―防災にかんして、加古川市が抱えていた課題はなんですか。
防災行政無線の未整備地域だったことが、いちばんの課題でした。
加古川市は、変化に富む地形特性から地震、津波、台風、豪雨による内水氾濫、外水氾濫、土砂災害などが想定される地域。なかでも津波や土砂災害は、被害想定区域が限定されるため、「特定エリアの住民に対して、必要な情報伝達がしっかりとなされているのか」といった懸念がありました。
そこで、総務省・消防庁が公募を行った「災害情報伝達手段等の高度化事業」に応募し、情報伝達の見直しを図ったのです。
―どのような内容を提案したのでしょう。
『V-Lowマルチメディア放送』を活用したIoTソリューションを提案しました。これは、マルチメディア放送局が発信する放送波を利用して、特定エリアやグループ、デバイスなど配信先を指定し、適切な情報伝達を可能にしたものです。文字、画像、音声などさまざまな形式で情報を送ることができるうえに、作動指示を送信でき、放送波によってモノを動かすこともできます。情報伝達の多様化と多重化を実現させた、ソリューションだといえます。
―具体的に教えてください。
実証事業では、音声データを「屋外拡声器」に、文字データは「サイネージ」に、そしてモノを作動させる対象に「鍵ボックス」「誘導灯」を使用。これらのデバイスには民間企業の受信装置が取りつけられ、放送波に乗せられた自治体のコマンドを的確に表示・作動させることができました。なかでも画期的だったのが、避難所に設置された「鍵ボックス」の解錠システム。従来、避難所に入るためには、鍵管理者の到着を待つ必要がありましたが、避難所開設指示の放送を受信した「鍵ボックス」は自動で解錠され、いちばん最初に来た人が鍵を取り出して、避難することができるのです。
―今後、このシステムをどのように活用していきたいですか。
デバイスの種類を増やしていきたいです。ただ、自治体だけで数を揃えるには限界があるので、地域事業者の協力をえることが必要。たとえば、店頭の電子看板や街頭モニターなどをデバイスとして活用し、エリアごとの情報伝達環境を整えていきたいですね。