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先進事例2020.02.06

放送波の新たな活用で災害時の混乱を平穏に導く【自治体(加古川市)の取組事例】

放送波の新たな活用で災害時の混乱を平穏に導く【自治体(加古川市)の取組事例】

兵庫県加古川市 の取り組み

放送波の新たな活用で災害時の混乱を平穏に導く【自治体(加古川市)の取組事例】

神戸市外国語大学 教授 芝 勝徳

災害発生時における情報伝達手段の多様化と多重化は、自治体の喫緊の課題だ。そんななか、加古川市(兵庫県)は、新たな情報伝達の手段として『V-Lowマルチメディア放送(※)』を活用した情報伝達ソリューションを平成29年度の総務省・消防庁「災害情報伝達手段等の高度化事業」で実施した。事業でえた効果と今後の展望などを、実証事業の提案者のひとりである芝氏に聞いた。

※V-Lowマルチメディア放送:地上アナログテレビ放送の終了で空いた周波数帯を利用して創設された、第3の放送サービス

※下記は自治体通信 Vol.15(2018年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

兵庫県加古川市データ

人口: 26万3,888人(平成30年8月1日現在) 世帯数: 10万5,540世帯(平成30年8月1日現在) 予算規模: 1,567億1,938万1,000円(平成30年度当初) 面積: 138.48km² 概要: 兵庫県南部の播磨灘に面し、播磨平野を貫流する加古川河口に広がる豊かな自然に囲まれたエリア。日本有数の海岸線には鉄鋼工場が並び、播磨臨海工業地帯の一翼を担う。その一方で、内陸部では靴下、建具など特色のある地場産業が盛ん。

―防災にかんして、加古川市が抱えていた課題はなんですか。

防災行政無線の未整備地域だったことが、いちばんの課題でした。

加古川市は、変化に富む地形特性から地震、津波、台風、豪雨による内水氾濫、外水氾濫、土砂災害などが想定される地域。なかでも津波や土砂災害は、被害想定区域が限定されるため、「特定エリアの住民に対して、必要な情報伝達がしっかりとなされているのか」といった懸念がありました。

そこで、総務省・消防庁が公募を行った「災害情報伝達手段等の高度化事業」に応募し、情報伝達の見直しを図ったのです。

―どのような内容を提案したのでしょう。

『V-Lowマルチメディア放送』を活用したIoTソリューションを提案しました。これは、マルチメディア放送局が発信する放送波を利用して、特定エリアやグループ、デバイスなど配信先を指定し、適切な情報伝達を可能にしたものです。文字、画像、音声などさまざまな形式で情報を送ることができるうえに、作動指示を送信でき、放送波によってモノを動かすこともできます。情報伝達の多様化と多重化を実現させた、ソリューションだといえます。

―具体的に教えてください。

実証事業では、音声データを「屋外拡声器」に、文字データは「サイネージ」に、そしてモノを作動させる対象に「鍵ボックス」「誘導灯」を使用。これらのデバイスには民間企業の受信装置が取りつけられ、放送波に乗せられた自治体のコマンドを的確に表示・作動させることができました。なかでも画期的だったのが、避難所に設置された「鍵ボックス」の解錠システム。従来、避難所に入るためには、鍵管理者の到着を待つ必要がありましたが、避難所開設指示の放送を受信した「鍵ボックス」は自動で解錠され、いちばん最初に来た人が鍵を取り出して、避難することができるのです。

―今後、このシステムをどのように活用していきたいですか。

デバイスの種類を増やしていきたいです。ただ、自治体だけで数を揃えるには限界があるので、地域事業者の協力をえることが必要。たとえば、店頭の電子看板や街頭モニターなどをデバイスとして活用し、エリアごとの情報伝達環境を整えていきたいですね。

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