理解があって優しくて、いつも明るく盛り上げてくれる―。そんな“理想の上司ランキング”で5年連続1位となっているのが男性ならタレントの内村光良さん、女性ならアナウンサーの水卜麻美さん、なのだそうです。しかし、現実には理想の上司に出会える機会は多くないし、逆に折り合いがうまくいかなくて…。今回はそうした時の“対処法”について。
職場における「良好な人間関係」は当たり前ではない!?
「市民のためになるのに企画を承認してもらえない」
「困りごとを相談したいのに話しかけづらい」
「なぜか自分だけ評価されていない気がする」
こんなふうに上司との関係に悩んだ経験はないでしょうか。
上司との人間関係はいいときはあまり意識しませんが、ひとたび「あれ?」と感じると毎日職場で向き合うことですから、やっかいです。
平成30年労働安全衛生調査(実態調査)によると、職場で強いストレスを感じている人のうち概ね3人に1人は人間関係で悩んでいるそうです。良好な人間関係というのは決して当たり前のものではないようです。
それが上司となればなおのこと。
世代のギャップ
経験のギャップ
立場のギャップ
これらのギャップがあるのですから、部下と上司との間にすれ違いがおこることは、自然なことなのかもしれません。何を大切にしたいかという「価値観」がそもそも異なるのですから。
「2つ上の職位の視点で考える」はやっぱり大切
では、どうすればいいのでしょうか。そんなとき、3つの対処法を試してみることをおすすめします。
①2つ上の職位の視点で考える
上司の価値観を100%理解するのは困難だとしても、上司がどんな風に考えて部下に指示を出したり、判断をしているのか手がかりは欲しいところですよね。
よく言われる「2つ上の職位の視点で考える」というのは、上司との関係づくりにおいても有効な対処法の一つです。
課長は、回ってきた決裁を見て「部長はこういう指摘をするな」と想像して部下に修正の指示を出していたりします。例えば、事業を起案して課長に承認を求める際に、「部長だったらこう考えるのではないか」と想像して資料を作成してみてはどうでしょうか。
②上司の味方になる意識を持つ
上司、特に課長は部署の業務の進捗や部下の仕事ぶりに日々頭を悩ませています。しかも、その悩みを課の中で一人で抱えがちです。管理職は孤独なのです。
そんな中で、上司にとって部署を運営する「味方」がいたら、心強く感じるのではないでしょうか。
①の「2つ上の職位の視点」を使って上司に問いかけてみてください。「最近、みんな遅くまで残業してますよね」「うちの課の仕事は目に見える成果を説明しにくいですよね」とか、正式な打ち合わせではなく立ち話の雑談として。
「○○すべき」という解決策は必要ありません。あくまで「私もこの部署の運営を気にしている」というメッセージがにじみ出る塩梅で。もちろん、自分自身がきっちり仕事をして上司の悩みの原因にならないことが前提になります。
③コミュニケーションの量を増やす
相手との関係性を考えるときにコミュニケーションは非常に大きな要素です。「上司との人間関係の悩み」も様々ですが、基礎となる信頼関係づくりには、コミュニケーションの量を増やすことも有効かもしれません。
「ザイアンス効果」という心理学の言葉があります。これは対象との接点が多いほど親しみを感じやすくなるという効果です。「コミュニケーションは質より量」と言われるのも、この効果を根拠にしていることが多いようです。
人間関係に悩むとその相手とのコミュニケーションを避けがちになりますが、朝の挨拶でもコーヒーブレイクの雑談でも、交わす言葉の量を意図的に増やすと徐々に仕事の話もしやすい雰囲気がつくれます。
一番大切なものを大切にする
繰り返しになりますが、上司の価値観を100%理解するのは困難です。
でも、それをことさら嘆く必要はないと私は思います。
上司と部下は機能の違いであって互いに役割を分担し合う関係です。先生と生徒の関係や親子の関係とは異なります。様々な方法で対処したうえで、結果的に親しい人間関係には至らなければ「このチームの業務において互いの役割を果たし、結果を出すことに集中しよう」と前向きに割り切ってもいいのではないでしょうか。
もちろん上司とある程度親しくなれるのが理想かもしれませんが、上司との人間関係を気にし過ぎることが、かえってストレスにつながることもあります。
本当に大切なのは、上司といい人間関係をつくることよりも、自分自身が健康に働き続けること。
こちらが努力を尽くしても改善できない人間関係だってあります。そんなときには、避難したり他人の力を借りることも忘れないでください。そのためにも産業医、組合、キャリアコンサルタントなど頼れるところを日頃から把握しておくのも大切なことです。相談に乗ってくれる他部署の先輩など「ナナメの関係」もつくっておくといいでしょう。
きっと、自分が上司になったときに、上司との人間関係に悩んだからこそできる職場づくりがあると思います(逆に同じ悩みを「再生産」するような上司にならないでください!)。向き合い方と逃げ方を上手にデザインした経験は、財産になるのです。
そういう上司がいる職場なら、部下もイキイキとやりがいをもって働くことができるのではないでしょうか。
(「新しい企画に無関心な上司をどう攻略するか」に続く)
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