※下記は自治体通信 Vol.26(2020年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
職員減少が進む自治体業務において、いかに効率化を行っていくかが求められている。さらに新型コロナウイルスの感染拡大を契機とした、ニューノーマルな働き方の観点からも見逃せない課題に。そんななか、久慈市(岩手県)では、ICTを活用した業務効率化を図る実証実験を行い、令和2年7月からAI-OCRとRPAの導入を始めた。同市の谷川氏に、業務効率化を図った背景や今後の活用法などを聞いた。
久慈市データ
人口:3万4,291人(令和2年7月31日現在)世帯数:1万5,708世帯(令和2年7月31日現在)予算規模:277億1,060万8,000円(令和2年度当初)面積:623.50km²概要:岩手県北東部の沿岸に位置し、東側は太平洋に面した海成段丘が連なり、西側は、遠島山など標高1,000m以上の山嶺を有する北上高地の北端部にあたる。また、東流する久慈川・長内川等の河川が北上高地を開析し、急峻な渓谷を形成しながら太平洋に注いでいる。古くから郷土に伝わる風習、芸能、行祭事も多く、特に9月に行われる「久慈秋まつり」は、南北朝時代から行われている、伝統を誇る岩手県北最大級のまつりと言われている。
実証実験により、入力業務の効率化を実感
―業務効率化を図った背景を教えてください。
久慈市では東日本大震災や台風などの災害が続き、その対応に追われる一方で、職員数が減少しています。そんななか、当市では職員の健康を維持しつつ、住民サービスの質を高めることが必要と考えて、業務の効率化が課題でした。課題解決のひとつの方法としてICTを活用した業務効率化を模索し、注目したのがRPAでした。小さい規模から始められ、幅広い業務で活用できそうだ、と。
そうしたなか、平成30年にNTT東日本からAI-OCR『AIよみと~る』とRPA『おまかせRPA』を組み合わせた業務効率化の提案を受けました。ただ当時、すぐ検討にはいたりませんでした。
―それはなぜですか。
同社のAI-OCRがLGWANに対応していなかったためです。ただ、提案のなかで、RPAで入力を自動化する前段で紙帳票入力を電子化する必要性を理解し、AI-OCRの活用でより業務効率化につながるというのはよくわかりました。
―その後、どのように導入の検討を進めたのでしょう。
令和元年に同社のAI-OCRがLGWAN対応になったことを契機に、実務レベルでの効果を確認するため、実証実験を行いました。実証実験では、事前に担当課全体へヒアリングを行い、導入の意向があった課を中心に実施しました。その結果、年間2万件のふるさと納税処理業務、約4,000枚のアンケート集計業務にて、とても高い効果を実感しました。
―どのような効果でしたか。
ふるさと納税では、作業に要する時間が月あたり約78%削減。アンケート集計業務は約83%の時間削減につながりました。特にアンケート集計業務に関しては、担当職員が驚くほどでしたね。
また7月からは、児童手当現況確認などの、子育て関係の業務でも新たに導入を進めており、今後さらにほかの業務での適用も検討していきます。
将来的には対象業務を拡大し、テレワーク導入にも活用を
―これからの活用方針を教えてください。
新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、当市でもテレワークの検討を今後する必要があると思っています。将来的には、AI-OCRで紙帳票の文字を電子化しておけば、庁舎へ出勤し入力作業をする必要性をなくすことができ、テレワーク可能な業務領域が広がるのではないか、といったことなどを模索しています。
こうした、業務効率化の検討を進め、緊急事態宣言のような状況下においても、業務継続できる体制づくりをめざしたいです。
※『AIよみと~る(LGWAN接続タイプ)』のご利用には、スキャナーなどの帳票類を電子化する機器および総合行政ネットワーク(LGWAN)への接続環境が必要です