《「住民からの感謝状」16通目》業務時間外にもかかわらず、丁寧に対応してくれてありがとう

※下記は自治体通信 Vol.64(2025年3月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
自治体の職員は日々、住民生活の維持・向上を図るべく、業務に取り組んでいる。そうした日常でもらう住民からの「感謝の言葉」は、職員にとって励みとなり、ときには、業務の本質に改めて気づかせてくれるヒントにもなる。とはいえ、実際に住民から感謝の言葉をもらえる機会はそう多くはないに違いない。そこで本連載では、住民から感謝の言葉を受けた自治体職員をクローズアップ。エピソードを通じて、職員たちの誇るべき仕事ぶりを紹介する。

―感謝の言葉を受け取った経緯を教えてください。
私は住民環境課の窓口で、戸籍関係の業務を担当しています。その女性は、パスポートを申請するために閉庁時間の15分ほど前に来庁され、私が対応しました。ただ、書類の不備などがあったため手続きには時間がかかり、完了したときには閉庁時間を1時間近く過ぎていました。それから数日後、その女性は再び私を訪ね、「先日はありがとうございました」と、私に封筒を手渡してくれました。開けてみると、「丁寧に穏やかに受付してくださり、心から感謝しています」と綴られた手紙が入っていたのです。
―窓口対応中に、閉庁時間が過ぎてしまうことは珍しいのですか。
決してそんなことはありません。ただその女性は、閉庁時間が過ぎ、周りの来庁者や職員がいなくなっていく状況にプレッシャーを感じてしまっていたようでした。私を気遣い、「大丈夫なんですか」と何度も尋ねてくれましたが、私は「お客さまこそ問題なければ、私は大丈夫ですよ」と、女性を焦らせてしまわないよう接しました。この窓口を訪れる方々は、行政上必要な手続きを行うために貴重な時間を割いてくれています。そのため私は、少なくとも来庁者が不快に感じることなく、気持ちよく役所を後にしてもらえるように努めてきました。基本的なことではありますが、そんな姿勢がその女性にも伝わったのかもしれません。
―今回の出来事を通じて、気づいたことはありますか。
「法に従って手続きを行う」という、ルールに忠実で一見事務的に見える業務でも、「ありがたい」という温かい感情をもってもらえるのだと実感しました。私はこれまでも、来庁者が手続きに納得してもらえるよう丁寧な説明や案内を行うことが、住民に対する「誠実さ」だと心得て実践してきました。それが今回の出来事を通じ、この仕事は行政への安心感や信頼感といったポジティブな印象さえ与えることができるのだと気づきました。一般的に「お役所仕事」という言葉は融通がきかない不親切な仕事を指します。しかし、少なくともこの有田町では、「お役所仕事」の語義をむしろポジティブに変えられるよう、今後も直接住民と接する私たちが誠実な仕事を心がけていきたいです。

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