※下記は自治体通信 Vol.51(2023年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
自治体DXの機運が高まる昨今、その根幹となる行政ネットワークを安定的かつ効率的に管理することは、情報政策部門の重要な課題の一つとなっている。そうしたなか、岡山県では、県内全域を結ぶ行政ネットワーク「岡山情報ハイウェイ」の管理手法を刷新し、運用管理の業務効率を向上させた。同県デジタル推進課の羽井佐氏と、同県のネットワーク管理業務を担う第三セクター、オービスの中尾氏に、取り組みの詳細を聞いた。
[岡山県] ■人口:186万5,478人(令和5年1月1日現在) ■世帯数:86万6,345世帯(令和5年1月1日現在) ■予算規模:1兆2,111億7,700万円(令和5年度当初)
■面積:7,114.77km² ■概要:中四国地方の交通の要衝として古くから重要な位置にある。今日でも、県内に縦横に延びる高速道路網、瀬戸大橋、国内外へ飛び立つ岡山桃太郎空港、新幹線をはじめとした東西南北につながる鉄道など交通基盤が充実し、中四国のクロスポイントとして着実に発展を続けている。晴天が多く、「晴れの国」と呼ばれる。岡山県によると、降水量1mm未満の日数は全国でもっとも多い。
煩雑な作業を伴う、ネットワーク管理が課題に
―通信ネットワーク管理の効率化を図った背景を教えてください。
羽井佐 当県が全域に張り巡らせている高速大容量光ファイバー網「岡山情報ハイウェイ」は、地域情報化の促進を目的に平成10年度から整備を始めたものです。いまでも官民問わず数多くの機関が利用しており、令和2年12月に策定した「岡山県DX推進指針」では、現在も欠かすことのできない重要なITインフラと位置づけ、それを有効かつ安定的に活用することが指針実現のカギとされています。そこで、構成するネットワーク機器の更新時期に合わせ、運用管理の改善を検討したのです。
―従来はどのような運用管理がなされていたのでしょう。
中尾 ネットワークを安定稼働させるには、装置の設定情報や接続先の利用者情報を適切に管理する必要があるため、設計時に作成されたExcelファイルなどを管理情報として引き継ぎ、運用中に生じた変更を逐次反映して最新情報を維持してきました。しかし、これでは装置の設定情報は確認できても、最新の動作状況など動的な情報は得られません。特に、障害発生時に迅速かつ的確に対応するためにも、全体を網羅しながら設定情報や動作状況など必要な情報をリアルタイムに把握できる仕組みが必要と感じていました。そうしたニーズを満たすソリューションとして導入にいたったのが、アラクサラネットワークスのネットワーク運用管理ソフト『AX-Network-Manager(以下、AX-NM)』でした。
日々の対応を迅速化し、危機管理上の安心感を得た
―導入の決め手はなんでしたか。
羽井佐 ネットワーク機器の設定情報や最新の動作状況を自動で取得し、管理画面上で一元管理できる点です。また、それらの情報は、直感的でわかりやすいGUI*で表示され、ワンタッチでドキュメントとして出力できるなど、運用管理者が簡単に使えそうな仕立てになっている点も評価しました。
―導入後の効果はいかがですか。
中尾 機器に1台1台ログインして必要な情報を取得したり、その結果をExcelに記録したりする煩雑な作業が減り、日々の対応の迅速化や効率化が図れました。
羽井佐 幸いにも、岡山情報ハイウェイでは前回の更新後から大きな障害は発生していませんが、有事の際には関係者間の情報伝達やトラブルシューティングの時間を大幅に短縮できると予想しており、危機管理上の安心感が得られました。また、近い将来、システム上での一元管理に移行することで、属人性の低い正規化された管理環境を実現できると見ています。
*GUI : 「Graphical User Interface」の略。コンピュータの情報表示にグラフィックを使用し、マウスのような入力装置によって操作する方式のこと
ネットワーク管理の効率化は、自治体DX推進の大前提になる
アラクサラネットワークス株式会社
営業本部 第一エンタープライズ ビジネス部
水野 裕介みずの ゆうすけ
愛知県生まれ。ITディストリビュータの営業を経て、令和4年、アラクサラネットワークス株式会社に入社。現在は公共および放送分野の営業活動に従事。
―ネットワーク管理をめぐる自治体の課題はなんでしょう。
総合行政ネットワークを安全に運用するには、機器の設定情報や運用状況をつねに正確に把握しておく必要があります。しかし、そうした情報は職員がExcelベースで管理しているケースが多く、効率的と言えないことが課題です。また、ネットワーク管理には専門知識が必要なため、管理が属人化してしまう傾向があります。それにより、情報政策部門の職員が異動した際に現状を把握できなくなり、運用に支障を来してしまうといったリスクも生じます。そこで当社では、ネットワーク管理業務を標準化し、これらの課題を解決するために『AX-NM』の導入を提案しています。
―特徴を教えてください。
機器の稼働状況を取得し、それを視覚的にリアルタイムで一元管理できる点です。また、登録された機器の構成や詳細な設定変更履歴は自動的に記録でき、つねにネットワークの状況を把握することができます。これらの情報を記載したドキュメントを、ワンタッチで自動生成できるのも特徴の一つです。職員は業務負担を抑えつつも、ネットワーク管理の標準化、ひいては安定的な運用を目指せるのです。
―今後の自治体への支援方針を聞かせてください。
自治体DXの推進には、総合行政ネットワークの安定稼働が大前提となります。当社では、ネットワーク機器メーカーとして蓄積した知見を投入した『AX-NM』を通じ、ネットワーク管理の効率化・標準化に貢献します。ぜひお問い合わせください。