―総合事業を前にした枚方市の準備状況を教えてください。
稲葉 介護関連の職能団体と意見交換を重ね、地域の実情に合った事業案を策定してきました。今後、この案への意見をうかがいながら、秋に向けて事業内容を確立していきます。国が総合事業のなかで求めている「サービス」「介護予防」「地域づくり」の三事業を一体として動かすことが理念です。
―事業案の特徴を具体的に教えてください。
稲葉 今回の事業案では、要支援の状態像を2つのタイプに分けて事業を組み立てました。疾患の進行に応じて心身機能が低下する「進行性疾患」と、不活発な生活により心身機能が低下した「廃用症候群」です。前者は理学療法士、作業療法士といった専門職によって、機能低下を遅らせる。後者は専門職によるリハビリで機能回復を図りながら、徐々に地域による支援に移行し、社会参加に導く独自の仕組みを設計しています。
中原 さらに介護予防の一環として、10分程度の「ひらかた元気くらわんか体操」を考案しました。これを地域に普及させ、地域一体で要支援・要介護者の方も含めた社会参加をうながすねらいです。
―現在の課題はなんでしょう。
稲葉 総合事業における事務作業量の増大です。枚方市には65歳以上の高齢者が約11万人います。介護保険制度ではすでに確立された請求・支払業務などが、市の事業となることで、自治体・サービス事業者ともに従来の手法では行うことが難しい部分があるとの問題意識をもっています。
医療・介護事業者との連携は「福祉のまち」枚方の財産
―枚方市では来年度から総合事業に関して介護事業者や地域包括支援センターなどをITで結ぶWebシステムの導入を決めました。
稲葉 はい。業務の効率化を通じた住民サービスの向上がねらいです。枚方市には13ヵ所の地域包括支援センターがあり、その先のケアプラン委託先となる居宅介護支援事業所やサービス事業所がおよそ400ヵ所も存在します。この三者間では毎月、サービス提供票や給付管理票などの膨大なやり取りが発生していますが、従来はすべて人が帳票をもって行き来していました。ここにWebシステムを導入することで、業務が大幅に効率化されると期待しています。
中原 総合事業では多くの事業者の新規参入が見込まれています。そうしたなか、市がWebシステムを導入し、請求業務などを担うインフラを整備することで、事業者が各自でシステムを整備する負担を減らすこともできます。
―今後どのように総合事業を展開していきますか。
中原 システム上に各地域の生活支援情報を掲載し、利用者が検索できる機能も盛り込みます。利用者が生活の充実を図るうえでもWebシステムを活用していきます。
稲葉 かつて枚方市は「福祉のまち」として知られ、いまも多くの医療機関、介護サービス事業者が市や地域との協力体制をつくっています。これは行政としては貴重な財産です。Webシステムを使ってこの財産を活用し、今後も住民サービスを向上させていきます。