※下記は自治体通信 Vol.50(2023年6月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
自治体の職員は日々、住民生活の維持・向上を図るべく、業務に取り組んでいる。そうした日常でもらう住民からの「感謝の言葉」は、職員にとって励みとなり、ときには、業務の本質に改めて気づかせてくれるヒントにもなる。とはいえ、実際に住民から感謝の言葉をもらえる機会はそう多くはないに違いない。そこで本連載では、住民から感謝の言葉を受けた自治体職員をクローズアップ。エピソードを通じて、職員たちの誇るべき仕事ぶりを紹介する。
等身大の住民と向き合うことの大切さに、改めて気づくことができました
茨城県龍ケ崎市
無料職業紹介事業所 職業紹介責任者 兼 就労支援員
寺田 遼てらだ りょう
―感謝の言葉を伝えられた状況を教えてください。
当市は令和3年度に県内初となる「無料職業紹介事業所」を立ち上げ、そこで私は職業紹介責任者兼就労支援員として日々、窓口で相談業務に当たっています。その女性が窓口を訪れたのは、令和4年夏のことでした。女性は60代後半で、介護が必要な母親と二人暮らしをしていますが、すでに1年以上、仕事が見つからない状況だったそうです。ほかの職業紹介サービスでは、高齢を理由に紹介を断られていたと聞きました。そこで私が複数の職業を紹介したところ、食品工場の仕事が内定。その女性は私がいる窓口までわざわざ来て、感謝の気持ちを伝えてくれたのです。
―どのような仕事ぶりが感謝の言葉につながったと思いますか。
「仕事を探してくれた」というよりも、「自分を救ってくれた」ことをありがたく感じている。そういった気持ちが、女性のお話からは伝わってきました。就労支援員は求職者に対し、年齢や、希望する仕事の内容、勤務時間などさまざまなことをヒアリングしますが、私はなによりも、「求職者が困っていること」をまず把握し、その解決に向けた職業紹介を心がけてきました。今回の女性の場合、母親を介護で支えなくてはならないなか、1年以上も仕事が見つからなかったわけですから、「とにかく、すぐに働ける職場を探してあげること」を私は最優先しました。ほかの職業紹介サービスでは紹介すら断れられていた女性は、そんな私の姿勢に頼もしさを感じてくれたのかもしれません。
―感謝の言葉からはどのような気づきを得られましたか。
目の前にいる「等身大の求職者」と向き合うことの大切さを改めて実感しました。求職票や履歴書に書かれた情報だけに頼るのではなく、丁寧な対話を通じ、現在の生活状況や本人の性格など、求職者のことをより深く知ろうと努める。「そうすることによって、企業とのマッチング成功率はきっと高まる」とは当初から考えていたのですが、それだけではないのだと。私の仕事に対する姿勢が、「求職票ではなく、自分のことをしっかりと見てくれている」と求職者に感じてもらえれば、我々の業務に対する信頼感や安心感にもつながっていくのだと気づきました。
『自治体通信』では、自治体職員のみなさんが住民に感謝されたエピソードを募集しています。
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jt_editorialdept@ishin1853.co.jp 『自治体通信』編集部