【自治体通信Online 寄稿記事】
自治体職員のための心の運転方法 #11(寝屋川市 職員・岡元 譲史)
寝屋川市(大阪)職員の岡元 譲史さんが滞納整理というハードな仕事を通じて得た経験、気づきなどをシェアする本連載。今回は「明暗を分ける1%」について。大きな成長をもたらす小さな努力の大切さを、自身の経験に基づきながら「アインシュタインも認めた数式」も駆使して解説します。
うれしい告知~すごい場所で講師を務めます
心の運転方法第11回。装いも新たとなった今回(より「ドライブ感」が増しましたね)は、嬉しい告知から始まります。よろしいでしょうか。
なんと、公務員業界では有名な、あの『日本経営協会(NOMA)関西本部』で講師を務めることが決まりました!拍手―――――!!!(パチパチパチパチ)
今年度は計3回の登壇を予定しておりまして、そのうち2回はすでに情報が解禁されています。
テーマ:滞納整理における納付折衝と納付者対応のノウハウ
予定日:
①令和4年8月24日(水)・25日(木)
②令和5年1月24日(火)・25日(水)
詳細・申込は、こちら
テーマにご興味があり、日程・予算の都合がつく方はぜひ、ご参加くださいね。お待ちしております(末尾の「お知らせ」を参照)。
もう1回は別テーマでの登壇となりますが、また情報解禁日以降に告知させて頂きます。
日本経営協会は長年にわたって公務員向け講座を開催されていて、特に滞納整理分野では様々な講座があるんですよね。
私も滞納整理担当時代、何度もチラシを見ては「この研修、行ってみたいなぁ」と羨望のまなざしを向けていました(ただ、予算が限られており、経験値の少ない後輩に機会を譲るばかりで結局一度も受講できなかった)。
そんな場所に登壇させて頂けるというのは本当に夢のような話でして、最初にオファーの話があった時は、耳を疑うと同時にすごく興奮しましたし、とても感慨深いものがありました。長年、全国の自治体で研修講師を務めてきましたが、ひとつの「集大成」といっても過言ではない機会であると感じています。
このような講座には無料で気軽に参加できるものも多数ある中で、参加費用も高額ですし、負担に見合った内容を提供しなければと、気の引き締まる思いです。
「メンタルが強い」と言われて気付いた“継続”の力
今回のオファーについて複数の仲間に話をしたところ、ある人から「自分だったら、そんなオファーは引き受けられない。参加費の総額を考えたら、ハードルが高すぎて恐ろしい。どんな内容を話せばいいのか分からない。岡元はメンタルが強いな」と言われました。
確かに、これだけの参加費を頂くようなセミナーに登壇するのは初めてで、プレッシャーも相当ありますが、それ以上に「絶対に参加費と期待を超える価値を提供するんだ!」という意気込みの方が勝っています。
ただし、このオファーが例えば7年前、はじめて自分の所属自治体(寝屋川市)以外の場所で研修講師を務めた頃にあったとしたら、そうはいかなかったでしょう。僕も同じようにお断りしていたと思います。
――忘れもしない2015年6月5日、東大阪市の小さな会議室で11名を対象にした「滞納整理基本のキ」という研修から、僕の「他自治体での研修講師」というキャリアは始まりました。
当時は3時間の研修であってもワーク等を一切いれずに一方的にただひたすらしゃべるだけの、受講者に優しくない内容。当然、眠たくもなるわけで(寝ている人って、講師側からは、本当によく見えるんですよね)、意識が飛びそうになっている新人っぽい人を視界の端に捉えては、「僕の話はおもしろくないのかな?」と不安を感じて、焦って、ものすごい量の脇汗をかいたのを覚えています(笑)
当時のスライド。寝屋川市内にある、京阪電鉄京阪本線「萱島(かやしま)駅」のホームを貫く“木”をモチーフに徴収職員の成長を“木”に例えて「根っこが大事」などと説明していました。
あの日から今日まで、さまざまな機会を頂いたことで、僕の心は少しずつ少しずつ、その性能を改善し続けて、ようやく今になって、相当の費用負担が伴う一日半の研修を前向きに捉えられるだけの状態に仕上がっています。
それぞれの機会は大小あり、時には本当にささいなものもありましたが、小さい機会ではあっても少しずつ“継続”することの持つ強力なパワーを、改めて感じました。
明暗を分けるのは、たった「1%の差」である
この“継続”の力を如実に表す数式があるので、最後に紹介します。
僕の研修では必ずお伝えする内容でして、受講者アンケートでも「非常に心に残った」という方が多い、評価の高いキラーコンテンツです(こういうフレーズを自分で言っちゃうスタイルでやらせてもらってます!)。それが、こちら。
もともとの能力を「1」だとして、上は毎日1%の努力を、下は毎日1%さぼった状態を、それぞれ1年間(365日)続けた場合、どうなるか? という数式です。 さて、どうなると思いますか? その答えが、こちら。
毎日1%の努力を続けた結果、もともと1だったものは37.8となっており、毎日1%ずつさぽると、1年後には限りなくゼロに近づいている。両者の差は1,000倍以上に開いています。
なぜ、こうした計算になるのか? それは、「複利」が働いているからです。
複利は、かのアインシュタインが「数学における最も偉大な発見は複利である」と評したように、非常に力のあるもので、一般的には資産運用において用いられます。「資産を複利で運用しよう」という具合ですね。
1%努力した初日は、もともと1だったものが1+0.01=1.01になります。2日目は1.01の1%、つまり0.0101が加算されて1.0201に。3日目はさらにその1%である、0.010201が加算され、1.030301に…ということを365日続けると、もともと1だったものが37.78≒37.8になるということですね。逆も然り。
おもにおカネの資産運用で用いられるこの複利の効果を、自分の心や能力という「内面の自己資産」の運用に活用していく、という意識を持ちたいですね!
ということで、今回は少しずつでも心や能力の性能を改善させることの重要性についてお話をしました。もちろん人間のモチベーションには波がありますから、毎日同じだけ努力できるとは限りません。しかし、少しずつの努力でも時間をかけて積み重ねていくと、小規模の研修で大量の脇汗をかいていたような人間が、相当なプレッシャーのかかる講座にも前向きに登壇できるようになるということを、実例をもってお伝えできたかなと思います。
1%でもいい。日々ちょっとした改善を積み重ねていきましょう!
(「日々に追われて“心の迷子”になっていませんか!?》いつも“心にカーナビ”を」に続く)
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岡元 譲史(おかもと じょうじ)さんのプロフィール
寝屋川市(大阪)経営企画部 企画三課 広報編集長
1983年生まれ。2006年に同市入庁後、12年間にわたり、様々な債権の滞納整理に従事し、市税滞納額70%(約25億円)削減に貢献。2022年より現職。
「滞納整理に価値を見出して伝えることで、受講者の不安や葛藤を取り除く」という独自スタイルによる研修を全国で実施し、6年間で延べ3,700人が参加。受講者が給食費の滞納ゼロを達成するなど、すぐに使えて再現性の高いノウハウを伝えている。
執筆に「滞納整理のための空地・空家対策」(『税』2018年2月号)など。
「地方公務員が本当にすごい! と思う地方公務員アワード2018」受賞。
プライベートでは2男児の父。PTA会長を務めるなど地域の活動も行う。
2021年5月21日に『現場のプロがやさしく書いた 自治体の滞納整理術』(学陽書房)を刊行。同書の印税は「全額、寝屋川市の発展のために使う」としている。
<連絡先>okamoto.joji@city.neyagawa.osaka.jp
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