※下記は自治体通信 Vol.52(2023年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
各自治体において積極的にDXが進められているなか、電子契約システムに注目する自治体が増えている。導入に際しては、取引先となる地元事業者への理解促進がカギとなる。そうしたなか、美里町(埼玉県)では、地元事業者にも配慮した電子契約システムを導入することで、契約書のデジタル化を進めているという。同町担当者2人に、取り組みの詳細を聞いた。
[美里町] ■人口:1万825人(令和5年8月1日現在) ■世帯数:4,545世帯(令和5年8月1日現在) ■予算規模:95億8,712万3,000円(令和5年度当初)
■面積:33.41km² ■概要:埼玉県の北西部に位置している。都心から約80kmの距離にあり、電車にて約1時間半圏内でアクセスが可能。小山川、志戸川、天神川が流れ、自然豊かな田園風景の広がる環境にあり、気候は温暖で、米麦、野菜、果樹など、多様な農作物が栽培されている。特に、約34haという広大な植栽面積を誇るブルーベリー農園では、ウェイマウス、ティフブルー、フェスティバルなどの品種が実り、収穫体験もできる。
ペーパーレス化の入口として、契約の手間・コストに着目 ―美里町が電子契約システムを導入した背景を教えてください。
茂木 当町では、令和4年度よりDXの推進に向けて取り組んでおり、そのなかのひとつに「行政内部のペーパーレス化」があります。そして、それを具体的に実行する手段のひとつとして、契約業務のデジタル化に着目しました。
細村 紙で契約を交わす場合、当町が契約書を紙で印刷して、事業者に送付または手渡します。次に、事業者が受け取った契約書を製本および押印します。それを、事業者が当町に送付または来庁して手渡しを行い、当町が押印・返送したものを事業者が受領し、それぞれで保管する。いままでこれだけの手間をかけていたほか、印刷コストなどもかかっていました。そのため、これら一連の業務をデジタル化することで、当町だけでなく事業者も業務効率化とコスト削減が図れると考えたのです。
―どのように検討を進めていったのでしょう 。
茂木 すでに電子契約システムを導入している自治体の事例を調べるなかで、当町がICT・IoTなどの活用に関する連携協定を結んでいるNTT東日本が、電子契約システムを提供していることがわかりました。それが、『クラウドサイン for おまかせ はたラクサポート』で、デモを操作させてもらうことにしたのです。
細村 デモで実感したのは、操作が簡単で使いやすい点。これなら、「ICTに関する知識のない職員でも使えるのでは」と考えました。また、同サービスは埼玉県での試験導入も含め実績があるほか、導入後のサポートも充実しているとのこと。そうした点も評価し、令和5年2月から導入しました。
地元事業者へ説明会を開催、中小企業も電子契約に積極的 ―その後は、いかに導入を促進していったのですか。
茂木 まず導入にあたっては、NTT東日本の協力のもと、職員向けはもちろん、地元の事業者向けにもオンライン・オフラインによる説明会を開催しました。実際に、オンラインで約40人、オフラインで約20人の事業者が参加。「電子契約に慣れているような大手企業の参加が多いのでは」と想像したのですが、家族で経営している地元の事業者なども積極的に参加いただいていました。導入してみて感じたのは、規模が小さい中小企業ほど、「手間やコストが軽減されるならやってみよう」と決断も早いということでした。
細村 説明会のおかげもあり、まだ導入して間もないものの、2月から5月における入札案件の電子契約率は約80%にのぼっています。これは、当初想定した数値を上回る結果です。ちなみに、割合は把握していませんが、同時期における随意契約でも40件で電子契約が締結されています。
―今後の電子契約システムの活用方針を聞かせてください。
細村 積極的に電子契約システムを活用することで、庁内のペーパーレス化を図っていきたいと考えています。電子契約システムの導入で、事務の手間がかなり軽減されました。こうした効果を職員が実感することで、DXの重要性を庁内で認知させていきます。
茂木 システム導入後、県内の自治体から電子契約導入に対し多くの問い合わせをいただいており、関心の高さを実感しています。当町にとどまることなく、電子契約システムが近隣自治体に広がっていけば、地域における事業者のさらなる業務効率化が図れます。多くの自治体が電子契約システムを活用することによって、地域DXの推進が加速していくものだと考えています。
電子契約システムの導入②
電子契約システムの普及には、地元事業者を巻き込んだケアが必要
ここまでは、電子契約システムの導入によってDXを推進している美里町の事例を紹介した。ここからは、同町の取り組みを支援したNTT東日本を取材。同社担当者の北森氏に、電子契約システムを導入するうえでのポイントなどを聞いた。
東日本電信電話株式会社
ビジネス開発本部 CXビジネス部
北森 雅雄 きたもり まさお
昭和62年、東京都生まれ。平成23年に東日本電信電話株式会社(NTT東日本)に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングを担当。平成28年から現職にて、AI関連サービスの開発・デジタルマーケティングを担当。
DXが庁内にとどまらず、地域とのやり取りにまで拡大 ―電子契約システムを検討および導入する自治体は増えているのでしょうか。
実際に増えています。理由としては、令和3年1月に地方自治法施行規則が改正されたことで、自治体が電子契約システムを導入しやすくなった点があげられます。さらに、個人的には、庁内のDXが次のステップに移行しているという印象を受けています。
近年DXが叫ばれるようになり、各自治体はAI-OCRやRPAといったICTツールの導入などで庁内のDXを進めてきました。それがある程度落ち着いたことにより、今後は庁内だけにとどまらず、地元事業者との契約といった対外的なコミュニケーションにもDXを推進していこうという自治体の意欲が見てとれます。こうした動きは今後も活発化すると考えられ、電子契約システムの導入はさらに進んでいくでしょう。
―電子契約システムを検討する際のポイントはなんですか。
まずは、情報セキュリティがいかに担保されているかですね。また、信頼性においては導入実績も、重要な目安になります。そして、操作が簡単でわかりやすいか。これは、職員目線はもちろん、契約先となることが多い地元事業者の目線も重要です。最後に、導入後のサポートが充実しているか。こうしたポイントを押さえていれば、地元事業者を含めて導入もスムーズに進むでしょう。たとえば、当社が提供しているクラウド型の電子契約サービス『クラウドサイン for おまかせ はたラクサポート』は、まさにそうした3つのポイントを押さえています。
電子契約システムに加え、オールインワン体制で支援 ―サービスの詳細を具体的に教えてください。
前提として、実際に弁護士が監修しており、電子署名法に準拠した電子署名とタイムスタンプによって情報セキュリティ面において安全な契約締結を実現しています。そして、ISMAP* に登録されているほか、LGWAN環境でも利用できるオプションもあり、さらに安心です。そうした点が評価され、多くの自治体や民間企業で導入が進んでいます。
また、直感的に操作ができるため、たとえICTの知識がなくてもすぐに利用することができます。
さらに当社では、手厚いサポートを提供するメニューを整えています。具体的には、導入前は例規改定のアドバイス・運用フロー整備・導入説明会の開催、導入後は電話やメール、端末の画面共有による問い合わせ対応を、自治体職員はもちろん、地元事業者に向けても実施。そうすることで、よりスムーズな電子契約システムの運用までをサポートするのです。
*ISMAP : 政府が活用するクラウドサービスのセキュリティを評価する制度のこと
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
『クラウドサイン for おまかせ はたラクサポート』を提案することで、自治体だけでなく地元事業者を巻き込んだ支援をしていきたいと考えています。そうすることで、地域全体にDX推進の文化を根づかせていきたいですね。 また当社では、電子契約システムのみならず、電子請求書や勤怠管理など内部事務のデジタル化支援やICTツールの提供、デジタル専門人材の派遣なども行っています。DXに関する支援をオールインワン体制で取り揃えていますので、「どこからDXに取り組んでいいのかわからない」という自治体担当者も、気軽に問い合わせてほしいと思います。