※下記は自治体通信 Vol.24(2020年6月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
業務効率化の必要性が叫ばれる自治体の住民窓口業務だが、効率化を追求するうえで障害のひとつとなっているのが、紙による各種申請・手続きの慣行だ。これに対し、宇城市(熊本県)では新たなICTツールの導入で、この問題を解消し、業務の効率化を大きく進めようとしている。同市担当者に、取り組みの詳細を聞いた。
宇城市データ
人口:5万8,641人(令和2年4月末日現在)世帯数:2万4,653世帯(令和2年4月末日現在)予算規模:553億1,540万8,000円(令和2年度当初)面積:188.6km²概要:平成17年1月15日、旧宇土郡三角町、不知火町、下益城郡松橋町、小川町、豊野町の5町が合併して誕生。九州の経済大動脈である国道3号と、西は天草、東は宮崎県への結束点という地理的状況に恵まれ、美しい田園風景と不知火海の文化に彩られた自然景観、そして都市的機能を併せ持つ。
新型コロナ対策として、導入直後から運用
―これまで窓口業務においては、どのような課題がありましたか。
中山 紙による申請や届け出が中心となっていたため、行政手続きの簡素化、効率化がなかなか進まないことに問題意識を感じてきました。それは、毎回役所に足を運ばなければならない住民の利便性向上の観点にくわえ、情報の入力や集計を行う職員側の業務負荷の観点からも課題と言えました。
田川 特に当市では、平成28年4月の熊本地震の被災以降、職員の業務負担増加がいっそう顕著になっていました。そのため、RPAといったツールの導入を積極的に進めてきましたが、情報の電子化が進んでいないことがネックとなり、導入効果は限定的でした。そうした経験から、行政手続きの電子化を促進するためのツールを探していたところ、ふるさと納税サイトを運営するトラストバンクが開発した、自治体専用Webフォーム作成ツール『LoGoフォーム』を知り、導入を決めたのです。
―どのようなツールでしょう。
中山 自治体専用サービスとして庁内のLGWAN環境で操作ができるうえ、インターネット環境からも接続できるため、作成したアンケートや申請フォームを庁内のみならず住民向けにも配信することができるものです。そのうえ、LGWAN-ASPサービスのため、複数の自治体間で作成したフォームを共有することもできます。
田川 作成に際し専門的な知識は必要なく、各課の担当者レベルで簡単に扱えるので、多くの現場で活用することができます。実際、市長政策室では導入直後から、新型コロナウイルス対策として毎朝行っている職員の「検温報告フォーム」や、テレワークの導入可能性をめぐる「庁内アンケート調査」などを作成・運用しています。
大幅なコスト削減効果も
―導入効果はいかがですか。
田川 「庁内アンケート調査」では、作成から集計までスピード感をもって実施でき、約500人の職員の集計結果が瞬時にグラフ化されて表示されました。従来は集計だけでも半日以上を要し、その報告資料も別途作成しなければならなかったことを考えると、大きく効率化が進んだと言えますね。
―今後、このツールをどのように活用していく方針ですか。
中山 今後は住民向けサービスにも活用していきます。すでに上下水道局における「水道使用開始届」のほか、健康づくり推進課では「母子健康手帳の事前予約」や「定期予防接種の予診票発行申請」など複数の用途での活用を決めています。これにより、住民の利便性は大きく向上するはずです。
田川 また、総合計画策定のための住民アンケートにも活用する予定です。数千人規模の住民を対象とするこの調査は従来、郵送で実施され、準備と集計などに膨大な手間と、1回数百万円規模の委託費を要していました。これが丸ごと削減されるわけですから、業務効率化のみならず、大幅なコスト削減効果にも期待しています。