OSAKAゼロカーボンファウンデーション発足
脱炭素社会の実現へ向け、大阪が公民連携で臨む新たな挑戦
OSAKAゼロカーボン ファウンデーション 代表理事 /
リマテックホールディングス株式会社 代表取締役社長 田中 靖訓
※下記は自治体通信35号(Vol.35・2022年1月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
大阪府で今夏、公民連携によるひとつの活動が産声を上げた。「OSAKAゼロカーボンファウンデーション」―通称OZCaF(オズカフ)。企業・団体や府内自治体が連携し、脱炭素社会の実現に向けた活動を推進する取り組みで、すでに200*1を超える団体が参画している。この画期的な大規模連携は、いかにして発足し、今後どのような活動をしていくのか。公民それぞれを代表し、発起人であり代表理事を務めるリマテックホールディングス代表の田中氏と大阪府の担当者に話を聞いた。
大阪・関西万博を控え、共通目標で多くの企業を糾合
―設立の経緯を教えてください。
もともと当社が環境関連事業を世界各地で展開し、特に欧州の先進性をつぶさに見てきたなかで、思想や科学技術の分野で世界標準の獲得を意識した野心的ともいえる取り組みに、危機感を抱いたことがきっかけでした。このままでは、国際社会のなかで日本のプレゼンスは示せなくなると。折しも、昨年秋に日本もようやく「2050年のカーボンニュートラル実現」を宣言したこともあり、企業や行政が一体となってこの動きを推進するプラットフォームが必要だと考えました。そんなときに知ったのが、大阪府公民戦略連携デスクの活動でした。当時すでに約800社以上と企業ネットワークを構築し、公民連携の幅広い活動を展開していました。この枠組みを、脱炭素社会の実現にも活かせないかと。当時大阪府も、2025年大阪・関西万博の開催目的に「SDGsの達成」を掲げており、脱炭素社会実現には我々と共通した想いがありました。その理念の一致がOZCaF設立の動きにつながったのです。
―カーボンニュートラルという、ある種壮大なテーマで公民連携が実現できた理由はなんですか。
大阪には、目前に大阪・関西万博という大きなイベントを控えていることが大きいですね。技術力のある多くの府内中小企業を糾合し、現実的な共通目標を設定できる機会になるからです。
そのなかでOZCaFの実効性を高めるには、いかに企業に脱炭素社会実現の推進力を発揮してもらうかがカギになります。そのために、脱炭素ビジネスの環境を整備していくことも、OZCaFの重要な役割だと考えています。たとえば、企業がシーズをもち寄り、それらを融合した新たな技術開発を共同で進める場を提供する。もしくは、それらの技術を実証するフィールドを行政が提供する。そんなかたちの公民連携を通じて、従来のCSR活動とは一線を画した、ビジネス的な観点からも持続可能なカーボンニュートラルを先導していきたいと考えています。
大阪府
「オール大阪」体制の構築へ、公に求められる役割は大きい
大阪府
環境農林水産部エネルギー政策課 温暖化対策補佐 岩井田 武志
公民戦略連携デスク チーフプロデューサー 元木 一典
活動に広がりをもたせ、新たな企業間連携を生み出す
―大阪府では、OZCaFにどのような期待をもっていますか。
岩井田 大阪府の環境政策としては、令和元年に開催されたG 20大阪サミットにおいて共有された海洋プラスチックごみの削減に関する「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」や、2050年にCO2排出量実質ゼロを目指す「おおさか地球温暖化対策実行計画」などの取り組みを推進しています。
海洋プラスチックごみ問題や「脱炭素社会の実現」というテーマは、あらゆる産業活動や家庭生活に付随するものであり、「オール大阪」で取り組むべき課題です。多くの対象に向けて普及啓発を進め、活動に広がりをもたせるうえで、OZCaFには大きな可能性を感じています。
―OZCaFにおける「公の役割」とは、どういったものだと考えていますか。
元木 地域や業界の垣根を越えて、いかにプラットフォームに広がりをもたせられるか。そこへの貢献は、公に求められる最大の役割だと考えています。その意味では、構想から短期間でこれほどの規模にまで広げられた背景には、公民戦略連携デスクのこれまでの活動が大きく寄与したのではないかと考えています。
岩井田 2025年に大阪・関西万博の開催を控え、脱炭素社会実現への機運は高まっています。この機運を社会全体に根づかせていくのも「公の役割」です。そのためには、この活動を起点にして新しいビジネスや経済活動が生まれていくことがひとつの条件になるでしょう。
そこに向けた新たな企業間連携や脱炭素への取り組みを生み出していけるようになれば、OZCaF発足の意義はさらに高まるものと期待しています。