ネットワーク強靭化は完了しかし運用面に課題
―自治体における「自治体情報システム強靭性向上モデル」への対応状況を教えてください。
総務省が一昨年、「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を発表して以来、各自治体は喫緊の課題として対策にあたってきました。
しかし一方で、個別の情報システムの運用を見ると、自治体職員が本来望んでいたものとはかけ離れたものになっている場合が多いです。「もともとインターネットクラウドを利用していたシステムをオンプレミスに切り替えた結果、作業コストが増え、業務効率が悪くなってしまう」というケースもあり、情報システム担当者は頭を悩ませています。
―自治体の情報システムはどのような運用が望ましいのでしょう。
オンプレミスの場合は、システム構成を柔軟に決められるメリットがありますが、システムメンテナンスは自治体職員が行う必要があります。中小規模の自治体などで情報システム部門に十分なリソースがない場合、この作業は大きな負担になります。
おすすめしたいのは、自治体専用のネットワーク、LGWAN上で各事業者がアプリケーションサービスを提供しているLGWAN-ASPの利用です。LGWAN-ASPはいわば自治体専用のクラウドサービス。サービスの構築・保守は事業者が行うため、自治体職員の作業コストを抑えながら、総務省のガイドラインに沿った環境でサービスを利用できます。
LGWAN-ASP型のグループウェアを提供開始
―サイボウズでは4月にLGWANASPを活用した『サイボウズ ガルーン for LGWAN』の提供を開始したそうですね。
はい。サイボウズのグループウェアである『ガルーン』をLGWAN-ASP型で利用できるようになりました。ネットワーク強靭化にともない、当社は自治体向けのサービスを最注力分野と位置づけ、検討を重ねてきました。
自治体に特化したサービスとして、『ガルーン』の標準機能にくわえて、自治体から好評をはくしているオプション機能の「グループメール」を、追加費用なしで使えるようにしました。まさに「自治体のためのグループウェア」です。
部署を超えたプロジェクトのコミュニケーション基盤にも
―『ガルーン』で自治体に好評な点はどんなところでしょう。
スケジュールや掲示板のような一般的な機能にくわえ、職員同士のコミュニケーションを促進したり、業務効率化につながる機能が充実しているところです。たとえばメールボックスを複数の職員で共有する「グループメール」。組織のアドレスに届いたメールに「ステータス」「担当者」を設定し、必要な場合はコメントをすることができます。
一つひとつのメールを「誰が担当しているのか」「対応状況はどうなっているか」を組織内で見える化し、お互いにフォローし合うことで、業務の属人化を防ぎます。最近は標的型攻撃のリスクを低減するため、個人メールアドレスを廃止する自治体が増えています。
業務の効率化、セキュリティ強化の両面から、メールの共有機能は今後、自治体に必須になるでしょう。
また、「スペース」もよく利用されています。これは『ガルーン』のユーザー同士でグループを作成し、情報のやりとりやタスク管理ができる機能です。メールよりも気軽にコミュニケーションできますし、過去のやりとりが共有できるので、担当者が異動するときの引き継ぎにも便利です。
自治体全体で取り組むプロジェクトで利用されることが多く、災害対策委員会やマイナンバー対応チームなどで実際に活用されています。利用している自治体では「もはやメールベースのコミュニケーションには戻れない」という声が出ています。
―今後、自治体をどのように支援していきますか。
グループウェアは「導入して終わり」という製品ではありません。むしろ導入後、「ツールをどう使って業務を改善していくか」のほうが重要です。
サイボウズでは、グループウェアの開発だけでなく、組織のチームワークを向上させる取り組みをさまざまな分野で行っています。そのような活動を今後、自治体にも広げていきたいと考えています。