2015年12月、フランス・パリで開催されたCOP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)において、2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組みである「パリ協定」が世界約200か国の合意で成立するなど、CO2削減は世界共通の環境課題となっています。この課題を解決するには、あらゆるジャンルでゼロ・エミッション化が必要であり、自動車産業ではガソリン・デイ―ゼル車からEVへの転換が既定路線だと言われています。
本記事では、近年徐々に現実性を帯びてきた自動車のEV化に向け、各企業が知っておくべきこと、今から立てておくべき対策について考察しました。
日本国内でもEVが一般的になる・・?
1997年にトヨタが世界初の量産ハイブリッドカーであるプリウスを発売し20数年が経過しました。その後、クリーンディーゼル、プラグインハイブリッドなど、さまざまな省燃費技術が生まれ、ついには走行段階で一切CO²を排出しないEVが登場しました。
そして、菅総理が就任後初の所信表明演説において、「2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指す」と宣言したことに併せて、2035年までにすべての新車販売をEVに切り替え、純ガソリン車・純ディーゼル車の新車販売を禁止する方針を明らかにしました。つまり、中古車としての耐用年数を計算にいれた場合、2050年の時点で、国内を走行する車のほとんどがEV、もしくは最低でもHVに変わることになります。
しかし、航続可能距離や走行性能などを含むEV技術の完成度、交通・電力供給インフラの整備状況、やや高額な販売価格、そして顧客ニーズの兼ね合いなど、EVがモビリティのスタンダードとして普及するには、多くの課題が山積しています。事実、2020年7月時点における日本のEV普及率はわずか0.7%で、6割以上がEVとなっている北欧・ノルウェーをはじめ、他の欧米各国と比較すると、日本国内のEV化は遅れていると言えるでしょう。
国内のEV化が遅れている原因は、前述したハードルの他に大きく2つあります。1つは、日本だけの特殊なカテゴリーである軽自動車の存在です。現在市販されているEVより断然低コストで購入できるため、個人・法人問わずEVへの転換に経済的魅力を感じにくいのかもしれません。今後軽自動車に対する政策も注目しておく必要がありそうです。もう1つは、日本国内におけるHV・PHEVなどの低燃費車の存在です。すでに一定のシェアと評価を得ているため、一足飛びに「EVを購入しよう!」と思えないのが日本の現状ではないでしょうか。
EVは走行時に一切のCO²を排出しませんが、現時点で発電量の7割以上を火力発電に頼っている日本では、動力である電気を作る過程でCO²が大気中に放出されるため、EVは完全なるゼロエミッションビークルと言い切れません。つまり、日本国内でEVが一般普及するには、SDGsにも掲げる「エネルギーのクリーン化」も成し遂げなくてはならないのです。ですから、太陽光や風力など、再生可能エネルギー発電の比率を高めたうえで、環境保全への貢献度でも価格面でも魅力的なEVを発売していくべきだと言えるでしょう。
国内におけるEV化の動向
国内トップメーカーのトヨタ自動車は2021年4月19日、中国で開催中の上海モーターショーでフルラインナップ化EVシリーズの第1弾である、「TOYOTA bZ4X(トヨタ ビーズィーフォーエックス)」のコンセプト車両を初披露しました。同社はこれまで、プリウス・アクアを送り出し世界のHV市場を牽引してきましたが、近い将来訪れる世界的EV化に向け、自社EV のラインナップを2025年までに、70車種程度へ拡充する計画を立てています。
EVの販売ラインナップが充実し、ユーザーにとって車としての魅力が上昇すれば、必然的にEV全体の販売台数が増え製造ラインが効率化しますし、EVの市場販売価格が低下することも大いに期待できるため、普及率も必然的に伸びていくでしょう。
また、日産自動車はカーボンニュートラルを目指していく中で、エンジンを発電専用に使う「e-POWER」を前面に打ち出し、搭載車種のバリエーションをノート・セレナに続き、2020年6月に登場したSUV「キックス」へも初搭載。日産は、トヨタが席巻する従来のHVよりCO²排出量の削減効果が高く、早い普及スピードが見込まれるe-POWERこそ、カーボンニュートラルを実現する「脱エンジン車」と自負しているようです。
備考:民間企業がEV化に向けて行うべきこととは
前述したように日本国内全体のEV化には課題が多くあるため、早急にEVを買い替える必要はないものの、それはあくまで個人レベルの話です。企業レベルでは社会の流れに乗り遅れないよう早めに対策を練る必要があります。
日本企業においては、社用車・業務用車のHV採用がある程度進んでいますが、環境問題の解決が急務となっている世界的な風潮を考えると、近い将来、「企業が使用する車両はEVのみ」という時代もやってくるかもしれません。すでに平成15年から東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・愛知県・三重県・大阪府・兵庫県などでは、粒子状物質排出基準に満たない一部のディーゼル車(車検証上の用途が貨物、乗合、特種のもの)の乗り入れ規制が実施されていますが、先々、ガソリン車も規制対象などと言うことも考えると、動向は見逃せません。
さらにSDGsへの取り組みと関連し、企業への投資をする際に財務情報だけではなく、環境問題解決に向けた役割を果たしているかどうか(ESG対策を講じているか)を重視すべきだという、責任投資原則(PRI)を国連が提唱した影響も見逃せません。なぜなら、今後企業は経営基盤を支えている機関投資家から、供給先の選定基準や従業員の労働環境といった情報開示を求められた際に、いつまでもガソリン車を運用していると分かればESG対策を講じていないと判断され、投資対象から排除される可能性も0ではないためです。
つまり、国内企業はこれまでのように採算性やコスト削減だけではなく、SDGs、とくにESG対策を踏まえたうえで、運用する社用車を取捨選択しなければならないのです。加えて、購入するEVがWell to Wheel(油田からタイヤを駆動するまでのCO²排出量)であるかを考慮したうえで、本当に環境問題解決へ貢献しているか否かを見定め、採用を決める必要もあります。
まとめ
冒頭で述べたように、CO²削減が人類にとって持続可能な成長目標、つまり「SDGs」をクリアする必要性がある以上、近い将来世界的な自動車のEV化は必ずやってきます。企業にとっては、ガソリン・ディーゼル車からEVへの転換は、追加のコストや準備に時間を要するため、自社の経営ビジョンや戦略を踏まえ、早めに着手していくことが望ましいといえます。
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住友三井オートサービス株式会社
本店所在地 |
東京都新宿区西新宿三丁目20番2号 |
設立 |
1981年(昭和56年)2月 |
資本金 |
136億円 |
売上高 |
3,061億円(2021年3月期:単体) |
従業員数 |
1,975名(2021年4月1日時点:単体) |
事業内容 |
1. 各種自動車・車両のリース・割賦販売 2. 各種自動車・車両の整備修理、検査、点検に関する業務 3. 中古の自動車・車両の売買 4. 金融業務 5. 上記1~4に関連する一切の業務 |
URL |
https://www.smauto.co.jp/index.html |
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