※下記は自治体通信 Vol.59(2024年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
総務省の調査*によると、令和4年度のふるさと納税の寄附額は、総額約9,654億円に達するという。厳しい財政事情を抱える自治体にとっては、住民サービスを支える貴重な財源にほかならず、いかに寄附額を伸ばすかは切迫した課題であろう。そうした中、県内有数の寄附額を誇る伊万里市(佐賀県)では、民間事業者のノウハウを活用し、寄附額増加で大きな成果をあげているという。同市担当者に、取り組みの経緯やその効果などを聞いた。
*「ふるさと納税に関する現況調査」
[伊万里市] ■人口:5万1,875人(令和6年6月1日現在) ■世帯数:2万3,874世帯(令和6年6月1日現在) ■予算規模:492億5,349万6,000円(令和6年度当初) ■面積:255.26km² ■概要:北部九州の西部に位置し、天然の良港伊万里湾を抱く。古くは「古伊万里」の積出港として、また、石炭産業全盛期は石炭の積出港としても栄えた。近年では、伊万里湾総合開発を軸に大規模な臨海工業団地を造成し、造船、半導体、木材などの関連産業が集積する。さらに、九州でも有数の国際コンテナターミナルを有するなど、アジアへのゲートウェイとして発展している。
寄附額が伸び悩む中、制度改正でも対応が必要に
―伊万里市における、ふるさと納税の取り組みを教えてください。
当市にとって、ふるさと納税の寄附金は市の施策を展開するうえで貴重な財源にほかなりません。子どもの医療費無償化などはふるさと納税の寄附金が活かされている代表的な事例です。また、返礼品提供事業者を通じて地域経済への好影響も期待できますので、全国的に認知度が高まる伊万里牛や伊万里梨などの返礼品を充実させ、ふるさと納税に力を入れてきました。その結果、平成27年度に10億円を突破して以降、順調に寄附額を伸ばしており、令和4年度は過去最高の約29億円と県内3位を記録しました。しかし、翌令和5年度に、ふるさと納税をめぐる環境が大きく変わることになりました。
―詳しく教えてください。
昨今の市場の成熟と自治体間競争の激化で寄附額は伸び悩み、令和5年度は前年度を下回ってしまいました。加えて、令和5年10月からの制度改正で、50%以下と定められている経費の算出方法が変わることになったのです。変更後の算出方法では、当市の経費比率は50%を超えるため、対応を迫られていた中、『ふるなび』を運営するアイモバイル社から、新たなサービスの提案を受けました。
―どういったサービスですか。
『ふるなび包括プラン』というサービスで、これまで市職員や中間事業者が行っていた返礼品の登録や受発注業務、寄附者からの問い合わせ対応や書類発行業務などを一括して請け負ってくれるというものです。さらに、寄附向上施策についても提案をもらえるので、経費削減と寄附額増加という当市の課題を同時に解決できるサービスとなっていたので、迷うことなく導入を決めました。
導入直後から得られた、前年同月比約2.3倍の成果
―導入後の効果はいかがですか。
従来よりも経費が確実に抑えられているうえ、今日はまだ5月21日ですが、前年の5月に対し、寄附額は約2.3倍、導入した4月以降の2ヵ月を比較しても、約1.4倍を記録しています。導入直後から顕著な効果を得られたことに驚いています。この成果には、サムネイルやキャッチコピーの改善のほか、自治体職員では追いつかないWebマーケティングの専門的な知見によるページ編集が背景にあります。『ふるなび』サイトをもっともよく知るアイモバイル社が、月次目標に沿って計画的に行ってくれる寄附向上施策は、私たち担当職員にとって貴重な学びにもなっています。
―今後のふるさと納税事業の取り組み方針を聞かせてください。
ふるさと納税事業は、行政サービスの原資となって住民へ、また返礼品提供事業者を通じて地域経済へ還元される重要な役割を担っているだけでなく、市の魅力を全国に発信する使命も背負っています。これからも、伊万里市が「選ばれる自治体」であり続けるために、民間の専門的な知見を積極的に活用し、事業の継続的な発展を目指していきたいと考えています。
サイト運営者の専門的知見を活用し、ふるさと納税の競争力を高めよ
株式会社アイモバイル
事業企画本部 自治体サービス事業部 営業グループ マネージャー
花田 涼はなだ りょう
平成5年、東京都生まれ。パソコン専門の小売企業で店頭営業を経験後、本社アライアンス事業部での業務を経て、令和4年5月に株式会社アイモバイルに入社。中国四国地方、九州地方の営業担当などを経て、令和6年4月より現職。
―ふるさと納税事業をめぐり、自治体が抱える課題をどのように見ていますか。
多くの自治体が、共通する2つの課題を抱えています。1つは、成熟しつつある市場の中で、過熱する自治体間競争をいかに勝ち抜き、貴重な財源となったふるさと納税を伸ばしていくか。もう1つは、令和5年10月からの制度改正を受け、いかに事業経費の抑制を図るか。前者については、Webマーケティングの専門的な知見を要するため、自治体職員では対応が難しい課題です。そこで当社では、これまで培ってきたノウハウを活かし、後者の経費削減も合わせて実現する新たなサービスとして、今年4月から『ふるなび包括プラン』を提案しています。
―特徴を教えてください。
サイト運営者として当社が有する『ふるなび』に特化した最適なマーケティング施策を打てることが大きな特徴です。『ふるなび』発足から現在までの10年の間に蓄積してきたさまざまなビッグデータを活用し、寄附額の増大を実現していきます。これらの寄附向上施策を中心に、これまで中間事業者が担ってきた返礼品の登録や受発注業務といった事務作業も包括的に請け負うことで事業経費全体の削減にも寄与する点も、もう1つの特徴です。
―今後の自治体への支援方針を聞かせてください。
自治体が抱える2つの課題を同時に解決するこのサービスで、当社は『ふるなび』サイトと自治体との関係をより強固なものにしていきたいと考えています。ぜひお問い合わせください。