職員ESと組織活性は不可分
前回では実際の自治体の事例を用いましてbestな組織状態にある自治体の様子をご覧いただきました。
(参照記事:「職員ES」の高い行政組織のつくりかた~自治体実例より)
職員ESが高まると住民CSを経由して好調なサイクルに突入し、情報共有・課所間協業が活発な状態になることで、縦割りと言われる自治体組織もいわゆる風通しのいい良好な組織が実現できることをご確認いただけたのではないかと思います。
(参照記事:住民満足度向上の鍵は「職員ES」にある)
さてここで陥りがちなのは、best事例は全国でも珍しい事例なので自分の自治体では関係ない、という考えになってしまうことです。
実はそんなことはありません。実際に弊社(船井総研)がこれまでご支援をさせていただく中で、職員ESの向上により自治体組織がよい方向に変わっていった事例をたくさん見てきました。今までと変わらない予算額・人員数・事業スキームでありながら、より高い効果発揮する施策を生み出してきた事例を数多く見てきています。
best事例の自治体も最初からすべてがうまくいっていたわけではありません。自治体職員・組織が自ら変わろうと努力し変わっていった結果なのです。
真の強みと可能性
では具体的に、職員ESが高まり自治体組織が活性化して住民からラブコールを受けるような施策を実施していくことができる組織になるためにはどのようなことが必要でしょうか。これには5つの要素があると考えられます(下図参照) 。
これらは相互関係にあり、どれかひとつだけ達成したのでは十分な効果は発揮されません。いずれもが高いレベルで達成されることでより効果的な行政運営ができる組織に達すると考えられます(下図参照)。
この5要素を見ていただくと、耳が痛い話だと感じる自治体担当者も多いのではないかと推察いたします。
しかし思うところがあるということは、まだこれから伸びていける部分があるということと捉えられます。それこそが自治体の持つ真の強みであり可能性であると考えています。
不足している要素とは?
これら5つの要素は、自治体の結果と民間企業とを比較した場合、両者の乖離が特に大きく見られる部分であります。
今般弊社で行った「行政職員の職員ES調査」では、こういった自治体の生の情報を収集するため500の地方自治体への調査を行い、また民間企業1,200社と比較して自治体の組織の状況を把握しました。
(参照記事:自治体職員の約6割が仕事に不満を抱えている)
これからそれぞれの自治体がよりよい行政施策、よりよい自治体運営を行っていくために、これらの組織強化に必要な要素を強化していくことは重要な課題であると捉えることができます。
新たな未来への道筋
「自治体の宝は人」です。自治体の職員がいきいきと生産性高く働き、やりがいをもって業務にあたることができるような職員ESの向上への取り組みは、ご自身の自治体の新たな未来を創り上げていく道筋となります。
そして住民と自治体組織が一体となって自治体全体を活性化し盛り上げていくためには、まずあなたの自治体の職員に輝いていただく必要があります。
住民の満足度・愛着度を高めていく施策を行うことはもちろん大切ですが、隣の席に座っている職員が笑顔で仕事ができているかどうかも、あなたのまちの政策を成功させるための重要な要素だとお考えください。いま、あなたのまちの自治体の職員は「いい顔」で働けていますか?
本連載「新・自治体組織論」バックナンバー
第1回 住民満足度向上の鍵は「職員ES」にある
第2回 自治体職員の約6割が仕事に不満を抱えている
第3回 「職員ES」が高い行政組織のつくりかた~自治体実例より
関根 祐貴(せきね ゆうき)さんのプロフィール
埼玉大学教育学部英語学科卒業後、埼玉県庁に入庁。2018年に株式会社船井総合研究所に入社し、地方創生支援部 地方創生グループに所属。
前職の埼玉県庁では道路事業、介護保険事業、予算調整に関わる。「地方・東京の両方を元気にしたい」との信念から船井総合研究所へ入社。地域企業の活性化と行政の活性化を同時に達成するコンサルティングを行っている。