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「カン違い」への気づきがRPAのポテンシャルを最大化する

    「カン違い」への気づきがRPAのポテンシャルを最大化する

    【自治体通信Online 寄稿記事】地方行政戦略教室「自治体×RPA」① (デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 シニアマネジャー・品川 政之)

    総務省の調査によれば、令和元年度までにRPAを導入した自治体は、都道府県が85%、指定都市が70%まで増加し、導入済みもしくは導入予定および検討している、その他の市区町村数も合計で前年度に比べて約1.5倍増の50%以上におよんでいます(総務省 情報流通行政局「自治体におけるAI・RPA活用促進」より)。もはや地方行政の遂行に欠かせなくなりつつRPA。しかし、新しい技術だけに、ちょっとした“ボタンの掛け違い”が自治体の現場で起きてしまうケースも珍しくないようです。そこで自治体へのRPA導入支援実績を豊富にもつデロイト トーマツ コンサルティングの品川 政之さん(シニアマネジャー)に、自治体のRPAへの向き合い方や真価を発揮させるRPA戦力化メソッドを紐解いてもらいます。
    【目次】
    ■ 「自治体RPA元年」
    ■ 導入の“スタート地点”
    ■ 2つの“成功事例

    「自治体RPA元年」

    RPAに取り組み始めた自治体が多いことから、私たちは令和元年度を「自治体RPA元年」と捉えています。

    ところが、RPAは行政領域では新しい技術であるだけに、少し性急な捉え方もされてしまいがちなようです。

    自治体の皆様がこれまでの業務システムと同じ目線での見方をすることで、この技術の有効性を抑えてしまいそうになるのを、私たちは多く見てきました。私たちの支援では、そうしたRPAにまつわる性急な捉え方、すなわち“カン違い”を払拭することから始めました。

    この“カン違い”を自覚さえできれば、RPAへの発想が変わり、取り組みの体制やアプローチが変わり、結果としてその有効性を最大化することに繋がるものとなります。

    この連載では、私たちがこれまで様々な自治体にRPA導入を支援してきた実例をもとに、自治体の皆様が陥りがちな“カン違い”を、様々な事例を通じてご紹介し、取り組みのヒントとして活かして頂けるよう考察してまいります。当社の経験を、単なる論ではなく、より具体的な実践ノウハウとしてお伝えできれば幸甚です。

    その前に、連載第1回である本回は、前段の「そもそもなぜRPAに取り組む必要があるのか」に対する私たちの考えからお話します。

    導入の“スタート地点”

    総務省の研究成果である「自治体戦略2040構想(以下、2040構想)」では、近未来に起きる自治体の危機が提示されています。

    2040構想は、「2040年頃にかけて迫り来る我が国の内政上の危機を明らかにし、共通認識とした上で、危機を乗り越えるために必要となる新たな施策の開発とその施策の機能を最大限発揮できるようにするための自治体行政の書き換えを構想するもの」として、課題の整理と施策の提言がなされています。

    なかでも、自治体行政の課題として「自治体職員の激減」が試算されており、2040年頃には「現在の半分の職員数で自治体が本来担うべき機能の発揮ができるような仕組み」の構築を求めています。

    介護サービスなどを中心とした行政ニーズの急激な増大と、少子化によるサービス提供を支える職員数の激減という、自治体のあり方の前提が大きく変化しつつある中、2040構想は、従来の枠組みではこの困難は乗り越えられず、「“破壊的技術(Disruptive Technologies)”を積極的に活用して、より少ない職員で効率的に事務を処理する体制の構築が欠かせない」と指摘します(下図参照)

    新しい技術導入により、従来の方法では実現しえない“圧倒的な業務効率化”を図ろうということです。

    自治体戦略2040構想で描かれる近未来
    自治体戦略2040構想で描かれる近未来

    「これからの自治体は、“破壊的技術”を導入することで“圧倒的な業務効率化”を図ることが不可避」という文脈のなかで、2040構想は行政のあり方自体に大きな変化をもたらす“破壊的技術”のひとつとして、RPAを挙げています。

    自治体の危機的な将来に目を背けず向き合った結果、業務変革の必然性に気づき、破壊的技術活用の必要性にたどり着く―これが、RPA導入のスタート地点だと考えます。

    2つの“成功事例”

    一方で、RPA導入は単に近未来の自治体の危機を解決しうる施策としてだけではなく、業務の付加価値向上を創出する技術、という側面への着目も始まっています。

    例えば、A自治体では、国行政と地方行政の違いによって生じるデータ差異を、業務都度ではなくそもそもデータ取得時に補正するRPAを作り、後続の業務エラーの発生自体を抑える成果を上げています。

    またB自治体では、これまで紙でしか存在しない情報を、RPA導入時に電子データへ変換したことで、今後このデータを使った分析業務から、対応を高度化させることを志向し始めています。

    ここで着目すべきは、RPA導入で単に原課の業務効率化が図られたり、個々の職員の“働き方改革”が実現したり、というメリットだけではなく、従来の施策や取り組みでは実現しなかった新しい価値がRPA導入によって生まれたという点です。

    A自治体の事例は「国と連携したサービス提供をより円滑に実現する」価値、B自体の事例は「住民ニーズを可視化分析できるようになる」価値と捉えられます。これらは、将来、自治体が住民に提供する行政サービスにおいても同様の付加価値を創出することを示唆しています。

    つまり、自治体が実現したい地域戦略の実効性を高める“革新的な”ツールや手段としてRPAは有力であり、その有効性は、延(ひ)いては地域の魅力向上にも寄与する可能性を秘めたものである、と言えそうです(下図参照)

    “破壊的技術”がもたらすもの
    “破壊的技術”がもたらすもの

    将来の危機を回避する“破壊的な業務効率化”を推進するツールとしてだけでなく、地域の魅力向上の発想を創出する付加価値向上のツールとしても捉え、その両面でRPAを活用することができれば、自治体の未来はきっと、より開かれたものになるはずです。

    次回は、「RPAはAI万能ツール」「ITだからシステム部門」という、非常によくある発想、カン違いを取り上げたいと思います。

    (「『RPAの導入・運用は情報システム部門だけでやるもの』ではありません」に続く)

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    品川 政之(しながわ まさゆき)さんのプロフィール

    デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
    シニアマネジャー

    大手通信事業者、情報セキュリティコンサルファームを経てデロイト トーマツ コンサルティング合同会社に入社。民間の大規模BPRを始め、経営管理基盤構築、財務管理強化、IR強化、M&A等数多くの実績を有する。近年は自治体でのRPAを活用した全庁業務改革支援に注力、業務類型の考察知見を有する。BPR推進者を育成する技術トレーニングや、自治体の将来を討議する幹部向け集中ワークショップ、全職員向け啓蒙セミナー等、自治体の業務改革に必要な意識醸成及びノウハウ伝承を目的とした研修の豊富な講師経験を有し、受講者はこの1年で1,000名を優に超える。

    <連絡先>
    電話: 080-9372-5601(直通)
    メール:mshinagawa@tohmatsu.co.jp

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