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香川県三豊市の取り組み
先進事例2024.08.01
観光拠点の新たな整備

コロナ禍で整備した「車中泊施設」が、全国の「愛好家」を集める観光拠点に

[提供] 一般社団法人日本RV協会
コロナ禍で整備した「車中泊施設」が、全国の「愛好家」を集める観光拠点に
この記事の配信元
一般社団法人日本RV協会
一般社団法人日本RV協会

※下記は自治体通信 Vol.59(2024年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

コロナ禍で大きな打撃を受けた産業の1つに、観光産業があげられる。当時、多くの自治体がその打開策を模索していたなか、三豊市(香川県)では、キャンピングカー利用者などをターゲットに駐車スペースやトイレ、近隣に温浴施設などを備え、快適に車中泊が楽しめる「車中泊施設」を市内各所に整備。コロナ禍が収束したいまも、「新たな観光拠点」として人気を博しているという。同市産業政策課の安藤氏に、車中泊施設を整備した経緯や現在の状況などを聞いた。

[三豊市] ■人口:5万8,293人(令和6年6月1日現在) ■世帯数:2万3,277世帯(令和6年6月1日現在) ■予算規模:573億6,458万6,000円(令和6年度当初)■面積:222.70km² ■概要:香川県の西部に位置する。平成18年に7つの町が合併して誕生した。面積は県内で2番目に大きい。「日本のウユニ塩湖」と呼ばれる「父母ケ浜」や、桜の名所「紫雲出山」が有名な観光スポット。果物や野菜の栽培も盛ん。
インタビュー
安藤 有規
三豊市
政策部 産業政策課 観光振興グループ 副主任
安藤 有規あんどう ゆうき

「移動抑制」の意識の強さから、観光振興策を見出せずにいた

―三豊市が、車中泊施設を整備した経緯を教えてください。

 コロナ禍では「移動抑制」の意識が強かったため、効果的な観光振興策を見出すことは難しい状況でした。そんななか、アウトドア人気が全国的に高まり、なかでもキャンピングカーで車中泊施設を利用して全国を回る旅行者が急増しているという新聞報道を目にしました。それによると、「自分たちだけの空間で過ごせる安心感」が人気の理由とのことでした。当市には、自然環境を利用して「密」を避けながら楽しめる観光スポットが多く、その特徴も活かせると考え、そうした旅行者をターゲットに車中泊施設を整備することにしたのです。

―どのように進めたのですか。

 「安心かつ安全に利用できる施設」にすることを重視しました。その視点で全国の車中泊施設を調べたところ、『RVパーク』という施設が目に留まりました。全国のキャンピングカー関連事業者からなる「日本RV協会」の認定を受けた施設で、車中泊スペースの近くに「24時間利用可能なトイレがあること」「入浴施設があること」など、同協会が定める8つの条件に合致しているかの審査も必要です。専門知識を有する協会の「お墨付き」のある施設なら利用者も安心できると考え、整備を決めました。早期の運営開始を目指し、トイレや入浴施設を新設せずにすむよう、市営の「道の駅」や「温浴施設」の駐車場の数区画を車中泊スペースにすることを検討し、同協会の審査を経て、令和3年10月から運営を始めています。

―運営状況はいかがですか。

 当初、3ヵ所の『RVパーク』に全14区画を整備し、1区画当たり2,500~3,000円の料金設定で運営を始めたところ、令和3年度末までの半年間で711人に利用されました。想定以上の反響だったため、その後5ヵ所・25区画まで増設した結果、令和5年度末までの累計利用者数は約6,500人、累計収入は約738万円まで拡大しています。コロナ禍での打開策で始めた『RVパーク』ですが、いまでは全国の車中泊愛好家を集める「新たな観光拠点」となっており、さらにそこから、周辺観光地への「回遊」が生まれています。

災害時には「防災拠点」に

―今後の方針を教えてください。

 『RVパーク』については、災害時には「防災拠点」としての機能の発揮を期待しています。というのも、『RVパーク』の認定条件の1つである「100V電源設備」をすべての区画に設置したからです。防災に資する新たな拠点の整備にもつながったと考えています。「南海トラフ地震」の脅威が迫るなか、住民に対しては、「防災拠点としてのRVパーク」の意義も伝えていきたいです。

支援企業の視点
費用負担を抑えて整備できれば、過去にない観光振興策にも挑める
インタビュー
関口 麻梨
一般社団法人日本RV協会
事務局 振興部会・広報部会 シニアマネージャー
関口 麻梨せきぐち まり
昭和61年、埼玉県生まれ。上智大学卒業。令和4年、一般社団法人日本RV協会に入職。以来、キャンピングカー文化を根づかせるために必要なインフラ整備にかかわる部署を担当。

―車中泊施設の整備に取り組む自治体は増えていますか。

 はい。コロナ禍以降、新たな旅の形として、さらに「車中泊ニーズ」が高まりました。自治体としては「安心して車中泊ができる場所の提供」という考え方のもと、そうしたニーズを取り込み、観光振興につなげたい想いがあるようです。官民をあわせ、コロナ禍当初は約250施設だった『RVパーク』が、現在445施設まで増えていますが、この増加要因は車中泊ニーズの高まりだけではないと考えています。

―なにがあるのでしょう。

 自治体は、費用負担を抑えて整備できるため、過去にない観光振興の試みにも挑みやすいのだと思います。『RVパーク』の認定条件のうち、「トイレ」「温浴施設」「電源」の設置以外は、「看板の設置」など費用負担が大きいものはありません。なかでも、三豊市のようにトイレや温浴施設を新設しないケースも多く、その場合、費用負担は電源の設置のみで、条件によっては1区画当たり数万円程度ですみます。加えて、電源の設置で新たな防災拠点の整備につながることも、『RVパーク』の増加要因の1つだと捉えています。

―自治体に対する支援方針を聞かせてください。

 当協会では、『RVパーク』以外に、キャンピングカーを通じたさまざまな支援を行っています。たとえば、令和6年能登半島地震の際は、全国から派遣されている応援職員の宿泊所として、被災地に60台のキャンピングカーを提供しました。今後も自治体に寄り添う支援を行いますので、ぜひご連絡ください。

一般社団法人日本RV協会
一般社団法人日本RV協会
設立

平成6年3月

事業内容

安心・安全な車両の製造と技術の向上に関する活動、普及・広報活動、キャンピングカー利用環境の整備・充実に向けた活動、防災に関する活動など

URL

https://www.jrva.com/

お問い合わせ先
045-270-3855(平日 9:30~18:00)
info-rv@jrva.com
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