

寝屋川市(大阪)職員の岡元 譲史さんが滞納整理というハードな仕事を通じて得た経験、気づきなどをシェアする本連載。今回は「大きな仕事」を首尾よく成し遂げるための心がけやマインドセットなどについて。「ここ一番!」で120%の力を出し切るために実践していることを岡元さんがお伝えします。
助けてもらう力
先月のことになりますが、私が課長をしている社会教育推進課が所管する最大のイベント「成人式」が無事に終了しました。会場は満員で、大盛況。アンケート結果も好評であり、“大成功”といって差し支えない内容だったと思います。応援含め約40名のスタッフで運営。各職員がそれぞれの持ち場でしっかりと役割を果たしてくれたおかげです。
このように大きなイベントが教えてくれるもののひとつに、『助けてもらう力』の大切さがあると思います。
当然のことですが、イベントを動かそうと思ったら、決してひとりではできません。皆で協力する必要があるわけですね。そして、メンバーと日頃からちゃんとコミュニケーションが取れていないと、こういう時にうまくいきません。役割分担を決めて、仕事を割り振ったとしても、その人の気持ちまではコントロールできないからです。
たとえば、メンバーが「あんなリーダーの仕切るイベント、やってられない」と思ったとしたら、どこかで手を抜く、サボるなど、気持ちも入りません。そういうことが重なると盛り上がりに欠け、ミスも起きやすくなると思います。
一方、メンバーに「このリーダーが仕切るイベントなら、なんとか成功させたい」と思ってもらえたなら、きっとそのイベントはうまくいきます。特に大勢のスタッフが関わる大きなイベントでは、そのような、リーダーの『助けてもらう力』や『支えてもらう力』みたいなものがすごく大事なんじゃないかと改めて思いました。
そういう観点から考えると、今回の成人式のMVPは、担当係長ですね。彼は日頃から担当外の仕事に対しても積極的に応援する姿勢があり、ピンチの時に役立つ「代打の神様」と呼ばれています(笑)。結果、周囲も「今度は自分が力になりたい」という空気になります。今回の成人式の成功は、彼の『助けてもらう力』にある気がしますね。
私自身、「自分ひとりの力なんてたかがしれている」と心底思っているので、この『助けてもらう力』を磨くように心がけています。
「緊張」にはこんな価値があるんです!
また、大きな仕事を前にして生まれやすい「緊張」という状態を深堀りすれば、そこにも価値があることを理解でき、緊張を味方につけて「ここ一番」を乗り切れるんじゃないかなと思います。
そのために私が今回の成人式のようなビッグイベントで大役を務める時や研修講師で100人を超える人達の前で喋る時などに実践していることをふたつ、お伝えしますね。
まずひとつ目は、「緊張とは、自身が戦闘態勢である証拠」という認識を持つこと。
緊張すると手に汗をかいて、逃げ出したくなるような衝動にかられますよね? これって、太古から人が狩りをする時や敵と戦う時に生じる反応だそうです。アドレナリンをバーッと出し、全身の血を巡らせることで身体を活性化させて、より動きやすい状態にする。つまり、「緊張とは、戦闘態勢に入ったサインである」わけです。
ですから、その時の自分の心の反応を「あぁ、緊張してきた、どうしよう」ではなく、「よしよしよしよし、バッチリ戦闘態勢に入りました!」と私は捉えます。
“心の声”を変えることで、緊張してもその意味を変える。これがひとつ目。

“心の声”を変えてみよう!
心を外に向ける
ふたつ目は、「自分の心を内ではなく、外に向ける」ということ。「緊張する」という状態の裏側には「失敗したらどうしよう」という不安があることが多いですよね。この「不安」がなぜ起こるかというと、心が内側を向いていて、「自分がどうなるか」ということに焦点を当てているからです。
そうではなく、心を外側に向ける。例えば今回の成人式であれば「参加してくれた二十歳の子達に『来て良かったな』と思ってもらえるように、自分の持てる全力を尽くそう」という風に考える。研修講師であれば、「貴重な時間を使って参加してくれている人達に自分が今、伝えられることを、全身全霊で伝えよう」と考える。
このように、心を外に向けることができると、そこに残るのは「不安」ではなく、「覚悟」や「意気込み」になります。参加者や受講者のことを考えていたら自分のことを考えている暇がないから、結果、不安になることがないし、過度な緊張もしない。そんな感じです。
なので、大きな仕事を前にして、ここ一番で緊張してしまう人は、このふたつを思い出してもらって、心の中で
「さぁ、それでは皆様に最高のパフォーマンスをお見せしましょう!」
と高らかに宣言してみてください。多少は緊張が和らぐかもしれません。
みんなに支えてもらう、自分の心のありようを変える。このふたつが「ここ一番」に強くなれる鍵、なんじゃないかなと思います。是非、参考にしてみてください!
(続く)
■ 岡元 譲史さんの著書紹介
