【自治体通信Online 寄稿記事】
自治体職員の「装合計画」#6(元東京都職員/イメージコンサルタント・古橋 香織)
元東京都職員でイメージコンサルタントの古橋 香織さんによる、見過ごされがちだった「公務員の装い」をテーマとした本連載。今回は、「選挙事務」で意識すべきポイントについて。激しい暑さが予想される夏真っ只中での選挙事務という、ミスが許されず、多くの住民の目にさらされる特別な状況下での公務員の服装とは?
自治体職員にとって今年の夏の一大イベントといえば…
こんにちは。イメージコンサルタントの古橋香織です。今年の夏の一大イベントといえば「選挙(第26回参議院議員選挙)」ではないでしょうか。
この連載を書いている今も街にはすでにポスターの掲示板が立てられ少しずつ選挙ムードが近づいてきています。
それにあたり自治体職員の業務となるのが「投票事務」「開票事務」などの「選挙事務」と言われる仕事です。拘束時間が長くミスが許されない仕事であるため、選挙事務を担当するにあたって何かと意識しなければならないことが多いですが、従事する職員を地味に悩ませるのが「服装」だったりします。
今回は私のLINE公式やTwitterで寄せられた声を参考に、選挙事務の服装で意識するとおすすめなポイントをまとめてみました。ぜひ参考にしてみてください(なお字数の関係上、今回は夏の選挙に限定させていただきました)。
円滑な選挙の執行に資する服装とは
選挙事務に関するアンケートをとってみたところ、「きちんと感を重視する派」と「動きやすさを重視する派」で見事に割れました。所属する自治体の雰囲気なのでしょうか。
今回の選挙は夏場ということもあり、総じてみなさん悩まれていたのが「温度調整」についてです。投票事務や開票事務で暑い体育館での作業になった場合、スーツだと汗だくになってしまうという意見が目立ちました。
前回の記事で書いたように、汗だくでのスーツ姿は逆に暑苦しく不潔な印象を与えます。7月の選挙の場合は、自治体がクールビズを推しているようであれば「夏季軽装」の格好でいきましょう。堅苦しさを抜いたカジュアルな装いの方が住民の方も投票所に入りやすいです。
(参照記事:《決定版! 公務員に“なるべく寄り添った”クールビズ》もう「ネクタイ外しただけ…」はやめません?)
ただ、監督者や所属自治体の都合で「どうしてもスーツ」という場合は、「サマーウール」「背抜き」といった夏仕様のスーツとともに「アイスコットン」等の高機能素材が使われているアイテムを利用してみることもおすすめします。
女性はどうする!?
女性の場合も同様で、普段よりも多くの住民の方と接するのが選挙事務の特殊な部分です。
女性のファッションは幅が広いため、当日何を着て行こうか悩んでしまいますが、フォーマルなレディーススーツを着用する場合は、インナーをふんわりしたブラウスにしてみるなど、堅さとやわらかさをミックスしてみることをおすすめします。
スーツではないオフィスカジュアルの場合は、万能のトップスとして「シャツ」がおすすめです。女性ファッションできちんとした信頼できる印象を与えるための手っ取り早い方法は、顔まわりに直線を入れること。シャツの鋭利かつシャープな直線は、訪れる住民の方に安心感を与えるスパイスとなるはず。
ボトムスはなるべくパンツスタイルにして、いざというときの設営や片付けにもすぐに参加できるようにしましょう。パリッとしたシャツが似合わないという人は、少しやわらかい素材のものを着てあげるとしっくりきますよ。
信頼感・清潔感はプチプラでも出せます!
選挙事務のゴールは「選挙を滞りなく遂行すること」です。一方で、ものを運んだり押印したりするなど、いつもの勤務よりも汚れることが増えるのが選挙事務の憂鬱なところ。このため、はっきり言うと、「汚れてもショックを受けないもの」を着ていくのが1番です。
ましてや緊張感を強いられる仕事をしている中で、お気に入りが汚れて気持ちが滅入るのは誰だって避けたいですよね。
ただし、普段着ではなくきちんとした仕事着でいきましょう。以下、信頼感・清潔感をプラスするために押さえておきたい、かんたん3ヶ条です。
①サイズは合っているか
②シワシワ、ヨレヨレではないか
③周囲と調和した色使いか
この3つを意識すれば、誰かから注意を受けたり周囲の目は気にしなくてもよいはずです。特に男性の場合は①、女性の場合は③を意識してみましょう。言うまでもなく②は共通して大事ですね。
選挙の際、自治体職員は縁の下の力持ちとして活動しますが、一方で何度も書いたように、いつもより住民の方と接することが増えるのが選挙です。普段はなかなか庁舎に来られない人も「役所の職員さん」と接する数少ない機会となります。同時に長丁場の勤務となりますので、ぜひ服から心を作って乗り越えてください。
「ベーシックカラー」でまとめるべき
これは意外と気付かない視点かもしれませんが、選挙においては色の持つメッセージ性が普段より強まります。特に国政選挙はテーマカラーが明確に分かれているので、赤や青などの特定の色味は身につけないようにしましょう。
立候補受付の際や説明会、そして投票事務もそうですが、特に開票事務では候補者に支援者が開票所に出向きます。私も選挙のイメージ戦略のお仕事をいただくことがありますが、選挙が近づくにつれて、自分のお客様の使った色にはとても敏感になってしまいます(他の人のネイルカラーですら二度見してしまいます)。
こういう背景もあり選挙のシーンでは紺、ベージュ、グレー、白などのベーシックカラーのみのコーディネートを組むことを強くおすすめします。普段鮮やかな色を身につけている人もこの日だけは我慢しましょう。
また夏場の選挙の場合、グレーやベージュなどの明るい色だと背中や脇の汗染みが目立ってしまうので、汗っかきの人はネイビーや白を基調とした装いがおすすめです。黒は光を吸収して熱こもらせる性質があるので、暑がりさんは避けるのがよいです。
またTシャツ着用可の場合、選ぶTシャツは下着のように見えない生地のしっかりしたものにしましょう。
アンケートにあげられた参考情報
この連載の執筆にあたっては、現職公務員の方々から様々なご意見を伺いました。以下、「なるほど」と思ったものを一部掲載してみます。
・投票所が仰々しい雰囲気なので、入りやすいようあえてビジカジを貫いています。
・当日はパンプスとスニーカーをそれぞれ持参しています。
・高いヒールははかないようにしている。
・投票事務と開票事務と続けて担当するときは、手間がかかりますが着替えを準備していました。開票事務は動きやすさ重視なので。
・期日前投票を市民会館で担当したときは予想していたよりも冷房が効いていて、カーディガンなどの羽織りが必須でした。
・押印の時に白のブラウスを汚して以来、上半身は暗い色と決めています。
・監督者はジャケット着用、投票事務従事者や開票事務従事者はTシャツなどの動きやすい格好になっています。
・普段以上に清潔感、信頼感が出せるよう気をつけています。
選挙は民主主義の根幹であり、それを支えているのが全国の自治体職員のみなさんです。私は広域自治体出身ということもあり、恥ずかしながら選挙事務の経験はなく、執筆にあたりいろいろな方からお話を伺いました。当たり前のように選挙が行われ、当たり前のように当落の結果が出る中で、その裏には数々のドラマがあって選挙事務の奥深さ、そして円滑な選挙運営の大変さを知りました。
次回は暑い時期の選挙となります。ご自身の体調を労わりながら、大変なときこそ「服からパワーをもらう」ことを試してみてくださいね。
(「《忙しい公務員も即実践できる!》夏を快適に過ごすための身だしなみのポイント~服装編」に続く)
★ 本連載の記事一覧
自治体通信への取材のご依頼はこちら
■ 古橋 香織(ふるはし かおり)さんのプロフィール
元東京都職員
イメージコンサルタント
早稲田大学を卒業後、東京都庁に入庁。都職員時代は消費者行政や東京都議会議会局に勤務。在職中にイメージコンサルティングを学び、2020年1月に東京都を退職し独立。
堅さを求められる人たちへの「仕事映え」するスタイリングが得意。北海道から沖縄まで全国の公務員が受けているイメージコンサルティングのコンセプトは「心の戦闘力を服で上げる」こと。「職場で初めて服を褒められた」「自信が出た」などの多くの現職公務員の支持を得ている。
2021年11月に『公務員男性の服~普通の服で好印象・信頼・清潔感は出せる』(ぎょうせい)を上梓。
〈Color Commonsのサイト〉 https://colorcommonslab.com/
〈連絡先(問い合わせフォーム)〉http://colorcommonslab.com/otoiawase