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相模原市長インタビュー(前編)~自治体発信力が「シビックプライド醸成」の鍵

    【自治体通信Online 寄稿記事】再定義論「シビックプライド」⑥(関東学院大学法学部准教授/社会情報大学院大学特任教授・牧瀬 稔)

    シビックプライドやSDGsの推進に積極的に取り組んでいる自治体が増えています。そこで、この2つの政策を軸にしたまちづくりを推進している相模原市(神奈川県)の本村賢太郎 市長にインタビューしました。相模原市は2020年度から「シビックプライド推進部」を設置。さらに全国初となる「シビックプライド推進条例」(仮称)の制定にも取り組んでいます。その狙いや取り組み内容とは? 本連載を執筆している関東学院大学 牧瀬稔 准教授のゼミ生がインタビューを実施し、牧瀬准教授が監修しました。
    【目次】
    ■ 基盤は「特色ある地域づくり」
    ■ “ファンサイト”を開設
    ■ 「優しいまち」であることを発信していきたい

    基盤は「特色ある地域づくり」

    ―相模原市では、どのようなスタンスでシビックプライドを推進しているのですか。

    相模原市として、市民に愛着を高めてもらうためにできることは、「相模原市には、こんな魅力や場所がありますよ」とか「こんな素敵なものがたくさんありますよ」とアピールしていくことだと考えます。

    愛着の持ち方は、人それぞれで違うと思います。「シビックプライドを持ってください」と押し付けるものではありません。そういうスタンスで取り組んでいます。

    「自治体が住民に押し付けるものではなく住民に対して地域の魅力をアピールしていくもの」。相模原市のシビックプライド戦略を説明する同市の本村賢太郎市長
    「自治体が住民に押し付けるものではなく住民に対して地域の魅力をアピールしていくもの」。相模原市のシビックプライド戦略を説明する同市の本村賢太郎市長

    また、相模原市は戦後に市制を採用したため、他市と比べて歴史が浅い現状があります。また政令市への移行も最近です。その意味で「過去」の蓄積は多くありません。ですが、「未来」の展望はたくさんあります。

    例えば、相模原市にはリニア中央新幹線が開通しますし、相模原駅の近くにある在日米陸軍相模総合補給廠の土地返還による今後の発展の可能性など、他の政令市にはないポテンシャルがあると思います。
    あるいは、JAXA相模原キャンパスなど、既に存在している相模原市ならではの資源を発信していくことで、相模原の特色になっていくと考えています。

    相模原市内3区(緑区、中央区、南区)にそれぞれに、自然やリニアなど、特色のある地域づくりをしていくことが大事だと思っています。そうすることにより、もっと相模原市の魅力を知ってもらい、今まで以上に相模原市を好きになってもらいたいと強く思っています。

    ~相模原市の概要~
    昭和29年に市制施行。平成15年に中核市へ移行し、平成18年に津久井町・相模湖町と、平成19年に城山町・藤野町と合併。平成22年4月1日に政令指定都市。人口約72万人(令和2年8月1日)、面積328.91平方キロメートル。清流を育む広大な森林など津久井地域の恵まれた自然環境を有する一方で、市内緑区の「橋本駅」(JR東日本、京王電鉄)周辺ではリニア中央新線神奈川県内駅の新設工事が始まっている。上写真の左は相模原市を代表する観光スポット・相模湖、右はリニアモーターカーの車両。(画像はいずれも相模原市サイトより)

    “ファンサイト”を創設

    ―「シビックプライドは市民に押し付けるものではない」とのことですが、市民の方々にしてほしいことはありませんか。

    市や地域でのイベントへの参加、またいろんな「まちづくり」に参加してもらいたいと思っています。地域には、自治会の活動など多々あります。そういう活動を通して、シビックプライドにもつながっていくと思っています。

    やはり市民の方々には、相模原市に愛着を持つことによって、自分が住んでいる地域を良くしたいと思っていただきたいと思います。

    ―シビックプライドに注力している理由を教えてください。

    先ほども話しましたが、もっと相模原市の魅力を知ってもらいたい、相模原市のことをより好きになってもらいたい、と思ったことがきっかけです。

    相模原市に住んでいる方が、意外と市の魅力を知らない現状があります。もちろん「知らなくていい」や「知る必要はない」という方には強制的に知ってもらおうとは思っていません。少しでも市に関心がある市民の方たちに、市の魅力を知り、より好きになってもらいたいと考えています。

    ―シビックプライドを高めるための取り組みを教えて下さい。

    まずは「Sagamihara FAN FUN FAN」という相模原ファンサイトを開設しました。同サイトでは、市民をはじめ皆様から相模原の魅力を教えてもらい、それらを発信したいと思っています(下画像参照)。

    最終的に72万人の市民の方々が、他の人たちにシティプロモーションしてもらえることで、地域が、区が、そして相模原市がもっと盛り上がると考えています。

    ~「Sagamihara FAN FUN FAN」の概要~
    相模原市の魅力を市内外に発信し、さがみはらファンを増やし、シビックプライド(市や地域への誇りや愛着)を醸成することを目的にオープンしたファンサイト。
    パソコンやスマートフォンなどから誰でも簡単に登録でき、同市の話題や難問に挑戦できる「さがみはら検定」や市の魅力画像を投稿できるコンテンツのほか、市内で開催されるイベント情報やニュースの配信などを行っている。
    会員登録すると、市内商店等で利用できるクーポンを進呈するほか、さがみはら検定、市の魅力画像投稿、イベント情報のシェアでポイントを貯めることができ、貯めたポイント数に応じて特産品などが当たるプレゼントキャンペーンにも応募できる。上画像は「Sagamihara FAN FUN FAN」のトップページ(URLはhttps://sg-fansite.jp/)。

    「優しいまち」であることを発信していきたい

    ―シビックプライドについての市長の想いを聞かせてください。

    地域活動の活発化やボランティアの参画拡大など、市民の方々が人のため、地域のために率先して取り組めるようになることで、全体の魅力の向上に繋がることだと考えています。

    また、定住者や移住者を増やすといった意味でも、地域や人に優しいまちであることを発信できればいいなと思っています。そのためにはLGBTの方など多様な人が暮らせるまちづくりを進める必要があると考えています。

    シビックプライドの成果をだしていくために、市民の皆様から意見をしっかり聞いていきたいと思っています。「あの時、市長に何も言えなかった」では、私も心残りです。だから、私は若者をはじめ皆様にどんどん遠慮なく意見を言ってもらうように努めています。

    (続く)

    自治体通信への取材のご依頼はこちら

    本連載「再定義論『シビックプライド』」のバックナンバー
    第1回:定住人口増等に不可欠な「地域戦略」の新しい基軸に
    第2回:シビックプライドが創る「活動人口」という“新しい未来”
    第3回:急速に盛り上がる「SDGs」その課題と展望
    第4回:自治体はSDGsそのもの(前編)~既存事業にこそ「大きな価値」
    第5回:自治体はSDGsそのもの(後編)~SDGsは地方自治体に光を当てる

    牧瀬 稔(まきせ みのる)さんのプロフィール

    法政大学大学院人間社会研究科博士課程修了。民間シンクタンク、横須賀市都市政策研究所(横須賀市役所)、公益財団法人 日本都市センター研究室(総務省外郭団体)、一般財団法人 地域開発研究所(国土交通省外郭団体)を経て、2017年4月より関東学院大学法学部地域創生学科准教授。現在、社会情報大学院大学特任教授、東京大学高齢社会研究機構客員研究員、沖縄大学地域研究所特別研究員等を兼ねる。
    北上市、中野市、日光市、戸田市、春日部市、東大和市、新宿区、東大阪市、西条市などの政策アドバイザー、厚木市自治基本条例推進委員会委員(会長)、相模原市緑区区民会議委員(会長)、厚生労働省「地域包括マッチング事業」委員会委員、スポーツ庁参事官付技術審査委員会技術審査専門員などを歴任。
    「シティプロモーションとシビックプライド事業の実践」(東京法令出版)「共感される政策をデザインする」(同)「地域創生を成功させた20の方法」(秀和システム)「持続可能な地域創生 SDGsを実現するまちづくり」(プログレス)など、自治体関連の著書多数。
    <連絡先>
    牧瀬稔研究室  https://makise.biz/

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