【自治体通信Online 特別連載】
次世代自治体経営のカタチ⑤
これからの自治体経営のあり方について経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(BCG)が考察する本連載の第5回は「脱炭素社会における自治体の役割」について前後編にわたってお届けします。自治体に求められるとビジョンと具体策とは? BCGの丹羽 恵久氏(マネージング・ディレクター&パートナー)と森原 誠氏(パートナー)が徹底検証します。
カーボンニュートラルを取り巻く最近の動向
今回と次回の2回にわけてカーボンニュートラルを論じたい。
昨年10月に菅義偉首相が2050年までにカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を宣言して以来メディアで見かけない日はなく、グリーンイノベーション基金(通称、2兆円基金)をはじめ、様々な政策が矢継ぎ早に打たれている。また、企業も、1年前とは比べられないほど急速にカーボンニュートラルに対応した取り組みを加速させつつある。
自治体においても、2050年までにカーボンニュートラルを目指す「ネットゼロシティ」宣言の表明が急速に増えている。2021年6月時点で、400超の自治体(都道府県、市区町村含む)にのぼっており、表明自治体の人口は1億1千万人強だ(図表1参照)。
ただし、その実現に向けた取り組みは必ずしも具体化しておらず、国・地方脱炭素実現会議での議論やその中で取りまとめられた「地域脱炭素ロードマップ」を踏まえた具体策が期待されている。
自治体にとってのカーボンニュートラル
日本社会全体として2050年のカーボンニュートラルを実現するためには、産業側が努力するだけではなく、消費者/住民の意識向上や行動変容が不可欠だ。さらに、消費者である住民の変革を促すための自治体の取り組み(規制・補助策)が重要である。
また、カーボンニュートラルの大きな特徴のひとつは、地球温暖化対策であると同時に成長戦略でもあることだ。
つまり、自治体にとっても自らの地域でカーボンニュートラルの要件をどう充たすかだけではなく、その自治体の課題解決や、魅力化・差別化のための武器として考える必要がある。
その際、カーボンニュートラル単体で考えるのではなく、自治体としての戦略全体の中にカーボンニュートラルという切り口を織り込んで考えることが重要だ。
つまり、カーボンニュートラルを切り口にした自治体としての提供価値、付加価値の再定義を行う、いわばカーボンニュートラル・トランスフォーメーション(CNX)と位置づけるということだ。
自治体がカーボンニュートラルに向けて考えるべき10個のポイント
BCGでは、カーボンニュートラルへの取り組みを検討するためには、3つの切り口が重要と考えている(図表2参照)。
守りの視点として、
①既存事業において『要件を充たす』
攻めの視点として、
②既存事業でカーボンニュートラルを軸に『競争優位を築く』
③カーボンニュートラルを通じた『新しい事業機会を捉える』
である。
※次回は「3つの切り口で自治体が検討すべき10個の取り組み候補」等をご紹介します。
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丹羽恵久(にわ・よしひさ)さんのプロフィール
ボストン コンサルティング グループ マネージング・ディレクター&パートナー
BCGパブリック・セクターグループの日本リーダー。ハイテク・メディア・通信グループ、社会貢献グループ、および組織・人材グループのコアメンバー。央官庁・自治体・スポーツ団体・NPOなどの組織、および通信・メディア・エンターテインメントなどの業界の企業に対して、成長戦略、デジタルサービス開発、組織変革、経営人材育成などのプロジェクトを手掛けている。
慶應義塾大学経済学部卒業。国際協力銀行、欧州系コンサルティングファームを経て現在に至る。
<連絡先>niwa.yoshihisa@bcg.com
森原誠(もりはら・まこと)さんのプロフィール
ボストン コンサルティング グループ パートナー
BCGパブリック・セクターグループのコアメンバー。中央官庁や自治体向けの調査・政策立案の支援などを行っている。
東京大学法学部卒業、UCLA法科大学院修了。総務省を経て2011年にBCGに入社、その後、株式会社青山社中共同代表を経て、2019年にBCG再入社。
<連絡先>morihara.makoto@bcg.com