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東京都の取り組み
先進事例2024.10.10
オフィス改革の推進①

職員自らつくる『未来型オフィス』で、柔軟で質の高い働き方を実現

[提供] コクヨ株式会社
職員自らつくる『未来型オフィス』で、柔軟で質の高い働き方を実現
この記事の配信元
コクヨ株式会社
コクヨ株式会社

※下記は自治体通信 Vol.61(2024年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

コロナ禍以降、「デジタル化」や「柔軟な働き方」へのニーズの高まりを受け、自治体でも「オフィス改革」の機運が高まりを見せている。しかし、進め方がわからず躊躇する自治体も多いようだ。そんななか、東京都では、令和2年度から進める都政の構造改革の一環で「ワークスタイル変革プロジェクト」を推進。「自分たちのオフィスは自分たちでつくる」を合言葉に、職員の柔軟な働き方を実現し、業務の生産性向上を図っている。取り組みの詳細をデジタルサービス局の2人に聞いた。

[東京都] ■人口:1,418万7,176人(令和6年8月1日現在) ■世帯数:755万2,632世帯(令和6年8月1日現在:参考値) ■予算規模:16兆5,584億円(平成6年度当初) ■面積:2,199.94km² ■概要:1603年(慶長8年)に徳川家康が幕府を開いて以来、日本の首都として発展した世界的大都市。現在は国内人口の約1割が居住し、そのGDPはオランダ1国に匹敵する。東は江戸川を境に千葉県、西は山地を境に山梨県、南は多摩川を境に神奈川県、北は埼玉県にそれぞれ接しており、特別行政区のほか、26市5町8村からなっている。
インタビュー
吉成 恵子
東京都
デジタルサービス局 デジタル戦略部 デジタル改革担当課長
吉成 恵子よしなり けいこ
インタビュー
根津 大樹
東京都
デジタルサービス局 デジタル戦略部 デジタル改革課 課長代理
根津 大樹ねづ ひろき

時間や場所に縛られずに、質の高い業務遂行を目指す

―オフィス改革に取り組むことになった経緯を教えてください。

吉成 いま東京都では、コロナ禍で顕在化した課題を解決し、都政のQOS*を向上させるため、都政の構造改革「シン・トセイ」に取り組んでいます。この改革では、行政手続のデジタル化やオープンデータの推進などのほか、都庁全体の業務の生産性向上を図るため、ワークスタイルの変革にも取り組んでおり、その一環として『未来型オフィス』の整備を推進しています。令和2年度に私たちのデジタルサービス局のフロアから取り組みを開始し、令和7年度中には約120ある本庁全部門で整備が完了する予定です。

―『未来型オフィス』とは、どのようなものでしょうか。

根津 デスクや固定電話、紙などに制約された、これまでの働き方を抜本的に見直し、場所や時間を有効に活用した働き方を目指して整備されたオフィスです。職場の状況や業務の内容に応じて、オフィスやテレワーク、サードプレイスなど、職員自らが働く場所を自由に選択できるので、柔軟で質の高い働き方を実践できます。

吉成 加えて、職員一人に1台の公用スマートフォン配備やクラウド利用のほか、業務用個人端末をコンバーチブル型の軽量端末に更新しています。このようなツール面の強化とともに、各職場のテレワークに関する工夫やコツをまとめた事例集を展開し、新しい働き方に関する知識の面でも強化を図っています。

*QOS : クオリティ・オブ・サービスの略称。ここでは、より質の高い行政サービスの意味で使用

職場の現状課題に応じて、整備後も継続的に改善

―オフィス整備を実施するにあたり、重視しているのはどのようなことでしょうか。

吉成 「自分たちのオフィスは自分たちでつくる」を合言葉に整備を行っています。部門ごとに職場の状況や業務内容が異なるため、現場の職員たちの意見やアイデアを取り入れたレイアウト検討が必要だと考えているからです。整備した後もそれぞれの職場の実情に応じて部門ごとにバージョンアップを実施し、その時々に最適なオフィスをつくっています。

根津 部門ごとのレイアウト検討にあたっては、現場の職員が、新しい働き方やオフィスのあり方のイメージを持ったうえで進められるよう、委託事業者の協力を得て、まずは先進的なオフィスの視察やeラーニングによる基礎知識、参考事例のインプットから始めています。

 その後、各部門で職場の現状課題や新しい働き方のコンセプトを考えるワークショップを実施し、そこで集約された意見を踏まえてレイアウトを検討しています。

―これまでの成果を聞かせてください。

根津 コミュニケーションエリアや集中エリアなどのスペースを生み出すために、文書削減を同時に行ったため、ペーパーレス化も推進され、場所に縛られない働き方のさらなる実践につながっています。

 こうした取り組みは、職員の働き方に着実に良い影響を与えています。整備が完了した部門を対象に、整備前後のオフィスに関するアンケートを行ったところ、「オフィス環境の満足度」「活発な議論を通して意思決定がされているか」「効率的に業務に取り組めているか」の全項目で、数字が改善しました。

吉成 今後も、『未来型オフィス』を活用した運用面の工夫やバージョンアップを続け、質の高いワークスタイルの実現を推進していきます。

 また、全国の自治体とも情報を交換し、新たな視点を取り込みながら、さらなる改善も図っていきたいですね。

支援企業の視点
オフィス改革の推進②
職員と組織全体の生産性向上は、オフィス改革から始まる

ここまでは、オフィス改革で職員の働きやすさや、業務の生産性向上を目指す東京都の取り組みを紹介した。ここでは、全国の自治体のオフィス改革を支援するコクヨ社の小島氏を取材。「オフィス改革により職員一人ひとりの生産性が向上し、質の高い行政サービスの実行につながる」という。同氏にオフィス改革を進めるうえでのポイントについて聞いた。

インタビュー
小島 一輝
コクヨ株式会社
ワークプレイス事業本部 TCM本部 営業第1部 第2グループ
小島 一輝こじま かずき
平成7年、滋賀県生まれ。平成30年に同志社大学を卒業後、コクヨ株式会社に入社。同年より現職。ワークプレイス事業本部にて、全国自治体のオフィス環境整備に向けた提案支援を担う。

自治体を取り巻く環境変化が、オフィス改革のきっかけに

―なぜ、いまオフィス改革に取り組む自治体が増えているのでしょうか。

 現代の社会課題が多様化・複雑化したことで、従来の自治体職員の働き方や業務の進め方では対応しきれなくなってきており、人やモノなどといったコスト面での「ムリ・ムダ・ムラ」を解消して定型業務の効率化を促すことが重視されるようになっています。

 それと同時に、部門間での連携や、職員の自律的な働き方の推進によって、成果の質を高め、生産性を向上する取り組みが求められるようになりました。こうした取り組みを実現するために、職員の新たな働き方に合わせた、オフィス改革の必要性を認識する自治体が増えているのです。

―オフィス改革は、どのように進めたらいいのでしょう。

 庁舎建て替えのタイミングであれば、オフィスレイアウトや使用するツールなども抜本的に見直すことができますが、社会変化のスピードが増しているいま、建て替えを待つのではなく、既存の庁舎を活かしながら新しい働き方に合わせて空間を整備する自治体が増えています。

 その際にポイントとなるのは、自治体が目指す「ありたい姿」という目標設定です。その目標からバックキャスティング*してロードマップを描き、スモールステップで進めていくことで、庁内でオフィス改革に向けての意識醸成を促すことが大切です。当社では、こうしたオフィス改革に至るまでの流れを、一気通貫で伴走支援しています。

―どのような支援でしょう。

 当社では、オフィス整備を行うロードマップの作成だけでなく、準備段階から進め方を一緒に考えるところから始め、整備中の職員の意識醸成、整備後の運用サポートに至るまで伴走支援を段階的に行っています。

 たとえば、「基礎知識・参考事例のインプット」では、職員たちにABW*の考え方を深めてもらうために、民間企業の先進的なオフィスを視察する機会を設けます。これにより、整備後に目指すオフィスのイメージを職員につかんでもらい、自分たちの「ありたい姿」や働く環境について、職員間で議論を重ね、オフィス整備の方針を決定していきます。当社の支援で、こうした機会を設けているのは、「職員自らがつくること」を重視しているからです。

*バックキャスティング : 視点を未来に置き、目指すべき将来像を定めたうえで、目標から逆算して、どうしたら達成できるかを考えること
*ABW : アクティビティ・ベースド・ワーキングの略称。業務における活動に合わせて、自ら働く場所や時間を選択できる働き方を指す

職員の柔軟な働き方の実現で、組織全体の生産性向上へ

―詳しく教えてください。

 オフィス改革を起点に、職員が「働きやすさ」を実感できれば、働く意欲が湧き、一人ひとりの業務効率の向上が期待できます。そして、自分たちの「ありたい姿」に基づいた働き方ができるオフィスを、自分たちでつくるプロセスを経験したからこそ、その後の運用や改善のサイクルを回し続けられるのです。そうなれば、職員一人ひとりだけでなく、組織全体の生産性が向上するという好循環を生み出し、ひいては質の高い行政サービスの実行にもつながると考えています。

―今後、どのように自治体を支援していきますか。

 職員の「働きやすさ」だけでなく、オフィス改革の過程と実現を通じて、職員の「改革への意識」を高める支援も行い、自治体の住民サービス向上も後押ししていきたいと考えています。

 過去に支援した自治体職員からは、「身近なところから『改革』はできるのだという自信が湧いた」という言葉もいただいており、職員自らがオフィス改革を実現したという自信は、ほかの領域でも改革を実行して課題を改善していこうという意欲にもつながるのではないかと考えています。

 当社では、オフィス整備を検討している段階から伴走支援をしています。職員の働き方に合わせたオフィス改革を考えている自治体のみなさまは、ぜひお気軽にお声がけください。

コクヨ株式会社
コクヨ株式会社
設立

明治38年10月

資本金

158億円

売上高

3,287億円(令和5年12月期:連結)

従業員数

6,931人:連結 / 2,142人:単体(令和5年12月31日現在)

事業内容

文房具の製造・仕入れ・販売、オフィス家具の製造・仕入れ・販売、空間デザイン・コンサルテーションなど

URL

https://kokuyo.jp/mado

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