地方創生の時代に問われる政策立案力
―松江市は中核市として昨今、政策立案をはじめとする行政機能の強化に努めてきたそうですね。
はい。当市は特例市、さらには中核市として指定を受けてきた過程で、それに相応しい行政機能を備えようと努めてきました。特に重視してきたのが、外部からの行政情報の収集です。折しも地方創生のかけ声のもと、地方の権限が大きくなる中、自治体には多様で複雑化する課題を解決するための政策立案力を養う自助努力が求められています。これを強化するためには、広く外部に参考情報を求めることが必要と判断したのです。ただし当市の場合、近隣に同規模の自治体が少ない。そのため、より広範な行政情報、先進事例の収集に力を入れてきました。
―具体的にどのように情報収集を進めていたのでしょう。
当初は、市内で購読できるすべての新聞を購読し、当市に関連がありそうな記事があれば、庁内で情報共有していました。しかし、作業が煩雑かつ膨大なうえ、情報選定の基準は担当者の判断に委ねられる部分が多く、情報収集の精度改善は課題でした。しかも取得できる情報に地域的な偏りがあり、全国の情報を収集することはできていませんでした。
そこで当市では平成19年度から、民間企業が運営する行財政専門情報サービスの購読を始めました。
職員の姿勢にも変化が
―購読を始めた理由を教えてください。
まずは、広く全国各地の行政情報を網羅する豊富な情報量です。それらの情報は自治体規模別やテーマ別など各自が自由にスクリーニングし、効率的に閲覧することができます。当市職員の場合は、「中核市」や「県庁所在地」といった枠組みで見出しを表示するだけで、課題にヒットする情報が見つかるケースも多いですね。
また、それぞれの情報は各地の地方新聞社が配信しているため、地域の事情を熟知した記者が地元目線で掘り下げた内容となっていることも大きな特徴です。
さらに、事前登録の必要がなく、気軽に利用できることも大きいですね。ライセンス形態は「同時アクセス上限型」が選べるため、すべての職員が利用できます。人事異動で部署や使用するパソコンが変わっても利用方法は変わらないので使い勝手がよいですね。
―購読開始後、どのような効果を実感していますか。
業務に臨む職員の姿勢に変化がみられています。それまでは受け身の姿勢で情報を待っていた職員が、購読を機にみずから情報を取得し、他自治体の先進事例を参考に業務改善や新たな企画立案につなげている姿がみられます。
また、業務効率化への効果も大きいですね。昨今の厳しい財政事情から、視察を目的とした出張は削減されています。そうした中でも、このサービスで有益な情報を取得できるため、情報収集を効果的に補完できています。
サービス提供企業からは定期的に「活用ガイド」が配信され、職員の利用を喚起するための支援も得られます。その効果もあり、庁内の閲覧数は順調に伸びています。今後も各部署での利用を促進し、課題解決の糸口にしてもらいたいです。