新潟県村上市の取り組み
災害対策へのSNS活用
LINEと「拡張ツール」の導入で、災害に備えた情報伝達手段を増強
村上市 企画戦略課 企画政策室 主査 八藤後 卓也
※下記は自治体通信 Vol.46(2023年1月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
災害や防災に関する情報をより多くの住民へ確実に伝えるため、複数のコミュニケーションツールを用いて情報伝達の多重化を図る自治体が増えている。村上市(新潟県)もそうした自治体のひとつで、令和4年度にはLINEで災害情報を発信する仕組みを構築。その仕組みについて、同市の八藤後氏は「情報伝達手段の多重化にとどまらない、大きな成果を得られている」と語る。取り組みの詳細を同氏に聞いた。
[村上市] ■人口:5万6,023人(令和4年12月1日現在) ■世帯数:2万2,373世帯(令和4年12月1日現在) ■予算規模:607億9,983万円(令和4年度当初) ■面積:1,174.17km2 ■概要:新潟県の北端に位置する。後期旧石器時代の石器や、6世紀の浦田山古墳群が発見されていることから、古くから朝鮮半島を含む広い地域との文化的交流があったと考えられている。市の名称は、享保5年(1720年)に越後村上藩より譜代大名の間部詮言が越前鯖江藩に入封したことに由来する。長い歴史と豊かな自然を受け、稲作を中心とした農業や、林業、畜産業、水産業と、多くの地場産業を有している。
防災メールの内容を、LINE利用者へ簡単に配信
―村上市では、どのように災害情報を発信しているのですか。
これまでは、防災行政無線のほか、ホームページや、一般に「防災メール」と呼ばれるメールマガジンなどで情報を発信していました。なかでも防災メールは登録数が1万6,000以上と多く、特に有力な情報伝達手段として活用していました。しかし、スマホの普及が進むこの数年は、メール以外のツールの利用が増えるなか、情報伝達手段の多重化を図る必要性も感じていました。そこで注目したのが、老若男女を問わず普段使いされているLINEでした。公式アカウントの開設準備と並行し、LINEに便利な機能を実装できる「拡張ツール」の導入を検討しました。
―ツールの導入を検討する際は、どういった点を重視しましたか。
防災メールと連携できることを必須条件としました。防災メールは、災害をはじめ緊急性の高い内容が含まれるうえ、すでに多くの住民にリーチできる手段となっていたため、一人でも多くの住民に情報を伝えるという目的から、LINE導入以降も引き続き活用したいと考えました。複数の拡張ツールを検討した結果、我々が希望する機能を揃え、自治体での活用実績も豊富な『KANAMETO』を選定し、令和4年9月に導入しました。
―導入効果はいかがですか。
LINEを通じ、防災メールの内容を簡単に発信できるようになりました。防災メール側のシステムを操作するだけでテキストがLINE利用者へ転送される仕組みなので、従来と比べて職員の手間が増えることはありませんでした。また防災メールでは、感染症や交通などに関する情報も発信していますが、LINEを利用する住民は受け取る情報の種類を選べるようになり、住民サービスの向上にもつながっています。
ほかにも、『KANAMETO』の導入により災害対応を視野に入れた便利な機能を実装できています。
住民は「通報機能」を使い、災害状況を報告できる
―具体的に、どういった機能を実装したのですか。
災害状況の報告を住民から受け付けられる「通報機能」を実装しました。平常時は公共設備の破損や不具合に関する通報用に使えますが、災害時には「河川の氾濫」や「浸水」など緊急性の高い通報も受け付けられるよう設定できます。住民は、チャットボットの案内に従い簡単に位置情報や写真を送り、通報できるようになりました。情報伝達手段の多重化にとどまらず、緊急時に双方向のコミュニケーションを密に取れる仕組みを築けたのは、『KANAMETO』導入で得られた大きな成果です。
支援企業の視点
「拡張ツール」による機能実装は、LINE活用の新標準に
transcosmos online communications株式会社 代表取締役社長 貝塚 洋
―LINEを活用する自治体は増えていますか。
LINE公式アカウントを無料で開設できる「地方公共団体プラン」が令和元年に提供されて以降、LINEを活用する自治体は急増しています。LINE社によると、その数は令和4年7月現在で約1,200自治体にのぼります。LINEは普及率の非常に高い情報伝達手段になったと言えますが、災害対策として活用するには「拡張ツール」をあわせて導入することが今後、新しいスタンダードとなるでしょう。
―それはなぜでしょう。
緊急時の情報発信に求められる迅速さと確実性を、さまざまな機能の実装により実現できるからです。たとえば当社が提供する『KANAMETO』の「防災メール連携機能」は、既存の防災情報配信システムとの連携によってLINE利用者に情報を配信できるため、手間なく迅速に情報伝達の多重化を図れます。「セグメント配信機能」との連動により、特定地域に住む利用者だけに情報を届けることも可能です。このほか「通報機能」では、緊急時専用の通報メニューを用意したり、通報内容ごとに所管部署を指定したり、細やかな設定で情報の取り扱いを効率化できる仕様が、導入自治体から高く評価されています。
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
『KANAMETO』はこれまで、約150の自治体で導入実績があり、現場の声をもとに機能の磨き込みをつねに行ってきました。今後も現場のニーズや課題に即した機能を充実させ、自治体の情報発信を支援していきます。
貝塚 洋 (かいづか ひろし) プロフィール
昭和63年、トランスコスモス株式会社に入社。海外事業本部副本部長などを歴任し、現在、同社の取締役副社長執行役員。平成28年、transcosmos online communications株式会社の設立に伴い、同社の代表取締役社長に就任。
transcosmos online communications株式会社
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