※下記は自治体通信 Vol.58(2024年6月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
自治体において、各業務のデジタル化が急速に進められている。そうしたなか、自治体に対してデジタル活用支援を行っている日本ソフトウエアマネジメントの横山氏は「現状、学校と保護者との情報伝達が確実に行われないこともある課題があり、その解決策にはセキュアな状態を担保したデジタル化が必要だ」と話す。その課題と解決策の詳細を、同社の伊加氏も交えて聞いた。
日本ソフトウエア マネジメント株式会社
事業推進部第2部 バイオグループ
横山 頌弥よこやま しょうや
平成6年、高知県生まれ。平成30年、日本ソフトウエアマネジメント株式会社に入社。AIの研究開発業務に携わり、現在は保護者ポータルサイトの開発を担当している。
伊加 菜摘いが なつみ
平成7年、岡山県生まれ。令和5年、日本ソフトウエアマネジメント株式会社に入社。保護者ポータルサイトや、給食費徴収管理システムを導入・運用・保守する業務に携わる。現在は、システム操作研修や機能要件の検討・調整を担当している。
複雑なやりとりを行うには、メールやアプリでは難しい
―学校と保護者が情報伝達を行う際の課題はなんでしょう。
横山 公立学校において、保護者への連絡を紙で行うケースがいまだに見られる点ですね。その際は、教職員が児童・生徒に紙を渡す形で保護者に届けるのですが、児童・生徒が紙を保護者に渡すのを忘れたり、紙自体をなくしたりすることがあるので確実に届く保証はありません。そのため、より確実に保護者とやりとりするためには情報伝達のデジタル化が必要なのです。
伊加 令和2年に文部科学省が、学校・保護者間における連絡手段のデジタル化を推進する旨を発出*したこともあり、メールやアプリを使って保護者とやりとりする公立学校も増えています。簡単なやりとりを行う場合はそれでまったく問題ないでしょう。ただ、ドリルなどの学校用品を保護者に購入してもらったり、アレルギーを考慮した学校給食の申し込みをしてもらったりといった、個人情報を含むより細かいやりとりを行いたい場合は、情報セキュリティや管理の面などから難しいです。
―なにか解決策はありますか。
横山 情報セキュリティを担保しつつ、保護者とデジタルでやりとりができるシステムを導入すればいいのです。たとえば、当社では公立小中学校と保護者との情報伝達システム「保護者ポータルサイト」を独自に開発して提供しています。保護者が利用する際、まず「マイページ」を保護者に設定してもらいます。公立学校が「保護者ポータルサイト」に情報を送った際、メールやSMSを通じて、保護者に通知されます。その後、保護者は「マイページ」にログインすることで情報の確認や返信ができるのです。「マイページ」はパスワードで保護されているため、保護者や児童・生徒の個人情報にかかわるやりとりも可能になるのです。
*発出 : 文部科学省「学校が保護者等に求める押印の見直し及び学校・保護者等間における連絡手段のデジタル化の推進について(通知)」
必要に応じてメニューの追加を検討
―実際にどのようなやりとりができるのですか。
伊加 たとえば、先ほど話した「学校用品の購入」「学校給食の申し込み」のほか、「三者面談の申し込み」「欠席・遅刻・早退連絡」「アンケート回答」「ラーケーション*申請」といったやりとりを行うことが可能です。それぞれメニューになっていて、それらをクリックすると保護者は必要な記入事項をプルダウンで選択できるなど、簡単に操作できます。また、記入した内容は履歴として残るため、学校も保護者も情報の管理ができるのです。特に「学校用品の購入」などは、学校がシステム上で管理したうえで、保護者と販売業者が直接やりとりするので、学校が購入品を一時預かりするといった手間もなくなり、非常に便利だと言えるでしょう。
―自治体に対する今後の支援方針を教えてください。
伊加 「保護者ポータルサイト」によって、学校と保護者との確実かつスムーズな情報伝達を実現するとともに、教職員の業務効率化にも貢献していきたいですね。
横山 今後は、必要に応じてメニューの追加を検討していきます。「マイページ」を活用すれば、情報漏えいの心配をすることなく安全・安心に保護者との情報伝達が可能で、学校業務で必要なあらゆる情報のやりとりを行うことができます。保護者とのやりとりに課題を感じていたり、教育分野のDXを検討したりしている自治体のみなさんは、ぜひ問い合わせてほしいですね。
*ラーケーション : 「ラーニング」と「バケーション」を組み合わせた造語で、余暇中に学ぶ行為を指す