健康づくりの場や防災拠点として、公共スポーツ施設が担う役割は大きい。しかし、老朽化が進んでも財源不足で施設の新設を断念する自治体は多い。こうしたなか、北中城村(沖縄県)では、起債を行うことなく体育館の新設を迅速に実現した。整備の背景や事業スキームの詳細などについて、村長の新垣氏に聞いた。
北中城村データ
人口:1万7,446人(令和元年9月末現在)世帯数:世帯数:7,207世帯(令和元年9月末現在)予算規模:115億6,115万円(令和元年度当初)面積:11.54km²概要:沖縄本島中部の東海岸に位置し、中城湾に面している。昭和21年に中城村北部の行政区が分離して誕生した村で、村としては日本でもっとも人口密度が高い。国指定重要文化財に指定され、戦前の上層農家の生活を伝える伝統的な「中村家住宅」や、世界遺産(琉球王国のグスクおよび関連遺産群)に指定された中城(なかぐすく)などの名所・旧跡を擁する。
大型施設整備の財源確保には、数年の時間を要する
―新たに体育館を建設することになった経緯を教えてください。
従来の村立体育館が老朽化で平成23年に解体されたことで、村には公共スポーツ施設がない状態が続いていました。当村は、女性の平均寿命が日本一を誇る健康長寿の村ですが、生活習慣の変化で若年層の健康は決してかんばしくないのが現状。住民の健康づくりを促進する場として、新しいスポーツ施設の整備が急務でした。また同時に、災害時の避難所を確保する観点からも、施設整備の必要性を感じていました。そこで当村は、米軍のゴルフ場跡地に新しい体育館を整備することを決定。体育館整備に関する提案事業者を募り、民間企業3社からなる企業共同体に事業を委託しました。
―提案に対してどのような点を評価したのでしょう。
迅速な体育館の整備を実現できる事業スキームを評価しました。具体的には、民間企業が建設・所有する体育館を、村が借り受けて運営するというもの。村が自前で施設を建設しようとすると、資金を蓄えるのに数年はかかってしまいます。しかし提案されたスキームはリース方式のため、初期費用をかけることなく迅速に事業化を実現できるのです。20年間のリース契約満了後、体育館は村に無償で譲渡されるので、将来は村所有の施設として継続使用できます。
このほか、体育館を建設するだけでなく、その隣にスポーツクラブを併設する点も提案の特徴です。
村独自の事業化とくらべ、1.5億円の負担を軽減
―スポーツクラブを併設するメリットを教えてください。
体育館と一体で健康づくりの場を提供することで、住民サービス向上につなげられるだけでなく、事業全体にかかる費用を軽減できることです。スポーツクラブは、村が土地を貸し出し、民間企業に運営してもらう。これにより、村は借地料や建物にかかる固定資産税などの収入を得られます。そして20年間事業を続けた場合の財政負担は、村単独で事業を行うより、約1.5億円軽減できるのです。
―村民からの評判はどうですか。
フィットネスジムやスタジオ、プールなど施設が充実した24時間営業のスポーツクラブは非常に評判が良く、村の内外問わず多くの方に利用されています。今回新たに整備した体育館とスポーツクラブを、健康づくりの拠点とすることで、住民の健康意識を高めていきたいと考えています。