※下記は自治体通信 Vol.59(2024年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
コロナ禍を経て、新しい生活様式が提唱されて以降、場所にとらわれない働き方を実現する動きが自治体でもみられるようになっている。志免町(福岡県)もそうした自治体の1つであり、電話設備の運用について見直しを行ったという。その結果、PBX(電話交換機)のクラウド化を図るとともに、固定電話機の多くを廃止し、スマートフォンを導入。内線利用を開始している。同町担当者の2人に、取り組みの経緯とその効果を聞いた。
[志免町] ■人口:4万6,276人(令和6年6月1日現在) ■世帯数:2万1,036世帯(令和6年6月1日現在) ■予算規模:225億3,397万1,000円(令和6年度当初) ■面積:8.69km² ■概要:明治22年に田富・吉原・志免・南里・別府・御手洗の6カ村が合併し、昭和14年に町制を発足した。戦前は海軍炭鉱、戦後は旧国鉄の志免炭鉱と、石炭の町として栄えた。福岡市の中心部まで約8kmという地の利と温暖な気候に恵まれ、昭和40年以降は福岡市のベッドタウンとして住宅開発が進んでいる。近年では、町の動脈である近隣の市町村を結ぶ福岡東環状線や県道福岡太宰府線などの幹線道路沿いに新たな商業集積がみられる。
固定電話が職員を「島」に縛り、柔軟な働き方の制約に
―志免町がPBXをクラウド化した経緯を教えてください。
松石 10年ほど前に導入したPBXが機器更新の時期を迎えたことで、新たな設備の検討に入りました。その際、従来の電話をめぐる課題を解決できないかと考えました。というのも、長年の運用によって配線が複雑化し、我々職員では設定を把握できない状況になっていたのです。人事異動や組織改編、給付金などの臨時事業に伴うレイアウト変更にスピード感を持った対応ができていませんでした。
白垣 また、通信障害や災害に備え、「業務継続性」をいかに担保するかという課題もありました。従来のように、オンプレのPBXを庁内に設置していてはBCP対策上のリスクが高いと考え、まずはPBXをクラウド化することにしたのです。同時に、固定電話の運用も大幅に見直しました。
―どういうことでしょう。
白垣 かねてより、当町でもテレワークを試行してきましたが、従来の固定電話による内線運用がどうしても部署ごとの「島」に職員を縛る要因として作用するため、テレワークのような柔軟な働き方を広げるうえでの制約になっていたのです。そこで、円滑なコミュニケーションを確保しながら、場所に縛られない働き方を実現する方法として、クラウドPBXの導入を機に固定電話をスマートフォンへ切り替える方針を決めました。
松石 クラウドPBXの導入にあたっては、2拠点でのバックアップ体制による優れたBCP対策や、スマートフォン内線での高い音質を評価し、アイルネット社の『iスマートBiz』を選定。令和6年1月から運用を開始しています。
自由な働き方の基盤が整った
―導入後のクラウドPBXの運用状況を教えてください。
白垣 役場庁舎と各施設、町内小中学校を含む13拠点をクラウドPBXで結び、光回線を設置しています。固定電話回線やPBXに係る機器のほとんどをアイルネット社のデータセンターに収容することで、役場庁舎に設置されているのはルーターと固定電話機のみになりました。この結果、BCP対策も強化され、将来的な機器の老朽化対応の心配もなくなりました。
松石 固定電話機は部署ごとに1台、計70台のみに抑え、代わりにスマートフォンを1人1台の約700台、導入しています。組織改変やレイアウト変更にも素早く対応することができるようになり、より柔軟で自由な働き方への基盤が整ったと感じています。この成果を行政運営の効率化や住民サービスの向上につなげていきたいです。
柔軟で自由な働き方の実現へ、PBXのクラウド化はその第一歩に
各務 仁かがみ じん
昭和49年、東京都生まれ。大手通信事業者代理店などを経て、平成9年10月、株式会社アイルネットに入社。法人事業部部長などを経て、令和4年より現職。
株式会社アイルネット
クラウド事業本部 第1営業部 第1グループ
岩井 真也いわい まさや
平成9年、埼玉県生まれ。令和2年、株式会社アイルネット入社。現職では自治体のクラウド化の提案および、大手製造業、生活用品メーカーなどへのクラウドPBX導入にも携わる。
―PBXのクラウド化に対する自治体の関心はいかがですか。
各務 近年、とても高まっています。人事異動や組織改編、臨時の部署新設などへの迅速な対応が求められる中、オンプレのPBXが足かせになっていると感じている自治体が多いのです。自然災害に備えたBCP対策の観点からも、庁内に重要設備を置くことはリスクが高いと考える自治体も増えています。そうした自治体に当社では、クラウドPBX『iスマートBiz』を提案しています。
―特徴を教えてください。
岩井 自社開発のPBXはもとより、電話機も国内メーカーの国産機器を使用しており、データセンターも国内拠点を活用するなど安心して使用できる環境を整えています。
各務 さらに、20年以上にわたる実績が評価され、当社のPBXは携帯キャリアが提供する内線網「キャリアFMC」とも接続できます。そのため、近年自治体でも導入が進むスマートフォンを利用する際には、キャリアFMCを使った高い音質の内線網構築も提案できます。
―今後の自治体への支援方針を聞かせてください。
各務 当社では、クラウドPBXの導入を機に、スマートフォンによる内線活用も合わせて提案し、場所に縛られない自由で柔軟な「新しい働き方」の実現を支援していきたいと考えています。ぜひお問い合わせください。