―「ご当地Wi-Fi」を導入したねらいはなんですか。
観光振興、とくにインバウンドの推進です。外国人観光客からはWi-Fiが使えないことへの不満がありましたが、大都市圏とは違い、地方では民間主導でWi-Fi網が広がる状況になく、県がトップダウンで整備を促進する必要がありました。
どのような整備の促進手法があるかを検討していた際、地域色を前面に打ち出した「ご当地Wi-Fi」の提案を大手通信会社グループからいただき、平成26年度から事業化。整備促進にあたり、香川の特徴を出そうというねらいで、名称を「かがわWi-Fi」としただけでなく、うどんから電波が出ているロゴデザインを考案。また、同じ通信会社グループからは、ご当地アイドルを起用したテレビCMや大規模な広告戦略など、行政ができない広報展開に大きな支援をもらいました。
―活用状況を教えてください。
県内での「かがわWi-Fi」の設置が広がるにつれ、利用件数は順調に伸びており、いまや「かがわWi-Fi」は県民にも広く知られる存在になっています。また、Wi-Fiを活用した特徴的なサービスとして、「多言語コールセンター」があります。県内の事業者向けに、9ヵ国語の翻訳・通訳サービスを提供し、外国人観光客への接客や応対を手助けするサービスです。定額の登録料で何度でも利用でき、Wi-Fi環境下で利用すれば、通信費の負担もないことから宿泊施設や飲食店などからのニーズが高いです。今後は、観光以外に防災用途などにも活用できる県民生活に欠かせないツールと位置づけ、「かがわWi-Fi」の設置拡大に引き続き力を入れていきます。
―高松市がWi-Fi整備に乗り出した経緯を教えてください。
高松市でも近年、外国人観光客が急増しており、その対応として平成27年度に「かがわWi-Fi高松」を整備しました。コンセプトは「面的整備」によってストレスフリーの通信環境をつくること。2.7㎞と日本一の長さといわれる中央商店街のアーケード街をはじめ、市内中心部で切れ目なくWi-Fi網を整備しました。
整備のねらいは3点ありました。1点目は、観光客の利便性向上。「使えて便利だった」と感じてもらうことが誘致につながると考えました。2点目は、市内中心部への誘導。3点目が滞在時間を延ばす。それらの結果、消費を喚起するねらいです。
―導入効果はいかがですか。
アクセス数は導入直後から増え続け、当初の約5倍、月間10万件にまで達しており、利便性を感じてもらっていると認識しています。また、外国人宿泊者数と外国語言語でのWi-Fi利用状況を照合すると、宿泊者が市内中心部で利用している実態が浮き彫りに。さらに、Wi-Fi設備とともに導入した動線分析システムによると、市内各所を回遊、滞在していることも明らかになりました。いずれのねらいについても、一定の成果を確認できています。
―成功の要因はなんでしょう。
課題を整理し、目的とビジョンを明確にして取り組んだこと。もうひとつは、整備事業の受託者である大手通信会社から多くの協力を得られたことです。面的整備の方針や設置場所の選定、各種プロモーションによる認知度向上などの課題解決にあたり、多くの有益な提案をもらえました。今後も、Wi-Fiを活用して、高松ならではのホスピタリティを提供していくうえで、支援を期待しています。