※下記は自治体通信 Vol.60(2024年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[幸田町]■人口:4万2,108人(令和6年8月1日現在) ■世帯数:1万6,922世帯(令和6年8月1日現在)■予算規模:311億3,251万4,000円(令和6年度当初) ■面積:56.72km²
財政を支える貴重な財源として、ふるさと納税に力を入れる自治体は多いが、幸田町(愛知県)では、返礼品をきっかけに生まれた寄附者とのつながりを、まちのにぎわい創出につなげる、「ふるさと納税のその先」の取り組みが話題を集めている。同町では、令和2年よりソニーの地元工場で製造される自律型エンタテインメントロボット『aibo』を返礼品の1つに加えている。この『aibo』を切り口に、観光名所や名産品をつくり出す「aiboツーリズム」の取り組みの輪が町内に広がっているのだ。
この取り組みを主導する同町企業立地課の福島聡人氏は、きっかけをこう振り返る。「じつは、『aibo』を返礼品に加えた当時は、町民でさえ地元で『aibo』が生まれていることを知る人はほとんどいませんでした。『aibo』は当時、113万円の寄附額の返礼品だったのですが、予想に反して多い年には50体以上が返礼品として選ばれるほどで、その人気に驚きました。さらに、『aibo』の生まれ故郷である工場を訪れ、道路脇から撮影して帰る『aibo』オーナーさんまでいると耳にし、せっかく町を訪れてくれる方々に申し訳ないという気持ちから、令和4年6月に役場内のカフェを「aiboの遊び場」へと改修したのが、aiboツーリズムのきっかけでした」。
『aibo』に着想を得た取り組みはその後、町役場の後押しで拡大。地元神社を舞台にした「aiboの七五三」やカフェ店による「aiboタオル」や「aiboマグカップ」、和菓子店の「aiboどら焼き」や「aibo煎餅」、内装に『aibo』をあしらう宿泊施設などが次々と登場。『aibo』オーナーの「聖地」となりつつあるようだ。前出の福島氏は、「目立った観光地のない当町で、『aibo』はいまや立派な観光の呼び物となっており、町民には『aibo』の故郷としてのシビックプライドまで生まれていると感じています」と語る。「ふるさと納税を地域活性化の一助に」とする制度本来の趣旨を体現する成功事例といえよう。