自治体通信ONLINE
  1. HOME
  2. 「バックナンバー」一覧
  3. Vol.10
  4. 【西条市】ICT活用の遠隔授業の可能性(ICT活用の共同授業の事例)
先進事例2019.12.10

【西条市】ICT活用の遠隔授業の可能性(ICT活用の共同授業の事例)

【西条市】ICT活用の遠隔授業の可能性(ICT活用の共同授業の事例)

愛媛県西条市 の取り組み

【西条市】ICT活用の遠隔授業の可能性(ICT活用の共同授業の事例)

西条市長 玉井 敏久
教育委員会 指導部 学校教育課 渡部 誉

離れた学校の教室をICTで結ぶ遠隔合同授業。人口減少社会に向けて注目されるこの技術の可能性を検証する実証実験が現在、文部科学省によって進められている。その舞台のひとつが西条市(愛媛県)だ。「教育」を地域活性化の重要な施策と位置づける同市の玉井市長と担当者の渡部氏に、新技術にかける期待などを聞いた。

※下記は自治体通信 Vol.10(2017年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

愛媛県西条市データ

人口: 11万953人(平成29年7月末現在)  世帯数: 5万509世帯(平成29年7月末現在) 予算規模: 779億8,350万3,000円(平成29年度当初) 面積: 509.98km² 概要: 平成16年に西条市と東予市、周桑郡小松町、同丹原町が対等合併して新たに西条市が誕生。愛媛県内では久万高原町、西予市に次ぐ第3位の面積を有する。
南には西日本最高峰の石鎚山、北には瀬戸内海と、海と平野と山が揃った風光明媚な地域。全国的にもまれな被圧地下水の自噴地帯が広範囲にわたって形成されており、「水の都」としても知られる。豊かな水資源を利用した多種多様な農作物の一大産地であるとともに、さまざまな業種の工場が立地しており、四国最大規模の工業地帯となっている。

―遠隔合同授業の実証実験に参加した背景を教えてください。

 市町村合併で市域が拡大した本市は、旧行政区の間でさまざまな環境の違いが生まれています。そのひとつが教育環境です。少子化が加速する旧町行政区では全校生徒十数人、複式学級(※)を編制せざるをえない小規模校もあります。

 他方、本市ではかねてより「小学校の統廃合はしない」という方針を掲げてきました。「小学校は、地域の活力を維持するために欠かせない存在」との理念があるからです。この方針を堅持するために、ICTを活用した遠隔合同授業に可能性を見出しました。

※複式学級 : 2つ以上の学年をひとつにした学級のこと

―実証実験の成果をどう評価していますか。

 教育現場での反応は非常によいです。それは子どもたちの表情にもっとも表れています。子どもたちがイキイキとしている学習風景を見て、「これは間違いじゃないな」との想いを深めています。また、地域住民からも「地域間格差を埋められる」と期待の声が寄せられています。全国からも注目を集めており、今後、市内はもとより、全国展開のモデルになりえると自負しています。

―今後の市政ビジョンを聞かせてください。

 人口減少社会を前に自治体の存続が各地で議論されるなか、選ばれる自治体になるには、教育は重要なテーマのひとつです。教育環境の先進性は人を呼び込む「魅力」であると考え、今後も教育分野のトップランナーであり続けます。そのためには、国からの補助金を待っているのではなく、民間企業とのコンソーシアムを積極的に進め、勝ち残りをめざしていきたい。そして他の地域に暮らす人々がうらやむ“ワクワク度日本一”の西条を実現していきます。

―西条市での遠隔合同授業実証実験のコンセプトはなんですか。

 ひと言でいえば、一体感を生み出すことです。西条市の実証では、遠隔地の教室にいる教師や児童を教室に設置した2面の大型スクリーンに等身大で映し出します。手を伸ばせばあたかも友だちや先生にふれられるかのような臨場感をもたせた「バーチャルクラスルーム」を実現することにこだわっているのです。これにより、同じ空間で、多人数で授業をしている感覚が得られるので、「練り合い活動の不足」といった小規模校のデメリットを解消できるのです。

―遠隔合同授業を成功させるためのポイントはなんでしょう。

 現場の先生が簡単に使いこなせるシステムをいかに構築するかがポイントです。西条市では、遠隔合同授業システムの中核として、大手事務機器メーカーが提供するWeb会議システムを採用。ボタンひとつで接続でき、授業が終わるまで一切の操作が不要です。そのうえ、事業者の協力のもと、プロジェクターやスピーカー、スクリーンなどの周辺機器もボタンひとつで自動的にスタンバイできる仕組みを構築。年間150時間の活用シーンでも問題なく稼働しており、先生たちは授業に集中できています。

―この成果を今後、どのように実用化していく考えですか。

 遠隔合同授業の横展開として、市内の中学校への導入を考えています。さらに、今後新たな学習指導要領で推進される「外国語教育」や「キャリア教育」への活用を期待しています。海外のクラスとつないで英語力を試したり、民間企業とつないで職場体験に活用することで、一体感、臨場感のあるシステムならではの効果が発揮されるでしょう。平成29年11月24日には遠隔合同授業実証事業の「研究発表大会」を西条市で開催し、最新の成果をお示しする予定です。

電子印鑑ならGMOサイン 導入自治体数No.1 電子契約で自治体DXを支援します
自治体通信 事例ライブラリー
公務員のキャリアデザイン 自治体と民間企業の双方を知るイシンが、幅広い視点でキャリア相談にのります!