【自治体通信Online 寄稿記事】
三重県流「あったかいDX」の全記録~新卒入庁職員の成長ストーリー~ #10(三重県 デジタル社会推進局/同局職員・中濵 佑希乃)
「DX業務からコロナ対策の業務に動員されたことで、こんな気づきを得ることができました」―。“三重県版デジタル庁”に位置づけられる三重県デジタル社会推進局の新卒入庁職員・中濵 佑希乃(なかはま ゆきの)さんが住民目線に近いフレッシュな感性で“自治体DXの最前線”をお届けします。
「コロナ本部」に動員
全国の自治体の皆さま、お疲れ様です。
三重県デジタル社会推進局(以下「デジ局」)デジタル戦略企画課の中濵です。
だんだんあったかくなってきましたね!
前回の記事では、デジ局の目玉施策の一つである「みえDXセンター」についてお話しいたしました。
(参照:「【新卒入庁職員が見た自治体DXの最前線】目玉施策『みえDXセンター』」)
今回の記事では県の他部署からみた行政DXの大切さやそれを進める難しさについてお話していきたいと思います。
と言いますのも、実は中濵、2022年1月から3月末まで、ワクチン追加接種の関係で県のコロナ本部に動員されており、デジ局からはしばらく離れているのです。
現在、中濵が働いているのは新型コロナワクチン接種に関する部署で、担当業務として県営ワクチン集団接種会場の設営や運営、それに係る事務などを行っています。
中濵以外にも他の部署から新しく動員されてきた方たちがたくさんいて、1・2回目の集団接種にも携わった職員の方に教わりながらみんなで業務を進めています。
動員前は、緊急性の高い業務にあたることに対して不安もありましたが、3回目接種ということもあり前例を参考にできたことや、所属のチームワークがよいため、ポジティブな気持ちで業務に当たれています。
三重県新型コロナウイルス感染症対策本部(以下「コロナ本部」)ではデジ局と比べて、県民の方や事業者の方、市の職員の方などの外部の方と接する機会や、出張、電話での質問・意見対応などを行う機会が圧倒的に多く、デジ局にいる時とは違った緊張感があり、身が引き締まります。
さて、では、そんなコロナ本部の実情からお話していきます。
業務運営の実情とDX
まず、コロナ本部では紙資料での業務がほとんどです。
中でも気になるのはデータの保存を紙媒体で行うことがあるということです。紙のみでデータを残すだけだと過去の書類を探す際に検索ができないことや、管理場所が異なって混乱する可能性があることなどから、人の入れ替わりが多いコロナ本部では特に、電子でのデータ整理・データ保存をしていくと業務や引継ぎの効率が上がるのではないかと思いました。
また、私の班とは別の班の業務でしたが、紙で撒いたアンケートを回収後、PCに手入力するという作業をしているところもありました。こういった作業もデジタルを活用することで時間短縮・業務量の削減につながると思います。
ハード面でも、有線でしか繋がらないPCがあったり、Wi-Fiのつながりが悪かったり、PCの動きが遅かったりと解決すべき課題が多くみられました。
また、コロナ本部ではチャットツールが普及していなかったため、かかってきた電話の取次ぎを付箋のメモで行ったり、共有フォルダの場所を伝えるのにさえ手間取ったりしました。
さらに、これはデジ局でも同じことが言えますが、例えば補助金の申請など、ルーティン的な業務について、デジタル化できそうなものがあっても、それをデジタル化するスキルがある職員がほとんどいません。
「これをデジタル化出来たら楽なのに」という声をコロナ本部でよく耳にしました。
中濵は今まで、行政DXが進まないのは行政という組織が今の状態で最適化されてしまっているからだ(本連載#2「三重県版「デジタル庁」ってこんなところ!《バリュー&独自性編》」参照)とか、DXに消極的な人が多いからだと決めつけてしまっていた節がありましたが、それ以外の理由もたくさんあるのだと気づきました。
県庁のDXが進まないのは、職員ひとりひとりの意識が低いからではなく、ただノウハウと時間がないから進まないのだと思います。
(中濵自身、デジタル化のノウハウがないのでコロナ本部のDXに尽力できず無力さを痛感…まずは自分自身ノウハウを身に着けられるよう努力しないといけませんね)
そんな、“デジタル化はしたい、けれど方法が分からない…”という職員の悩みを解決しなければならないのが、デジ局です。県民の皆さまに対する啓発ももちろん大切ですが、まずは庁内のDXを優先的に進めていくことで結果的に県民サービスの向上につなげていくというやり方も良いのではないかと思いました。
新採の独り言…
(ここからは中濵個人の理想論になってしまいますが…新採の独り言として聞き流してください)
庁内DXに注力する場合、デジ局の目指す姿とは、「デジタル化したい!」と思った職員が気軽に相談しに来られるような部署だと思います。今まで県庁外向けの施策が多かったデジ局が、庁内から頼っていただけるような部署になるためにはまず、ひとつひとつ小さな実績を積み重ねて各部署との連携を密にしていく必要があります。
まずはそれぞれの課の職員の求めているニーズを正確に調査するためにデジ局の職員を各課に派遣するとか、どうでしょう。難しいですかね?
また、庁内からの相談に結果を持ってお答えするために、デジ局の職員のデジタルスキルを向上させる必要があると思います。デジ局職員への研修を行ったり、外部人材を呼び込んだりなどして、頼れるデジ局を作っていけたら理想だなと思います。
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これで今回の記事は以上となりますが、引き続きDXの視点から県庁の働き方を見つめることを通し、これからデジ局で何ができるか、何をするべきなのかをしっかり考えていこうと思います。
早いもので、あっという間に3月になりましたね。
年度が変わるこの4月からは中濵も新採ではなくなりますので、次回の記事をもちまして、本連載は終了いたします。次回最終回も、是非読んでくださいね!
(「【新卒入庁職員のリアルな1年間】Never ending “DX” story!」に続く)
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