※下記は自治体通信 Vol.58(2024年6月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
自治体の職員は日々、住民生活の維持・向上を図るべく、業務に取り組んでいる。そうした日常でもらう住民からの「感謝の言葉」は、職員にとって励みとなり、ときには、業務の本質に改めて気づかせてくれるヒントにもなる。とはいえ、実際に住民から感謝の言葉をもらえる機会はそう多くはないに違いない。そこで本連載では、住民から感謝の言葉を受けた自治体職員をクローズアップ。エピソードを通じて、職員たちの誇るべき仕事ぶりを紹介する。
安心してお母さんになってほしい。そんな想いで支援に当たっています
―感謝の言葉を伝えられた経緯を教えてください。
私は保健師として多胎児の妊娠・育児支援を担当し、面談を通じて妊婦さんの不安や悩みに応えたり、市の各種支援策を案内したりしています。多胎児の育児は、体力的・精神的な負担が特に大きく、「数ヵ月間、我が子をかわいく思う余裕すら失ってしまった」といった話を耳にすることがあります。感謝の気持ちを伝えてくれた妊婦さんは、そうした苦労話を見聞きするなかで、頭が不安でいっぱいになり、母親としての幸せを想像できなくなってしまったようでした。しかし、ある日の面談の際に、「佐々木さんがいるから心強い」と、感謝の言葉を伝えてくれたのです。
―感謝の言葉をかけられたのはなぜだと思いますか。
私たちと接するなかで、「安心してお母さんになれる」と、心から思ってもらえたからだと考えています。保健師の仕事は助言と指導がメインですが、私はなによりも、出産や育児への「不安を一緒に解消していくこと」を大切にしています。そのため私は、こちらから一方的に助言や指導を与えるのではなく、まずは「相手の話に耳を傾けること」を第一に心がけてきました。相手の不安が漠然としている場合は逆に、先輩ママの体験談などをこちらから伝えることで、不安を少しでもやわらげられるようにしています。多胎児のお母さんの場合、同じ境遇の相談相手を見つけにくく、不安や悩みを打ち明けられないケースが多いようです。そのため、まずは相手にしっかりと寄り添うことで、「話を聞いてくれる人、支えてくれる人はたくさんいるんだ」と安心してもらえるよう、努めてきたのです。
―感謝の言葉から、どのようなことを感じましたか。
必ずしも、「知識」や「経験」だけが相手の不安を解消できるわけではないのだと、改めて実感しました。私自身、多胎児育児の経験はありません。ですから、その妊婦さんが私を頼りに感じてくれたのは、「この人なら自分のことをわかってくれる」と思ってくれたからなのかもしれません。当センターではこうした声を受けたことも1つのきっかけに、多胎児ママ同士の交流会を開くなど支援策のさらなる充実を進めていますが、そこでも変わることなく、相手に寄り添うサポートを大切にしていきたいです。
『自治体通信』では、自治体職員のみなさんが住民に感謝されたエピソードを募集しています。
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jt_editorialdept@ishin1853.co.jp 『自治体通信』編集部