※下記は自治体通信 Vol.27(2020年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
公営住宅を管理するにあたり、建物の老朽化と入居者の高齢化という「2つの老い」にどう対応していくかが、今後より一層問われてくる。そんななか高松市(香川県)では、「安心して住んでもらえる公営住宅」を目指し、「2つの老い」に対応した運営を行っていく体制を構築した。担当者に、これまでの管理状況と、今後の運営体制で期待する効果などを聞いた。
高松市データ
人口:42万6,118人(令和2年10月1日現在)世帯数:20万181世帯(令和2年10月1日現在)予算規模:3,036億4,666万2,000円(令和2年度当初)面積:375.63km²概要:瀬戸内海に面した香川県の県庁所在地。四国の中枢管理都市として発展するなか、特に昭和63年の瀬戸大橋開通や平成元年の新高松空港開港、平成4年の四国横断自動車道の高松市への延伸など交通インフラが整備され、平成11年4月には中核市へ移行した。四国地方では、松山市(愛媛県)に次ぎ2番目の人口規模。
6割超の団地が築30年以上、高齢者の入居割合は約6割
―公営住宅におけるこれまでの管理体制を教えてください。
市内の50団地・約4,000戸の住戸について、入居希望者の募集・審査、入居後の問い合わせ対応、家賃の集金・滞納対策にくわえ、住戸ごとの修繕や建物全体の維持管理・修繕などを行ってきました。このように、公営住宅のソフト面からハード面まですべての管理業務を行うなか、特に近年、ある課題がクローズアップされています。
―どのような課題でしょう。
建物の老朽化と、増え続ける高齢入居者への対応です。同様の課題をもつ自治体は多く、「2つの老いへの対応」と呼ばれています。当市の場合、築30年以上経過した建物が全体の6割超を占め、名義人が65歳以上の高齢者世帯も6割近い数字に上がってきています。これからも安心して住み続けてもらうには、建物の老朽化対策と、高齢入居者が安心して生活できるサポートの導入が必要でした。
―どのような施策を実施したのですか。
公営住宅の管理業務全般を、専門事業者に包括して委託することにしました。そのことによって、建物については維持管理のレベルが上がり、長寿命化が望めます。また、高齢入居者に対しては、専門事業者による充実した「見守りサービス」が提供できると考えたのです。くわえて、これまで職員の負担になっていたさまざまな業務を軽減できるのではないかと。
―どういった業務でしょう。
たとえば、入居者から「隣の音がうるさい」「他住民のごみの出し方がおかしい」「ドアが壊れた」という連絡が頻繁に入るのですが、その都度訪問して対応する必要があります。入居者の生活に直接かかわる業務なので優先しなければなりませんが、職員数に対してその数が多すぎました。そのため、「公営住宅のあり方」や「空き家対策」など、課として検討すべき新たな住宅政策の立案に集中できないといった課題がありました。管理業務の委託で、その課題もあわせて解決できると考えたのです。
そこで、指定管理者制度を活用して専門事業者を公募し、複数自治体で公営住宅の管理実績があり、高齢入居者への安心感あるサービスの提供が期待できると判断して日本管財に決定。平成31年4月から、業務委託を開始しています。
「対応が早くなった」と、入居者からは高評価
―管理業務の委託でどのような効果を感じていますか。
日本管財と打ち合わせながら、建物の管理面では、電気設備や給排水管など特にインフラ設備の点検強化により、建物の長期使用に向けた取り組みを進めています。高齢入居者については、定期的な巡回訪問や架電による「見守りサービス」のほか、電球交換といった軽作業を日本管財が無料対応する新たな取り組みも。また、これまで修繕時には、市の担当者が訪問後に見積もりや発注などをしていましたが、この手続きを一部省略し、専門業者が直接訪問するようにしたため、「対応が早くなった」という声が聞かれます。
「安心して住んでもらえる公営住宅」を目指した管理ができていると同時に、私たちとしても、新たな政策立案に集中できる体制を整えられています。
入居者対応がある公営住宅こそ、外部委託管理で安定した運営を
日本管財株式会社
業務統轄本部 公共住宅管理室 室長
秋定 孝史あきさだ たかし
昭和47年、大阪府生まれ。平成13年、日本管財株式会社に入社。おもにマンション管理業務を経て、平成24年から公営住宅管理の業務に従事。令和2年4月より全国の公営住宅管理の支援部署に就く。
―公営住宅の管理を委託する自治体は増えていますか。
はい。高松市のように「2つの老い」に対応した管理に向けて、ノウハウのある民間企業の力を借りる動きが自治体の間で広がっています。そもそも公営住宅の管理には、建物を管理すること以外に「入居者対応」といった業務もくわわるため、庁舎や体育館という一般的な公共施設の管理よりも業務負担が大きいといった問題もあります。そのため、専門事業者に委託することをおススメします。
―委託企業を選ぶポイントはなんでしょう。
まずは、建物の長寿命化に向けた維持管理の実績を備えたノウハウが豊富にあるかどうか。そして、ていねいに入居者対応できる体制にあるかが重要です。その点当社では、22自治体・約10万戸の公営住宅を管理。また、建物の損傷や劣化の発生前に対策を行う「予防保全」を重視した維持管理業務で、公営住宅以外にも官民合わせて3,000棟以上の建物を管理してきた実績があります。さらに、高齢入居者に対しては、まんべんなく「見守りサービス」を利用してもらえるようにしているほか、公営住宅の入居者対応の専門部署があるため、連絡があればすぐに応答する体制が整っています。
―今後の自治体に対する支援方針を聞かせてください。
当社では、建物の老朽化と高齢入居者の両方をケアする管理体制によって、公営住宅を持続的に運営していく支援を行っています。公営住宅の管理を委託したいと考えている自治体の方は、ぜひ当社にご連絡ください。