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自治体DXを本気で考えている職員さんに読んでほしい話。#8
紙からデジタルへ!

自治体が今すぐ検討すべき郵送DX

    プロフィール
    加藤 俊介
    《本連載の著者紹介》
    xID(クロスアイディ)株式会社 公共事業部 部長/元静岡県庁 職員
    加藤 俊介かとう しゅんすけ
    公共政策学修士。静岡県庁職員として実務経験後、デロイトトーマツにて自治体向けコンサルティングに多数従事。自治体マネジメントに関わる分野を専門とし、計画策定、行政改革、BPR等に加えシェアリングエコノミーなど新領域開拓も経験。xID参加後は、官民共創推進室長として、自治体向け戦略策定、官民を跨ぐ新規事業開発を担当。現在は住民へ確実に届くデジタル通知サービス“SmartPOST”を推進。兵庫県三田市スマートシティアドバイザー。

    前回(#7:今年を「デジタル通知元年」にしなければならないこれだけの理由)は、郵便料金値上げの背景と郵便業務の課題について述べました。10月からの郵便料金の値上げが迫り、本連載筆者である私、加藤の自宅にもそのお知らせがハガキで届きました。このはがきは、全戸に配布されたのでしょうか。日本郵便の広範な流通網には改めて驚きました。今回は、郵便料金の値上げを契機に注目されるデジタル通知の付加価値と導入に際しての留意点について考察します。

    「SNS発信」の落とし穴

    近年、自治体も公式SNSアカウントを開設し、デジタル発信が増加しています。これらSNSは、住民や関係者に広く情報を届ける広報手段として非常に有効です。中には、フォロワー数が住民の人口を上回る自治体もあります。

    しかし、情報を確実に本人に届ける目的からすると、SNSでは利用者の本人性や住民性を担保することが難しく、必ずしも適しているとは言えません。郵便通知を含めたデジタル化を進めるためには、通知を受け取る住民が確実に居住住民であり、たとえば子どもがいるのか、国民健康保険に加入しているのかなど、その属性を正確に把握する必要があるからです。

    加えて、全ての住民がデジタル通知を利用する状況となるのは強制なしでは現実的ではないため、紙の郵便物が残ることを前提に、郵便業務とデジタル通知サービスが情報を連携し、紙とデジタルの通知を使い分ける仕組みが求められます。たとえデジタル通知の希望者が少数であっても、その活用をスタートできることが重要です。

    郵便料金の値上げという観点から見ると、SNSは自治体の郵便業務と連携していないため、デジタル通知を利用する住民に対して郵便を停止することはできず、郵便コストの削減には直結しません。

    郵便の代替としてデジタル通知を導入する際のポイント

    次に、デジタル通知導入におけるその他のポイントを具体的に見ていきましょう。デジタル通知の活用を自治体が検討する際に必要な条件は以下の4点です。

    1. 本人性・機密性
    通知が確実に本人に届き、他者に見られないことが求められます。自治体が送る通知には個人情報や重要な内容が含まれることが多いため、送信先が間違いなく本人であることを確認され、さらに他者に不正にアクセスされない仕組みが求められます。

    2. 到達性
    デジタル通知が確実に対象者に届くこと、そしてその受領が確認できることは重要です。郵便の配達記録のように、デジタル通知において通知が開封されたかどうかを確認できるシステムの導入が有効です。これにより、重要な通知が見逃されるリスクを低減し、より確実な情報伝達が可能になります。

    3. 発信元の真正性
    住民にとって、通知が確実に自治体から発信されたものであるかどうかは重要です。偽の通知や詐欺に対して、発信元が公式のものであることを証明する手段が求められます。これには、電子署名や自治体専用の発信プラットフォームの使用が有効です。

    4. 個別性
    デジタル通知は、住民一人ひとりの状況に応じたカスタマイズが可能である点が紙媒体と比較しての大きな利点です。たとえば、子どものいる家庭には保育関連の情報、国保加入者には保険料に関する情報など、それぞれの住民に適した通知を送ることができるだけでなく、文面も個別に変更が可能です。このように、個別性を持った通知を提供することで、住民に対してより関連性の高い情報を届けることができ、行政サービスの質を向上させることができます。

    普及の鍵は…

    他方、住民へどのようにしてデジタル通知利用の動機付けを行うかも重要な要素です。デジタル通知を送るためにはデジタル上の受信箱(アプリなどのデジタル郵便受け)が必要で、前述のとおりそれを本人のものであることを証明する行為が必要です。
     
    普及の鍵は、デジタル通知で住民にどのような付加価値を提供できるか、です。単に紙の通知内容をデジタルに置き換える「電子化」にとどまる場合、住民にとってのメリットは限定的です。通知の受け取り方そのものを変え、外部サービスとも連携して具体的な利便性や負担軽減を提供することが求められます。これは、郵送DXの観点からも重要です。
     
    デジタル通知の大きな利点は、いつでもどこでも即時に受信ができ、必要な情報を早く認識できることです。たとえば、給付事業においては、早期に給付金を受け取れるという具体的なメリットが得られます。

    通知を受け取る体験の変革

    さらに、デジタルならではの価値について考えてみましょう。
     
    封筒に多くの書類が詰まっており、自分の状況に合った制度を見つけるために、内容を注意して読解しなければならないことがよくあります。現在、行政から受け取っている通知物の内容は、わかりやすいでしょうか?
     
    これは住民だけの問題にとどまらず、住民からの問い合わせが増えることで、職員の負担が増加する要因にもなります。通知を送っても返答がない場合、個別に電話で説明する必要が生じることもあります。デジタル通知であれば、こうした体験を変えることができます。
     
    住民一人ひとりに必要な情報を届けることはもちろん、大量の情報を一度に示すのではなく、段階的に伝えることができます。また、画像や動画を活用することで、よりわかりやすく説明する工夫も可能です。
     
    通知を受けて、申請や支払いをしなければならないこともあるでしょう。デジタルであれば、そのまま電子申請に移行し給付金を口座登録することなくキャッシュレスサービスで受け取ることも実現しています。支払いも外部サービスと連携をすることでスマホで完結が可能です。紙面におさまらない様々な外部サービスの活用で付加価値を向上させられるのがデジタルの特徴です。
     
    さらに、通知の開封状況を把握できるため、再度のプッシュ通知を行ったり、データ分析から開封されやすい時間帯に通知を発信したりすることも有効です。

    デジタル通知の導入は、単なるコスト削減にとどまらず、住民サービスの質を向上させる大きなチャンスです。紙とデジタルの両方を併用することで、住民一人ひとりのニーズに応じた柔軟な対応が可能となります。
     
    これからの行政サービスは、迅速かつ確実な情報伝達を実現し、住民に寄り添った新しいコミュニケーションの形が求められます。この変革を通じて、自治体と住民の関係がさらに強化されることを期待したいです。

    (続く)


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