※下記は自治体通信 Vol.56(2024年3月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
コロナ禍によって対面コミュニケーションが大きく制限されたなか、ビデオ会議ツールの導入が各自治体で大きく進み、働き方や住民サービスのあり方に大きな変革をもたらした。なかでも、新たなライセンス方式を活用して全庁導入に踏み切り、その効果を実感した自治体のひとつが、三重県である。ツール選びの経緯や導入後の効果などについて、同県のふたりの担当者に聞いた。
[三重県] ■人口:172万4,376人(令和6年1月1日現在) ■世帯数:75万3,421世帯(令和6年1月1日現在) ■予算規模:1兆2,253億3,841万5,000円(令和5年度当初)
■面積:5,774.48km² ■概要:伊勢湾と太平洋に面し、南は和歌山県、西は奈良県、京都府、北は滋賀県、岐阜県、愛知県と接している。「伊勢神宮」や世界遺産「熊野古道」、伊賀忍者発祥の地、リアス式海岸など、美しい自然や名所旧跡が数多く存在するほか、海山の幸に恵まれていることから、美し国(うましくに)と称されている。四日市萬古焼、松阪牛、伊賀牛、伊勢えび、伊勢茶、真珠、熊野地鶏などの特産品がある。
三重県
総務部 デジタル推進局 デジタル改革推進課 副課長
岡本 悟おかもと さとる
三重県
総務部 デジタル推進局 デジタル改革推進課 情報基盤班 班長
杉山 幸嗣すぎやま こうじ
相手側のニーズに沿った、ツール導入を検討してほしい
―ビデオ会議ツールを全庁規模で導入した経緯を教えてください。
岡本 ビデオ会議ツールの導入は、令和2年1月以降の新型コロナウイルスの感染拡大がきっかけでした。従来の対面によるコミュニケーションが難しくなり、各部署の業務に支障が出るようになったため、ビデオ会議ツールの緊急導入が必要になりました。当時展開していたテレワーク実証事業でビデオ会議ツールも試行していたため、同ツールをベースに環境を確保できたのですが、ビデオ会議の活用が庁内全体へ浸透していくなかで、職員からはさまざまな要望が寄せられるようになりました。
―それはどのような内容ですか。
杉山 ツール操作や端末の機器設定、オンラインイベントの開催支援など、要望は多岐にわたりました。その中で、当時活用していたビデオ会議ツールを相手側が使えない場面も多く、相手側のニーズに沿ったツールの環境整備を検討してほしい旨の要望もありました。そのため、令和3年度には、職員からの要望に沿うかたちで『Zoom』を導入し、大部分の所属が利用できる環境を整備しました。さらに、令和5年度には、『Zoom』の「アクティブホスト」という新たなライセンス方式を採用しました。「アクティブホスト」は、全職員に有償ライセンスを配付し、契約時に上限として定めた同時接続数(主催数)の範囲内であれば、全職員が会議を同時開催できる環境です。職員間や外部関係者とのミーティング、職員研修、オンラインイベント、テレワークなどで多く活用しています。
―導入効果はいかがですか。
杉山 庁内外の誰とも簡単につながる環境になったことで、職員のコミュニケーションは一段と活性化できている印象です。さらに、職員がいつでも会議を主催できる環境は、業務効率の改善にもつながっています。また、ビデオ会議が庁内の隅々に浸透したことで、テレワークなど新たな働き方も促進されており、これらの展開を通じ、DX推進の機運が高まったことは最大の効果だと思います。
すでに業務に欠かせない存在、AI機能搭載で今後にも期待
―今後の方針を聞かせてください。
岡本 本県では、令和4年度から令和5年度にかけて、DX推進に向けた、庁内デジタル環境の見直しを行っており、グループウェアについても刷新したところです。本グループウェアには別のビデオ会議ツールも搭載されており、全職員にライセンスが提供される状況となりましたが、すでに業務に欠かせない存在となった『Zoom』と併用していく予定です。『Zoom』については、AI機能などが順次搭載され始めており、今後も魅力ある機能が提供されるものと非常に期待しています。
ビデオ会議は庁内DXのみならず、住民対応の高度化にも貢献できる
ZVC(Zoom Video Communications) JAPAN株式会社
代表取締役会長兼社長
下垣 典弘しもがき のりひろ
日本オラクル株式会社専務執行役員、日本アイ・ビー・エム株式会社執行役員パートナー、株式会社Yext社長兼COO、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社のエンタープライズ・セールス部門ディレクターなどを歴任。令和5年3月から現職に。
―コロナ禍以降、自治体におけるコミュニケーションのあり方はどう変わっていますか。
DX推進で業務の効率性や利便性が追求されるなか、庁内外のコミュニケーションもDXが進み、ビデオ会議ツールの活用はもはや常識となっています。当社も多くの自治体に『Zoom』の提供するさまざまなソリューションを通じて「庁内のDX」を支援しています。ただし、コミュニケーションのDXの本丸は、その先に描かれる「住民サービスのDX」であり、そこでこそ『Zoom』の真の導入効果が実感できると考えています。
―どのように活用できますか。
たとえば、AIとの連携で住民窓口を『Zoom Meetings』に取り込めば、遠隔対応と自動化を図れます。また、多言語翻訳機能により外国人対応窓口を『Zoom Meetings』内に取り込み自動化する、もしくは医療や教育、災害などの遠隔地対応にも活用するなど、多くのシーンで『Zoom Meetings』が活躍できます。地域の祭りを仮想イベントプラットフォーム機能『Zoom Events』で発信するといった支援もできます。これらは、「今すぐ」に実現できるのです。
『Zoom』の提供する多様な機能によって多くの業務が自動化でき、住民サービスの高度化も図りながら職員の業務負担を軽減できます。その意味では、当社は単にビデオ会議ツールを提供しているのではなく、「新たな時間創造」に貢献しているといえます。そこで生み出された時間を使って、みなさんと一緒に人口減少時代の社会課題を解決していきたいと考えています。