※下記は自治体通信 Vol.63(2025年1月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
文部科学省を中心に進められている「校務DX」だが、学校と保護者間の連絡手段はDXに遅れが目立つ業務分野の1つだ。その理由を、ITベンダーである日本ソフトウエアマネジメントの横山氏は、「既存のデジタルツールの導入では、課題が残るケースが多いから」だと指摘する。一方で、「クラウドを活用すればその課題もなくなる」という。同氏が指摘する「課題」とはなにか。また、クラウドの活用でそれはどう改善されるのか。同社の犬飼氏を交えて聞いた。
日本ソフトウエアマネジメント株式会社
事業推進部 第3部
横山 頌弥よこやま しょうや
平成6年、高知県生まれ。平成30年、日本ソフトウエアマネジメント株式会社に入社。AIの研究開発業務に携わり、現在は保護者ポータルサイトの開発を担当している。
日本ソフトウエアマネジメント株式会社
製品・サービス企画部 第1グループ
犬飼 日菜いぬかい ひな
平成11年、神奈川県生まれ。令和3年、日本ソフトウエアマネジメント株式会社に入社。学校徴収金の管理システムを普及・拡大する業務に携わり、システム操作研修や購買管理システムなどの製品企画を担当。
既存のメール通知では、業務負担を十分軽減できない
―学校と保護者間の連絡業務の現状をどのように捉えていますか。
犬飼 学校と保護者間の連絡業務は、いまも児童・生徒を介した文書の手渡しが主流で、文部科学省が推進する「校務DX」のなかでも特にDXの遅れが指摘されている業務です。特に、学校徴収金や児童・生徒のアレルギー履歴など、機微な情報を含む連絡には通知文書の封入封緘が必要で、教職員が時間と労力を費やして手作業で対応しています。こうした課題の解決を目的としたデジタルツールは多くありますが、これらを導入しても残される課題があります。
―どのような課題でしょう。
犬飼 伝達漏れが、どうしても生じてしまうのです。こうしたツールの多くは、メールで文書を配付するシステムを採用していますが、メール通知では保護者が閲覧したか判別できず、迷惑メールフォルダへの誤分類などもあり得ます。また、学校への申し込みや入金を要するケースで締切を過ぎても連絡がない保護者には、教職員が放課後などに電話や訪問を行う個別確認が必要です。こうした業務は教職員の超過勤務の一因となるほか、心理的負担も懸念されます。そのうえ、メールは情報流出のリスクが高く、個人情報を含む文書については、結局は封入封緘した文書を手渡しする学校も多いようです。つまり、既存のツールでは、個別確認や封入封緘の負担という課題も残されてしまうのです。
伝達効率を高める仕組みで、手作業は限りなくゼロに
―よい解決策はありますか。
横山 ひとつの解決策として、クラウドの活用があります。クラウドであれば、保護者のアカウントごとにマイページを設けて、個別に文書ファイルを格納・確認する「クラウド私書箱」のような仕組みを構築できるため、保護者はマイページ内に整理された文書の確認がいつでも可能で、伝達漏れの防止効果が高まります。加えて、システム上でファイルを一元管理するため、情報の流出リスクを抑え、機微な情報を含む文書の通知も行えます。こうしたクラウドの特性を活かし、当社では『デジタル封入封緘』というクラウドサービスで、教職員の負担軽減を支援しています。
―どのようなサービスですか。
犬飼 まず、教職員がシステムに文書ファイルを格納すると、システムが自動で保護者ごとのマイページに振り分け、保護者の端末に通知します。それらのファイルの書面には、たとえば申し込みの「はい・いいえ」といったボタンを設定でき、どの保護者が、どのボタンを押したのか、あるいは押していないかを自動でリスト化し、教職員はCSVファイルで確認できます。押していない保護者には再通知もシステム上で行えます。さらに、学校口座への入金履歴を学校・保護者の双方で閲覧でき、未納分の督促もシステム上で完結します。このような仕組みで伝達漏れを防ぐことで、教職員による個別確認の負担を軽減します。
横山 もし保護者がアカウントを登録せず、システムで連絡できない場合は紙による通知が必要ですが、封入封緘を要する場合は当社での代行も可能です。こうした支援で、文書の送付に伴う教職員の手作業もゼロに近づけます。
―自治体に対する今後の支援方針を教えてください。
横山 学校と保護者間の連絡業務の効率化を支援し、教職員が本来の職務である児童・生徒と向き合える時間を創出します。そのうえで「校務DX」が目指す、教職員が児童・生徒を第一に考えられる教育現場の実現に貢献していきますので、ぜひ当社を活用ください。