※下記は自治体通信 Vol.60(2024年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
DXの推進に伴い、その根幹となる自治体情報ネットワークの複雑化が進む昨今、情報政策部門においては情報ネットワークのより効率的な管理が求められるようになっている。こうしたなか、大分県では、従来手作業で行っていた情報ネットワーク管理の手法を刷新し、管理の質向上に確かな効果を実感しているという。取り組みの詳細について、同県の担当者2人に聞いた。
[大分県] ■人口:108万6,740人(令和6年7月1日現在) ■世帯数:49万7,838世帯(令和6年7月1日現在) ■予算規模:9,771億3,575万5,000円(令和6年度当初) ■面積:6,340.70km² ■概要:「アジアの玄関口」である九州の北東部に位置し、北側は周防灘、東側は伊予灘、豊後水道にそれぞれ面している。県内全域に広がる温泉は、同県によると、日本一の湧出量と源泉数を誇り、10種類ある泉質のうち8種類を有している。「The・おおいた」ブランドとして、関あじ・関さば、おおいた和牛などの高級食材をはじめ、かぼすやしいたけなど四季折々の食材も豊富。
大分県
総務部 電子自治体推進課 基盤システム管理班 主幹
川野 裕介かわの ゆうすけ
大分県
総務部 電子自治体推進課 基盤システム管理班 主事
小林 幸平こばやし こうへい
人手作業による台帳管理では、実態との乖離が生じうる
―情報ネットワークの管理方法を刷新した経緯を教えてください。
川野 当県では、情報ネットワークを構成する機器の接続情報や設定情報を表計算ソフト上で管理していました。組織再編や新たなシステム導入の際は、VLAN*追加などの変更内容を反映させる必要がありますが、人手作業のため、長く時間が経つと、更新漏れや誤記により実態との間に乖離が生じることもありました。それにより保守ベンダーとのやりとりに齟齬が生まれれば、障害発生時の対応に支障を来しかねません。また、県全体で使われているVLANの数は900を超えるため、人手作業による管理に限界を感じていました。
小林 そうした折に当県は、県庁舎と広域ネットワーク「豊の国ハイパーネットワーク」で使用する機器のリース満了に伴う入札を経てアラクサラネットワークス製の機器を選定しました。その際、同社の『AX-Network-Manager(以下、AX-NM)』というネットワーク管理のデジタル化ツールの提案も受け、関心をもちました。
―どういった点に関心をもったのですか。
川野 ネットワーク内の機器の接続・設定情報を自動収集し、画面上で一元管理できる点です。これならばネットワークの状況を正確に把握し、その管理の質を向上できると期待しました。障害発生時には、県の職員と保守ベンダーで同一画面を見ながら対応できることも評価しました。そこで我々は『AX-NM』の導入を決め、令和5年秋から県庁舎と「豊の国ハイパーネットワーク」で運用を始めました。
*VLAN : Virtual Local Area Networkの略。物理的な機器の接続に関係なく、仮想的なネットワークを構築できる技術
台帳管理の自動化や、迅速なトラブル対応を実現
―導入効果はいかがですか。
小林 機器の接続・設定情報を簡単に収集できたほか、すべてのVLANに用途ごとで名前を付け、不要なVLANを洗い出すといった管理もできるようになり、情報ネットワークの最適化に役立ちました。また、職員から「ネットワークに接続できない」と連絡を受けた際は、迅速なトラブル対応を行えました。『AX-NM』ではネットワーク構成を図示する「トポロジーマップ」で「庁内のどのフロアでどの機器が稼働停止している」といった状況が一目瞭然なので、問題箇所の特定や保守ベンダーとの連携が円滑に進みました。
川野 今後は庁内で無線LANの整備を進める計画ですが、『AX-NM』は帯域使用率など機器の利用状況も把握できるため、それをもとに計画的な機器の増設が行えそうです。質の高い情報ネットワーク管理を行えるようになったことは、職員の業務や住民サービスの提供に欠かせないITインフラを安全かつ効率的に運用する上で、重要な成果だと捉えています。
今こそネットワーク管理を見直し、来たる情報部門の業務増大に備えよ
アラクサラネットワークス株式会社
バリュークリエーション本部 システムクリエーション部 技師
平井 幸洋ひらい ゆきひろ
福岡県生まれ。令和4年、アラクサラネットワークス株式会社に入社。システムエンジニアとしてネットワークの構築・導入支援業務に従事。
―情報ネットワーク管理をめぐる自治体の課題はなんですか。
DX推進機運の高まりに伴い、情報ネットワークの複雑化・高度化が進み、その管理の重要性が増していることです。機器の実際の運用・保守は民間に委託するケースが多いですが、現場の職員がその設定情報や運用状況を把握できていないと、万一の際、職員の業務や住民サービスの提供が滞ってしまう事態に陥りかねません。DXの旗振り役である情報政策部門こそ、今後の業務量増大に備え、情報ネットワーク管理の効率化が求められています。
―どうすればよいですか。
デジタル化ツールを導入し、機器の接続情報や設定情報の管理を自動化することが、課題の解決策となりえます。たとえば当社の『AX-NM』は、通信機器から情報を自動収集することで、複雑な情報ネットワークの状況を正確に把握することができます。未許可の端末の存在も含め、情報ネットワーク全体の状況を可視化することができるので、自治体はDX推進の根底となる情報ネットワークの効率的な管理を目指せます。また、マルチベンダー対応のため、当社製以外の通信機器も管理することが可能です。
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
『AX-NM』は、わかりやすいUI・UXも特徴で、技術の専門家ではない自治体の職員をも意識した設計としています。今後も、職員視点に立って操作性や機能の改善を図り、自治体の情報ネットワーク管理を支援していきたいと考えています。