※下記は自治体通信 Vol.57(2024年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
いま、全国の自治体ではさまざまな住民サービスのデジタル化やDXが進んでいる。そこでは、いかに暮らしが便利になったかを、住民に感じてもらえることが重要になる。そうしたなか、佐賀市(佐賀県)では、複数の住民サービスを1つのアプリに集約した「スーパーアプリ」の提供を開始。「手のひらサイズの市役所」として多くの住民に利用され、生活の利便性向上に手応えを感じているという。取り組みの詳細について、同市の担当者2人に聞いた。
[佐賀市] ■人口:22万7,674人(令和6年2月末日現在) ■世帯数:10万3,920世帯(令和6年2月末日現在) ■予算規模:1,695億2,200万円(令和6年度当初)
■面積:431.81km² ■概要:平成17年に、旧・佐賀市と諸富町、大和町、富士町、三瀬村が合併して誕生。平成27年には、シギ・チドリ類飛来数が日本一とされ、紅葉する塩生生物「シチメンソウ」が自生する「東よか干潟」が、ラムサール条約湿地に登録された。また同年には、日本初の実用蒸気船が造られた「三重津海軍所跡」 が、「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の1つとして、世界遺産に登録された。
佐賀市
政策推進部 DX推進課 スマートシティ推進室 主査
安元 秀志やすもと ひでゆき
佐賀市
政策推進部 DX推進課 スマートシティ推進室 主任
山岡 勇介やまおか ゆうすけ
「日本一便利なまち」へ、市民に身近なDXを目指す
―佐賀市では、どのような方針で住民サービスのDXに取り組んでいますか。
安元 当市では「日本一便利なまち」になることを掲げ、住民サービスのDXに取り組んでいます。令和4年度からは、若手職員による検討部会を設置し、デジタルを活用した新たな住民サービスの創出について議論してきました。そこでは、「市民にとって身近で便利なDX」をいかに実現するかをつねに念頭に置いていました。
山岡 そうしたなか、世帯保有率が9割を超えるスマートフォンに着目し、さまざまな住民サービスを1つのアプリで提供する「スーパーアプリ」の導入を決定しました。プロポーザルの結果、高い技術力と豊富な経験が決め手となり、地元のIT企業であるオプティムに開発を委託。令和5年6月からスーパーアプリの提供を開始しました。スーパーアプリには、「ごみ収集日のプッシュ通知」や「電子申請」「図書館利用カードのデジタル化」「防災情報提供」など、生活を便利で快適にする機能が数多く搭載されています。
―利用状況はいかがですか。
山岡 今年3月11日現在でダウンロード数が3万9,000件を突破しました。当市のほかのWebサービスなどと比べても、多くの人々に利用されていると感じています。マイナンバーカードによる公的個人認証を活用し、オンラインで本人確認を行える「デジタル市民証」などの便利なサービスが新たに実装されるたびに、ダウンロード数が大きく伸びています。スーパーアプリには現在、25のミニアプリやサービスが搭載されていますが、「手のひらサイズの市役所」として住民サービスを利用できるところに、利便性を感じている人が多いのかもしれません。
安元 それだけではなく、スーパーアプリの提供を始めてからは、我々職員も業務効率化の成果を感じています。
想定以上の利用があった
―具体的に、どういった成果を実感していますか。
安元 たとえば、スーパーアプリ内で、あるキャンペーンの申し込みを受け付けたのですが、申請者数が当初の見込みを大きく上回りながらも、その受付に伴う職員の業務負担軽減やペーパーレス化につなげることができました。この業務効率化もDXの効果の1つではありますが、なによりも想定を上回る利用があったことが、スーパーアプリに対する住民の評価ではないかと当市では受け止めています。スーパーアプリを導入した効果が市民や職員へ広がり、DX推進の成果が表れているのを実感しています。
サービスの認知・利用を広めるには、まずは住民との「接点」構築が重要
株式会社オプティム
ビジネス統括本部 顧客接点デジタル化 支援事業部 ODXセールスユニット ディレクター
徳田 整治とくだ せいじ
昭和51年、兵庫県神戸市生まれ。平成12年、株式会社オプティムに創業メンバーとして入社。開発部門勤務を経て、営業部門へ転籍。令和4年より現職。おもに顧客と企業をつなぎDX化する営業活動を担う。
―自治体における住民サービスのデジタル化を、どのように見ていますか。
自治体は数多くの住民サービスのデジタル化を進めていますが、それらの情報はホームページや広報誌などに分散されている状況です。それにより、個々の情報が住民に届きにくくなり、サービスの認知や利用が広がらないという課題が生じています。その課題を解決するには、「ここを見れば必要なサービスが見つかる」と住民に思ってもらえる「接点」をつくることが重要になります。そこで当社では、既存・新規の複数のサービスをスーパーアプリに集約し、自治体と住民の接点として構築できる「自治体向けスーパーアプリ・プラットフォーム」を提案しています。
―プラットフォームには、どういった特徴がありますか。
利用者に利便性を提供できるミニアプリが揃っているのが特徴です。たとえば、マイナンバーカードを活用した「デジタル市民証」により、自治体は「地域ポイントの付与」や「避難所へのチェックイン」といった、個々の住民を選択的に対象とするミニアプリを実装できます。ほかにも、図書館などの利用カードをデジタル表示できる機能や、学校向けの出欠連絡「れんらくん」など、利用者の利便性を考慮した当社独自開発のミニアプリも増えています。このプラットフォームの提供を通じて培ったノウハウを、多くの自治体にシェアできるように、「デジタル田園都市国家構想交付金」の対象としてもご提案できますので、気軽にご連絡ください。