課ごとではなく全庁をあげた、横断的な取り組み
―精華町における「健康増進」の取り組みを教えてください。
岩前:平成25年から「せいか365(さんろくご)」プロジェクトと銘打って、健康づくり運動に取り組んでいます。本町に限らず、全国の自治体が医療費や介護給付費の上昇に悩んでいます。そうした課題を解決するための取り組みです。
―プロジェクトを進めるにあたって、なにから始めたのでしょう。
森田:庁内の各部長を集め、副町長をトップとした推進本部を設置。以前なら健康分野は健康推進課、介護予防分野は福祉課と課ごとに取り組んでいたのを、より効率的に進めるため、全庁をあげて横断的に取り組むのが狙いです。
また、行政主体ではなく、企画段階から住民に参画してもらい、「住民が主体的に動くための環境づくりを行政がお手伝いする」というスタイルをとりました。
―具体的な取り組みを教えてください。
岩前:一例としてあげられるのがシニア層の活用。65歳以上を対象に、健康づくりの啓発や活動をするための養成講座を実施。修了者は「すてき65メイト」として、町内の各集会所などで体操の実践などを行ってもらっています。
また、食の啓発も行っており、町内にある京都府立大学で開発された「けいはん菜」を用いて、障がい者就労支援の喫茶店に調理を依頼。同大学の講師に野菜摂取の重要性をレクチャーされながらランチを食べる「ランチ講習会」を定期開催したり、広報誌でもレシピを公開しています。
さらに、京都大学などと連携した、住民参加の実証実験を展開し、「健康増進」のための基礎データをとっています。
森田:町職員も、健康づくりを実践しています。たとえば月に一度、業務開始前に職員が庁内のホールに集まって精華町独自の「いちご体操」をしたり、職員自ら設定したウォーキングコースをゴミ拾いしながら歩いたりしています。やはり職員が実践しないと、住民に対して説得力がありませんからね。
岩前:こうした一連の取り組みの特徴は、既存の事業を活用しているため、新たな事業予算はいっさい組んでいないということです。
さまざまなツールをつなぐ、地域システムとして期待
―新たな取り組みとして「健康ポイント制度」の導入を予定しているそうですね。
森田:ええ。本町は運動のなかでも「歩く」ことを推奨。ただ、「歩きましょう」だけでは動機づけが弱い。そこで健康ポイント制度の活用事例を調べると、行政がポイント管理する業務に追われ、続かないケースがあることが判明。そんななか、ポイント等を管理できるというシステムを知ったんです。
岩前:具体的にはポイント付与やデータ管理など、個々に付与したカードを端末で読み取るだけで完了するシステムです。事務的な煩雑さはなく、データを管理することで将来的には情報分析して事業に活かすことも可能ということで注目したのです。
さらにシステムを開発している民間企業から提案を受け、町内のウォーキングコースをまとめた『オリジナルまっぷる』を作成。町内外に向けて、精華町が「健康増進」に取り組んでいるPRにつながるほか、住民の「健康意識」に対する参加意欲の増進にもつながっています。
―今後におけるシステムの活用方針を教えてください。
岩前:そのシステムには発券機能があるので、地元の商店などで使えるポイント引換券を発行し、健康ポイントを地域活性に使おうと検討中。ゆくゆくは、町独自で開発した歩数計アプリと連携して、イベント参加ポイントとウォーキングポイントをあわせて、地元に還元できるシステムを構築していきたいと考えています。
現在はイベントを含め、「健康増進」にかんするさまざまなツールを企画・実施している段階。このシステムはその各ツールをつなげる地域システムになることを期待しています。