徹底した労務管理で職員の意識を変えれば、時間外勤務は大幅に抑制できる

滋賀県大津市の取り組み
働き方改革の推進
徹底した労務管理で職員の意識を変えれば、時間外勤務は大幅に抑制できる
総務部 人事課 課長補佐 高橋 宏司
総務部 人事課 育成グループ グループリーダー 鹿島 良平
※下記は自治体通信 Vol.22(2020年2月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
いまや官民問わず、広く推進されている「働き方改革」をめぐっては、施策の実効性が上がらず苦慮する自治体が多い。そんななか、時間外労働の削減をはじめとする成果を上げて注目を集めているのが、大津市(滋賀県)だ。いかにして、それらは成し遂げられたのか。同市で働き方改革の推進を担う総務部人事課の担当者に話を聞いた。


時間外勤務抑制のため、パソコンを強制シャットダウン
―大津市が働き方改革を推進してきた経緯を教えてください。
高橋 平成22年から、行政改革の一環として時間外勤務の削減に取り組んできました。当時は、ふくらむ時間外勤務手当を削減し、住民サービスに充てることが主眼でした。当初はなかなか成果を上げられませんでしたが、その後、民間企業での過労死事故を受け、施策の主眼は職員の健康管理に移り、平成29年からは上限時間を設けるなど本腰で対策にあたりました。
鹿島 市では組合所属の職員や若手職員でワーキングチームを組織し、働き方改革の「アクションプラン」を策定。そこでもっとも議論が深まったテーマも「時間外勤務のない職場」であり、その実現に向けては、業務の実態把握や適正管理のための新たな仕組みが必要との結論に至りました。
―そうした議論を受け、どのような対策を行ったのでしょう。
鹿島 時間外勤務を抑止する機能のほか、パソコンのログ収集機能や時間外労働の申請・承認機能を備えていることを要件にツールを選定したうえで、民間企業のシステムを導入しました。このシステムには、事前申請がない場合、設定時間を過ぎるとパソコンを強制的にシャットダウンする機能があるため、時間外勤務の管理・削減に効果を期待したのです。
高橋 消防署などに勤務する一部の職員を除く全職員にIDを付与し、計2,769台のパソコンに一斉導入し、平成30年10月から本格運用しています。
予想された現場の抵抗は、ほとんどなかった
―導入効果はいかがですか。
鹿島 インパクトのある警告画面によって事前申請の必要性を強く訴えることができ、職員の労働時間に対する意識は変わったと感じます。また、管理職はパソコンの稼働時間や勤務実態を正確に把握することで、勤務時間の適正管理ができるようになりました。その結果、導入前後の各1年間を比較すると、時間外勤務は11.2%、月45時間を超える長時間勤務の実施者は34.3%も減りました。これに伴い、時間外勤務手当も5年前に比べ年間3.5億円削減されており、その財源は新たな住民サービスに充てられています。
高橋 導入にあたっては、事前の告知を徹底し、警告画面の表示や強制シャットダウンを段階的に実施していったこともあり、予想された現場の抵抗はほとんどありませんでした。そればかりか、住民からも市の施策に理解を示す声を多くいただいています。また、職場環境の改善に一定の効果を上げたことで、特に実感するのは採用説明会での学生の反応の良さです。どの自治体も応募者減少に悩むなか、当市が横ばいを維持できているのも、得られた効果といえますね。
