栃木県小山市の取り組み
自治体専用ツールによる業務改革①
導入効果の高いチャットツールには、組織の風土を変える力がある
小山市
総務部 情報政策課ICT推進係 主事 早瀬 悠二
※下記は自治体通信34号(Vol.34・2021年11月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
行政のデジタル化が多くの自治体における共通の課題となるいま、業務改善効果を広く庁内に行き渡らせるには、いかに導入効果の高いツールを選び、適切に運用していくかが重要なカギになる。そうしたなか、小山市(栃木県)では、DX推進の基盤となるコミュニケーションの効率化を目的に、ビジネスチャットを採用。その際、導入効果を慎重に見極めるため、試験導入や効果検証を行ったという。それらの内容について、同市担当者に詳しく聞いた。
[小山市] ■人口:16万7,792人(令和3年10月1日現在) ■世帯数:7万1,940世帯(令和3年10月1日現在) ■予算規模:952億2,990万円(令和3年度当初) ■面積:171.75km2 ■概要:栃木県南部に位置し、東京圏からは北に約60km、県都宇都宮市からは南に約30kmの距離にある。豊かな自然と、数多くの歴史的・文化的資産を有し、農業・工業・商業の調和のとれたまちとして発展してきた。鉄道は、南北のJR宇都宮線と東北新幹線を軸に、東からJR水戸線、西からJR両毛線が小山駅で結節し、道路は国道4号と新4号国道、国道50号の広域幹線道路が市内を貫通しており、交通の要衝地となっている。
旧来のコミュニケーションが、業務効率化のボトルネックに
―小山市ではどのように行政のデジタル化を進めてきたのですか。
当市では事務作業の効率化を目的に、これまでRPAによる処理代行をはじめ、AIを使った議事録作成支援システムやAI-OCRによる音声および紙からのデータ化、さらには電子決裁の運用といった施策を進めてきました。これらにより業務の省力化が進むなか、昨今課題として浮上してきたのが、職員間のコミュニケーションの効率化でした。庁内業務の多くを占める連絡・報告などはこれまで電話やメールが主流であったため、簡潔な情報共有ができず、相手の拘束やレスポンスの悪さといった非効率さが目立ち、庁内全体における業務効率化のボトルネックとなってきたのです。そこで当市でも、2年ほど前からビジネスチャットの導入を検討しました。
―具体的にどういった検討を進めたのでしょう。
まずは、業務端末の多くがつながるLGWAN環境で使えるツールであることを大前提としました。そのうえで、庁外からインターネットを介してアクセスできることも条件に探したところ、該当するビジネスチャットは当時『LoGoチャット』しか見当たりませんでした。
ビジネスチャットの導入は、全庁的に業務のあり方を変えるという期待もありましたので、導入にあたっては事前に効果を確かめたうえで慎重に進めたいとの希望がありました。それに対して、『LoGoチャット』では長期の無料トライアル期間が設けられていたため、段階的に庁内への浸透を図ることができ、各部署が事前に効果を実感しながら、納得感をもって本格導入へ進めることができました。
あらためて実感した、ツール選定の重要性
―利用状況はいかがですか。
今年4月から本格導入を開始したのですが、利用者数はすでに1,000人を超え、いまやチャットツールは庁内のコミュニケーションツールのひとつとして欠かせないものとなっています。今年5月に新庁舎への移転が完了したのですが、新庁舎と旧庁舎を結ぶ連絡業務など、引っ越し作業をめぐる職員間の連携に『LoGoチャット』がとても有用でした。そのほか、土木技師や消防職員など庁外で活躍する職員も日々活用しています。チャットや写真で現場の詳細な状況をリアルタイムに報告し、庁内と迅速な情報連携を図るといった利用が進んでおり、業務が大きく効率化されていると聞いています。
―期待通り、業務のあり方は変わっているようですね。
はい。実際に現場でどのような効果が実感されているのか確認する良い機会がありました。というのは、先ごろ開発元であるトラストバンクの協力を得て、『LoGoチャット』の「効果検証」を実施したのです。それは、「コミュニケーションの変革」「業務の進め方・スピードの変革」「組織風土の変革」という3つの観点から定性的な導入効果をアンケートによって確認するというものでした。
―どんな結果が得られましたか。
コミュニケーションの変革については、多くの職員が実感をもっているようでした。おもな回答では、「リアルタイムのやりとりで情報連携できるようになった」と感じている職員は88%、「出張時、自席不在時などに連絡が取りやすくなった」は86%、「組織の風通しや職場の人間関係が良くなった」と答えた職員は63%に達しました。
正直なところ、導入前には「いくら良いツールを入れても、組織の体質が変わらなければ、浸透しないのではないか」という不安がありましたが、今回の効果検証によってその懸念は杞憂に終わりました。デジタル化が人の働き方だけでなく、組織のあり方まで変えていくのを目の当たりにし、効果を見極めたツール選定の重要性をあらためて実感しています。
長野県市町村自治振興組合・長野県箕輪町の取り組み
自治体専用ツールによる業務改革②
自治体専用チャットの共同利用が、県内全市町村のDXをけん引
長野県市町村自治振興組合 電子自治体推進部門 主事 相澤 友
箕輪町 総務課 ICT推進係 副主幹 有賀 明菜
前セクションで小山市が導入した「自治体専用ビジネスチャット」は、いま多くの自治体に導入が進んでいる。たとえば、県内自治体のシステム共同化を推進する長野県市町村自治振興組合では、県内すべての市町村との「共同利用」を進めている。共同利用を決めた背景とはどのようなもので、現場ではどういった活用がなされているのか。ここでは、振興組合のほか、共同利用先のひとつである箕輪町(長野県)の担当者に、導入効果などについて聞いた。
[箕輪町] ■人口:2万4,684人(令和3年10月1日現在) ■世帯数:9,911世帯(令和3年10月1日現在) ■予算規模:157億6,295万9,000円(令和3年度当初) ■面積:85.91km2 ■概要:昭和30年に三町村が合併して発足。南アルプスと中央アルプスに抱かれた長野県伊那谷の北部に位置する。精密機械工業を中心とした先進開発型企業の進出により、田園工業都市として発展。果樹や野菜の栽培も盛んで、日本でも珍しい赤そばの花が咲き誇る。
県内全83団体に、アカウントを発行
―ビジネスチャットの共同利用を実施した経緯を教えてください。
相澤 当組合は電子自治体の実現を目的に、長野県内の自治体におけるシステムの共同化やセキュリティクラウドの導入といったDX施策を支援しています。その過程で、77ある県内市町村の情報担当者といかに情報連携を密接かつ効率的に行うかは、これまでも課題でした。というのも、連絡先がLGWAN環境なのかインターネット環境なのかは自治体によって異なるため、連絡や資料の共有などに手間を要していた事情があったのです。自治体の業務環境によらず、一斉に情報連携を図れるツールを探していたところ、令和2年3月に『LoGoチャット』の無料トライアルを知りました。
―結果はいかがでしたか。
相澤 6ヵ月間のトライアルでは、LGWAN環境でもインターネット環境でも使えるメリットの大きさを確認できました。従来の電話やメールとは違って気軽に連絡がとれ、情報連携に伴う参加団体双方の手間が大きく減ったことが実感できたのです。当組合が推進する自治体DXにも資するツールであると判断し、本格導入を決断。県庁や広域連合も含めた83団体で連携組織「LoGochat NAGANO(通称LoGoちゃん)」を設立し、各自治体の情報担当課宛てにひとつずつアカウントを発行するかたちで今年4月から共同利用を開始しました。
年間9,200時間の、導入効果を箕輪町が算定
―共同利用によって、どういった効果を実感していますか。
有賀 『LoGoチャット』の共同利用によって、県や他市町村、振興組合との連絡はかなりスムーズになったと感じます。じつは当町でも、令和2年3月から、『LoGoチャット』のトライアルを独自に進めていた経緯がありました。当町のような規模では職員数も限られるなか、電話やメールでのやりとりが、ときに第三者を巻き込んで業務を止めてしまうなど、庁内コミュニケーションの非効率さをずっと感じていました。振興組合同様、当町でも無料トライアルで導入効果を確認し、昨年5月から約400アカウントで本格導入を開始していました。共同利用によって導入費用が抑えられたことも大きなメリットです。
―箕輪町では、具体的にどのような活用をしているのでしょう。
有賀 庁内連携のほか、保育園をはじめ庁舎外の職員との連絡にも活用されています。また、今年8月の豪雨災害では、被災現場や避難所の状況を写真やチャットでリアルタイムに確認できたことで、迅速な対応がとれました。導入後の1年間で主要な連絡手段へと置き代わってきています。
概算ではありますが、一人あたり10分以上は業務時間が削減されているとの仮定のもと、利用者230人が年240日稼働したとすると、年間9,200時間以上削減の導入効果があると算定できました。当町のような小さな自治体でも、全庁導入によって大きな導入効果が得られることを実感しています。
―今後のビジネスチャットの運用方針を聞かせてください。
相澤 今後はさらに活用の幅を広げられるように、箕輪町の豪雨対応のような活用事例を積極的に発信するなど、各自治体での全庁的な運用を後押ししていきたいですね。それにより、県内市町村が足並みを揃えてDX推進を図るうえでの情報プラットフォームとして活用していければと考えています。
香川県高松市の取り組み
自治体専用ツールによる業務改革③
使える「Web申請サービス」は、職員の意識改革を促すDXの切り札
高松市
総務局 参事 兼 総務局デジタル推進部 部長 小澤 孝洋
総務局 デジタル推進部 情報マネジメント課 課長補佐 六車 明人
ここまでに見てきたビジネスチャットのほかに、いま行政のデジタル化を推進する原動力として注目されているのが、住民との結節点となる申請手続きやアンケート業務の電子化だ。この電子申請をめぐっては現在、多くのシステムが存在するなか、高松市(香川県)では事前に導入効果を見極めたうえで、「自治体専用Web申請サービス」を導入したという。導入の経緯や導入後の効果について、同市担当者に話を聞いた。
[高松市] ■人口:42万4,530人(令和3年10月1日現在) ■世帯数:20万1,232世帯(令和3年10月1日現在) ■予算規模:3,023億6,198万6,000円(令和3年度当初) ■面積:375.54km2 ■概要:多島美を誇る波静かな瀬戸内海に面し、海に開かれた都市。これまで人々の暮らしや経済・文化などさまざまな面において、瀬戸内海との深いかかわりの中で、県都として発展を続けてきた。気候は、年間を通して寒暖の差が小さく、降水量の少ないのが特色。平成11年4月、中核市に移行している。
広く汎用的に利用できる、電子申請システムが必要
―高松市が電子申請の導入に着手した経緯を教えてください。
小澤 当市では2年前、業務改革の一環として職員の残業時間や業務負担について調査しました。そこで改善を要する業務として、議事録作成とアンケート集計の2つが浮上しました。前者は音声を文字化するAIシステムを導入するといった対策を試みたのですが、後者は試行錯誤が続いていました。住民をはじめ庁外とのやりとりにはインターネットを利用するのが便利ですが、情報セキュリティ面の不安があり、既存のWebフォームは導入できませんでした。
六車 一方で、専用システムを新たに開発するのは費用負担が重く、利用範囲は限定されてしまいます。システムの乱立やガラパゴス化を避け、広く庁内で利用できる汎用システムを探していた時に、『LoGoフォーム』を知り、魅力を感じました。
―どこに魅力を感じたのですか。
六車 まずはLGWAN-ASPサービスである点です。業務端末の多くをLGWAN環境に置く当市では、LGWAN環境にいながらインターネット側と安全に情報連携ができることが、システム選定の大前提でした。また、現場で職員が使いこなせそうな操作性も魅力でした。
小澤 当市はすでに、マイナポータルと連携した「ぴったりサービス」と、香川県が主導する公共施設予約サービス「かがわ電子自治体システム」を運用しています。ここに導入する新たなシステムは、これらを補完し、広く汎用的に利用されることを想定していたため、職員が簡単に使いこなせることは特に重要でした。『LoGoフォーム』には無料トライアル期間が設けられていたので、そこを事前に見極めることができたのはありがたかったですね。トライアルを経て、今年4月に正式導入しました。
フォームの自作経験が、業務改革への意識を高めた
―導入後は、どのような場面で活用されているのでしょう。
小澤 すでに140~150フォームが運用されており、たとえば情報マネジメント課では、これまで外部の事業者に委託していた「情報セキュリティ研修」を『LoGoフォーム』で内製化し、実地研修からオンライン研修へ切り替えています。その結果、従来は予算の制約から管理職100人程度としていた対象者を、委託費用無しで全庁約4,000人に広げることができました。端末の環境によらずどこからでも受講できたのも好評でした。あわせて実施したアンケートを参考に、今後の研修には職員の意見も反映し、さらに研修効果を高めることができそうです。
六車 そのほか、スポーツ振興課では、中学校体育施設の利用登録申請に『LoGoフォーム』を活用しています。ここでは原則オンライン化を試行した結果、申請1件あたり窓口対応で11分、後処理に8分の計19分の業務時間が削減されたとの試算が出ています。1年で約150件を処理すると仮定すれば、年間約45時間に相当します。受付は24時間対応できるので、住民の利便性も向上しているはずです。
―これらの結果をどのように分析していますか。
小澤 個々の業務改善効果は大きいのですが、それ以上に大きな意義は、各現場でフォームを自作する経験を通じて職員が業務改革への意識を高めていることだと考えています。単に与えられたシステムで前例踏襲の業務をこなすのではなく、必要なら自ら業務フローや仕事の進め方を見直していく。そのきっかけになっていることが、『LoGoフォーム』のもっとも大きな導入効果と言えそうです。
兵庫県三田市の取り組み
自治体専用ツールによる業務改革④
業務改革への新たな発想を引き出す「Web申請フォーム」の真価
三田市
経営管理部 行政管理室 ICT推進課スマートシティ推進係 係長 深草 博之
経営管理部 行政管理室 ICT推進課スマートシティ推進係 主任 岩崎 謙二
行政のデジタル化を推進するうえで、重要なカギとなる申請手続きの電子化。前セクションの高松市同様、現場の職員が使いこなせるかというポイントを重視してシステム選定を進め、「自治体専用Web申請サービス」の導入を決めたのが三田市(兵庫県)だ。ここでは、システム選定のポイントや導入効果などについて、同市担当者に話を聞いた。
[三田市] ■人口:10万9,781人(令和3年9月末現在) ■世帯数:4万6,872世帯(令和3年9月末現在) ■予算規模:819億4,471万5,000円(令和3年度当初) ■面積:210.32km2 ■概要:兵庫県の南東部に位置し、神戸市の市街地より六甲山系を越えて北へ約25km、大阪市より北西へ約35kmの圏域にある。昭和31年に藍村と本庄村が合併して相野町が成立。次いで、三田町、三輪町、広野村、小野村、高平村が合併して三田町が成立した。さらに、昭和32年に三田町が相野町を編入したのち、昭和33年7月に市制を施行し、現在に至っている。
現場が使いこなせなければ、庁内の電子化など進まない
―三田市が申請手続きの電子化を進めた経緯を教えてください。
岩崎 当市では、一部の施設予約や図書館資料の予約を除き、電子申請の導入が遅れていました。そこで、全庁的な電子申請の導入を目指し、令和2年度に電子申請システムの情報収集を開始しました。その際、我々がもっとも重視したのが、システム操作が容易であることでした。現場の職員が簡単にシステムを使いこなせないようでは、電子申請の全庁的な導入など進められないと考えていたからです。
深草 さらに当市では、「本人認証」や「料金決済」が求められる手続きも、将来的に電子化することを考えていました。そこで、こうした機能拡張にも対応できることも条件にシステムを検討するなかで、『LoGoフォーム』を知り、昨年6月から無償トライアルを開始しました。
―トライアルでは、どのようなことが確認できましたか。
深草 誰でも簡単に操作できることが確認でき、導入目的に合致したシステムであることがわかりました。操作に慣れると、わずか15分ほどでフォームを作成することができました。また、インターネット環境からだけでなくLGWAN環境からもアクセスできるので、住民向けにも庁内向けにも活用できる利便性も確認できました。
岩崎 6ヵ月の長期にわたってトライアルができましたので、我々ICT推進課だけではなく、秘書広報課をはじめ導入に積極的な部署にも参加してもらえました。最終的には60ほどの部署で、代表的な申請フォームの試作を行うことができました。その結果、『LoGoフォーム』の利便性が確認できたため、今年1月からの本格導入を決めました。
業務改善につながる、職員の発想が生まれている
―本格導入後は、どのような場面で活用されていますか。
岩崎 まず、もっとも導入に積極的だった秘書広報課では、従来紙やメールで行っていた広報誌の広報モニターアンケートに『LoGoフォーム』を活用しています。これにより広報モニターが従来の紙やメールよりも簡単に回答を送信できるため、利便性が高いようです。また、項目数を増やすことができたため、より広報モニターの意見を聞くことができるようになりました。担当職員は従来の郵送・回収作業が不要となるうえ、回答の集計・分析も簡単にできるため、負担が大きく減っています。
深草 そのほか、道路河川課では市が管理する道路の異状・破損を住民が通報する仕組みに、また公園みどり課では公園の遊具や設備の異状・破損を通報する仕組みに『LoGoフォーム』を活用しています。ここでは、写真添付機能や、GPSを使った位置情報送信機能のおかげで、通報を受けた職員が正確に情報を把握でき、迅速に対応できるようになっています。
―多くの部署で活用されているようですね。
深草 ええ。現場の職員からも活用のアイデアをもらっています。たとえば、秘書広報課からはフォームの背景色を市のイメージカラーにあわせてカスタマイズする提案があり、初期設定を調整しました。これは、市のHPからリンク先に飛んだ際、イメージカラーによる一体感で、安心して使ってもらえるようにしたいという想いから工夫しました。こうした住民サービス向上を意識した業務改善につながる新たな発想が生まれてくるのも、現場でツールが広く使いこなされている証だと考えています。使いやすいツールがDX推進の大きな力になることを実感しています。
支援企業の視点
自治体専用ツールによる業務改革⑤
【チャット】 庁内でのDX促進の要諦は、効果を見極めたツール選定
株式会社トラストバンク
取締役兼パブリテック事業部長 木澤 真澄
ここまで見てきたように、自治体専用ツールである『LoGoチャット』と『LoGoフォーム』は、多くの自治体で業務のデジタル化を後押ししている。この両ツールを開発・提供しているのがトラストバンクである。同社で両事業を統括している木澤氏に、普及が進むこの2つのツールの導入効果について、詳しく聞いた
10自治体での「検証」で、定性効果も調査
―『LoGoチャット』は多くの自治体で導入が進んでいるようですね。
リリースから2年半で、導入実績は720以上、全国の自治体のじつに4割以上が導入している計算になります。LGWAN環境からもインターネット環境からも利用できる機能面の利便性にくわえ、導入前に効果を実感できる無料トライアルの機会が評価されているのだと思います。
『LoGoチャット』のように行政のデジタル化を推進するツールには、広く現場に浸透しなければ導入効果が限定的に終わる場合も少なくありません。また昨今の財政事情の厳しさもあり、導入効果の高さを事前に見極めることはますます重要になります。そこで当社では、導入支援の一環として無料トライアルの募集にくわえ、独自の「効果検証」も行っています。
―それはどのような内容ですか。
『LoGoチャット』に関しては、定量的な導入効果は過去に『自治体通信』でも紹介したとおり、一人あたり年間約100時間程度の業務時間短縮効果があることがわかっています。一方で、こうした数値化可能な定量効果以外に、導入自治体からは定性効果の大きさも報告されています。そこで当社では、全国10自治体からの計3,316回答をもとに、「コミュニケーションの変革」「業務の進め方・スピードの変革」「組織風土の変革」の3つの観点における定性効果を調べました。その結果、『LoGoチャット』の活用が、情報共有と意思決定の迅速化や、多様な働き方を実現し、組織の風通しを良くしている実態が明らかになりました(上図参照)。当社では、こうした結果を積極的に訴求していきながら、コミュニケーションの効率化を図りたい自治体を支援していきたいと考えています。
【フォーム】 行政手続きのデジタル化は、現場からのボトムアップで促進を
どの課でも現場で、オンライン化に取り組める
―『LoGoフォーム』の普及も進んでいるようですね。
はい。導入実績は270自治体を超えています。『LoGoチャット』同様、LGWAN環境からもインターネット環境からもアクセスできる特徴があり、各種申請やアンケートなど幅広い用途に活用されています。行政手続きのデジタル化が重要な課題となる自治体においては、職員が簡単にフォームをつくれる『LoGoフォーム』は、現場からのボトムアップで庁内のデジタル化を促進するツールとして高く評価されています。当社ではこうした導入効果を定量的に示すため、このほど『LoGoフォーム』でも「効果検証」を行いました。
―それはどのような検証ですか。
『LoGoフォーム』による手続きのデジタル化に取り組んでいる複数の自治体を対象に、導入による効果を試算しました。そのうち、川口市(埼玉県)では「感染防止対策協力金申請書兼請求書の手続き」を対象とし、『LoGoフォーム』による導入効果を定量化しました。同市では、同業務の迅速な実施にあたり、システム構築の予算や期日もなかったため、すぐに活用でき、操作がしやすい『LoGoフォーム』を導入した経緯があります。この事例では、1,000件以上の手続きの68%がオンライン化された結果、従来の郵送や窓口での受付に比べ、業務負担が大幅に軽減されました。1件あたりの運営時間が100分から30分に削減されるなど、業務時間は全体で1,105時間もの削減効果が確認され、企画から実施までの期間も従来に比べ16日間も短縮されています(上図参照)。そのほか、フォームの工夫によって不備や誤字は20%削減されたなど、庁内の大きな業務改善効果を生んでいます。
―この結果から、どのようなことが言えますか。
今回の結果は1つの手続きに関するものですが、『LoGoフォーム』であればどの課でも現場で申請のオンライン化に取り組めるので、庁内全体で同様の効果を生み出せる可能性があることを示しています。当社ではこうした効果を広く情報提供しながら、着実に効果のあるデジタル化ツールを自治体のみなさんに提案していきます。
木澤 真澄 (きざわ ますみ) プロフィール
昭和53年、大阪府生まれ。大阪大学を卒業後、平成15年、IBMビジネスコンサルティングサービス株式会社(現:日本アイ・ビー・エム株式会社)に入社。システム開発や業務改革プロジェクトに従事した後、株式会社チェンジに入社。海外事業、自治体向け事業開発担当を経て、株式会社トラストバンクに出向。平成30年12月より現職。
株式会社トラストバンク