目の最後には「TIPS」として具体的な行動を促す問いや行動の提案をさせていただくことで、読んで終わらず、自分の状況を振り返ることができる仕かけになっています。
きっと、読んでくださるひとりひとりが、42のデザインの中から自分なりの「働き方デザイン」について考えるキッカケを見つけていただけるはずです。
春は「働き方デザイン」の季節
本書が発売開始となって1ヵ月が過ぎました。
おかげさまで、ネット書店で温かいレビューを付けていただいたり、SNS上やブログなどでもお読みいただいた感想をたくさん投稿していただきました(できるだけ総て読むようにしています!)。
いただいた感想の中には「背中を押される」「優しい」といった言葉が多く見られます。本当に感謝しています。
記事の前半でも書きましたが、私はこの本を「公務員が幸せになりますように」という願いを込めて書きました。
本書の中でもその想いが特に強く込められているのが「CHAPTER3 心のあり方をデザインする」と「CHAPTER5 キャリアをデザインする」です。
この2つのCHAPTERは、人事異動などで環境が大きく変わる春にこそぜひ読んでいただきたいデザインを多く掲載しています。
例えば、《心のあり方のデザイン》として「不本意な人事異動との向き合い方」や「組織に共感できないときのモチベーションの保ち方」「心の元気が出ないときの対処法」など、《キャリアのデザイン》としては「ポータブルスキル」「仕事は課の名前では決まらない」「偶然をキャリア形成の味方につける」などについて書かせていただきました。
これらの中から、この春、キャリアの節目を迎える皆さんにヒントをお届けできたり、励ませたり、優しく背中を押すようなデザインを見つけていただけたら嬉しいです。
さいごに
今、企業の人材開発や組織開発などの分野では、従業員満足度、従業員幸福度、エンゲージメント(従業員の組織や仕事への愛着)などに注目が集まっています。それは従業員のためではなく、生産性向上や人材獲得のために経営戦略として必要だからです。
一方で、役所では政治との関係や住民への説明責任といった観点から、「職員がどんな気持ちで組織や仕事と向き合うか」という点への配慮は優先順位が低くなりがちです。
そうであるなら、人事部門や管理職といった外部の環境が変わるまで待つのではなく、自分たちでできること、すなわち、ひとりひとりが「行動や考え方のデザイン」にひとつずつ取り組むことが大切なのではないでしょうか。
必要なのは、公務員ひとりひとりが自分の人生を主体的に生きること。そして、その結果として住民が幸せになるような仕事ができることです。
本書が少しでもそのお役に立てたら幸いです。
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島田 正樹(しまだ まさき)さんのプロフィール
さいたま市 都市局 東日本交流拠点整備課 主査(2012年3月末現在)
2005年、さいたま市役所に化学技師として入庁。 環境対策課、交通環境対策課、環境未来都市推進課、内閣府・内閣官房(地方創生)を経て現職。
内閣府・内閣官房派遣中に技師としてのキャリアに悩んだ経験から、業務外で公務員のキャリア自律を支援する活動をはじめる。 それがきっかけとなり、「NPO法人 二枚目の名刺」への参画、地域コミュニティの活動、ワークショップデザイナーなど、「公務員ポートフォリオワーカー」として、パラレルキャリアに精力的に取り組む。
また、これらの活動や、公務員としての働き方などについて広く伝えるために、ブログやnote「島田正樹|公務員ポートフォリオワーカー」で発信するとともに、地方自治体の研修や「自治体総合フェア」等イベントでの講演を行う。
『月刊ガバナンス』(ぎょうせい)や『公務員試験受験ジャーナル』(実務教育出版)をはじめ、雑誌やウェブメディア等への寄稿実績多数。 ミッションは「個人のWill(やりたい)を資源に、よりよい社会・地域を実現する」。 目標はフリーランスの公務員になること。
2021年2月に『仕事の楽しさは自分でつくる! 公務員の働き方デザイン』(学陽書房)を刊行。