

令和3年から全国に先駆けてアナログ規制の見直しに取り組んできた福岡県福岡市。その見直し完了率は93%に達し、全国でもトップクラスの進捗率です。福岡市ではどのようにして見直しを進めているのでしょうか。これから取り組みを進める自治体にとって参考になるスケジュールや体制について伺いました。
1. 全体的なスケジュール
——福岡市では全国に先駆けてアナログ規制の見直しを進めています。まず、取り組み全体のスケジュールについて教えてください。
吉原:令和3年11月に福岡市の高島市長がデジタル臨時行政調査会の構成員に就任したことをきっかけに、アナログ規制見直しの取り組みについて検討をスタートしました。
令和4年2月には対象条例等の一覧を作成。その後、所管部署との調整を経て改正に着手し、令和4年6月および令和5年9月に条例等の改正を実施しました。令和6年12月時点では、改正を必要とした条例等のうち93%の見直しが完了しています。

福岡市では令和4年、5年にアナログ規制見直しのために条例等の改正を実施した。
——令和4年6月、令和5年9月に実施した条例改正について、それぞれどのような内容だったのか教えてください。
吉原:令和4年6月には、国のアナログ規制7項目にある「目視規制」や「往訪閲覧・縦覧規制」などにあたるいくつかの条例を改正しました。

代表的なアナログ規制は、大きく7項目に分類できる。
例えば、映画館や野球場など興行場の定期清掃については、これまで1日に1回以上の清掃や、1カ月に1回以上の消毒といった定期的な対応を義務づけていましたが、利用状況や汚れの度合いに基づく清掃・消毒を可能として、定期的な対応を廃止しました。また、飼い主不明の犬の公示についても、インターネットでの公示を可能にするなどの改正を行いました。

令和4年6月、令和5年9月に行った条例改正。
令和5年9月には「書面掲示規制」に関わる条例を一括で見直し、これまで特定の場所に書面で掲示が必要だった情報を、インターネット上でも閲覧できるよう義務付けました。例えば、市役所内の自転車駐車場が休場する際の掲示を、オンラインでも閲覧することを義務付ける改正を行いました。

市役所内の自転車駐輪場の様子。従来は、休場する際は写真のような現地の看板のみだったが、オンラインでも休場が確認できるようになった。
2. 推進体制
——見直しにあたって、どのような推進体制を取ったのでしょうか。
吉原:福岡市では、法制担当、行革担当、DX推進担当の3部門からそれぞれ2名ずつ、計6名をメンバーとしたプロジェクトチームを立ち上げ、令和4年4月には、新たに設置した「総務企画局DX戦略部サービスデザイン担当」に推進業務を移管しました。
また、DXの取り組みについて全体的なガバナンスを強化するため、副市長をCIO(Chief Information Officer)とした、局長級が参加する「DX推進会議」を設立。プロジェクトチームや所管部署だけで進めるのではなく、幹部会議を通じた報告体制を構築し、アナログ規制見直しの取り組みについても理解を求めることで、トップダウンと現場の意見を融合した推進体制を構築しました。

プロジェクトチームによる推進と並行して、幹部会議で合意を取りながら取り組みを進めた。
——もともとのきっかけは、市長がデジタル臨時行政調査会の構成員に就任したことでしたが、それだけではなく、推進体制にもさまざまな工夫が見られますね。
吉原:トップダウンのみでは、やはり現場に取り組みを浸透させるのは難しい部分もあります。取り組みの意義や考え方を現場の職員一人ひとりに理解してもらうためには、全庁的な合意形成が欠かせないと考えています。

総務企画局 DX戦略担当 課長 吉原 瑛二氏
——取り組みの開始後には進捗状況の把握も重要になってくるかと思います。どのように把握しましたか。
吉原:所管部署に対して対象リストをもとに全庁照会を実施し、情報を更新しながら進捗状況を把握していました。この対象リストは「見直し予定時期」だけでなく、「見直しが難しい場合の理由」なども記載しており、所管部署との調整状況は「DX推進会議」を通じて全庁に共有しました。令和6年3月に対象リストの内容をもとに、福岡市独自の工程表を作成し、見直しを進めるよう方針決定しました。また、工程表はその後も定期的に更新し、進捗の遅れがある場合には、該当する課に対して確認を行い、適宜フォローアップを実施しました。
新飼:対象リストや工程表の活用によって、全庁的な視点で進捗状況を「見える化」できるようになりました。状況が一目で把握できるようになった結果、庁内全体での進捗管理がスムーズに進むようになったように思います。また、現時点で見直しが難しい項目があっても、工程表等を活用することで、将来的な対応を迅速かつ効率的に行える基盤を整備できたと考えています。

工程表等を通じて、進捗状況を適切に確認しながら進めた。

設立 | 2017年7月18日 |
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資本金 | 1,544,977,927円(資本準備金含む) |
代表者名 | 石井 大地 |
本社所在地 | 〒151-0051 |
事業内容 | グラファーは、「プロダクトの力で 行動を変え 社会を変える」をミッションに掲げ、社会が直面する課題の最前線で、企業・行政機関における業務のデジタル変革を手掛けるスタートアップ企業です。 |
URL | https://graffer.jp/ |
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