※下記は自治体通信 Vol.23(2020年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
近年の猛暑を受け、児童・生徒の快適な学習環境を確保すべく、各自治体にとって喫緊の課題となっている「学校空調の整備」。ここ数年で対策は大きく進み、いまや整備の対象は教室から体育館へと移ってきた。そうしたなか、いち早く整備に着手したのが文京区(東京都)である。整備の背景やその手法などについて、同区担当者に話を聞いた。
文京区データ
人口:22万6,231人(令和2年2月1日現在)世帯数:12万3,862世帯(令和2年2月1日現在)予算規模:1,516億8,700万円(令和2年度当初案)面積:11.29km²概要:江戸の面影を残す史跡や文化遺産の多い、歴史的なまち。伝統ある大学や多くの学校のある文教の地として知られている。また、小石川後楽園や六義園などの庭園や比較的大きな公園が多く存在し、東京の都心に近接しながらも、落ち着いた雰囲気が魅力の緑豊かな都市環境を形成している。
防災上の観点からも、体育館での空調整備は急務
―文京区が体育館での空調整備に着手した経緯を教えてください。
文京区では近年、熱中症対策として「体育館に空調を整備してほしい」という声が現場の教員や保護者からありました。すでに普通教室および特別教室の空調整備を終えていたこともあり、区としても「体育館の冷暖房化」という問題意識をもっていました。
また、区では体育館の空調整備について、「快適な教育環境の整備」という観点にくわえ、もうひとつの観点からも必要性が議論されていました。
―それはなんでしょう。
避難所としての観点です。区内公立小中学校の体育館は災害発生時、地域の避難所として指定されています。予測困難な災害に備えるならば、体育館の冷暖房化による避難所機能の強化が必要であると考え、平成28年度から一斉に導入を進めました。
―どのように進めたのですか。
区立小中学校のうち、全館空調導入校および改築中の学校を除く、小学校17校、中学校7校が整備対象になりました。この時点ではまだ活用できる補助金がなく、区の単独予算として事業を進めなければなりませんでした。限られた予算において、短期間に一斉導入を図るにはどうすべきか検討の末、特別教室での空調整備の際に活用実績があるリース方式の導入を決めました。
―リース方式を導入した理由を詳しく教えてください。
初期費用を抑えられ、毎年の支出をリース期間内で平準化できるので、大規模な予算を確保しなくてもスピード感をもって整備を進められる点です。また、メンテナンス面においても、故障時や維持管理のコストと手間を省けるため、大きなメリットと判断しました。
台風19号の被災時に、避難所として空調を稼働
―体育館での空調整備の効果はいかがですか。
現場の教員や保護者からの評判はよいですね。また、防災対策としての効果も早速発揮しています。昨年の台風19号の被災時には、一部の体育館を避難所として運用したのですが、その際、空調を稼働させ、避難者の安心・安全につながる快適な環境を提供することができました。さらに、区では災害発生時の空調利用を考慮し、一部停電対応型機器を導入しており、今後の活用が期待されます。
教育環境整備や防災対策では、課題やニーズが次々と浮上してきます。そうした新たな時代の要請に迅速に対応していくうえで、リース方式の活用は重要な選択肢になると実感しています。