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連載コラム「住民からの感謝状」
大阪市天王寺区 職員の山中さんへ (北海道在住 60代 夫婦)

《「住民からの感謝状」3通目》遺骨ではありますが、30年ぶりに田舎へ連れて帰れます

《「住民からの感謝状」3通目》遺骨ではありますが、30年ぶりに田舎へ連れて帰れます

※下記は自治体通信 Vol.51(2023年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

自治体の職員は日々、住民生活の維持・向上を図るべく、業務に取り組んでいる。そうした日常でもらう住民からの「感謝の言葉」は、職員にとって励みとなり、ときには、業務の本質に改めて気づかせてくれるヒントにもなる。とはいえ、実際に住民から感謝の言葉をもらえる機会はそう多くはないに違いない。そこで本連載では、住民から感謝の言葉を受けた自治体職員をクローズアップ。エピソードを通じて、職員たちの誇るべき仕事ぶりを紹介する。

感謝の言葉を受けて
それぞれに家族や親族との絆がある。その気持ちをもって接するように
インタビュー
山中 正則
大阪府大阪市
天王寺区保健福祉課 健康推進グループ 係長
山中 正則やまなか まさのり

―感謝の言葉を伝えられたときの状況を教えてください。

 以前、私が生活保護ケースワーカーをしていたときの話です。当時はホームレス対応専門の部署に所属しており、路上で倒れて病院に運ばれた人に生活保護の申請をしてもらい、医療扶助を行っていました。そうした方々は、たいていお金をもっていませんから。そのまま病院で亡くなる人も多く、ある60代くらいの男性を担当した際も、残念ながら亡くなってしまいました。その後なんとか親族と連絡が取れ、その親族は亡くなった人と年齢が近いいとこだったようで、わざわざ北海道から遺骨を引き取りに大阪まで来ることに。実際、夫婦で来られて、遺骨をお渡しした際に、いただいたのが、この言葉でした。そして、何度も「ありがとうございます」と感謝の気持ちを伝えてもらったのです。本当に驚きました。

―なぜ驚いたのですか。

 当時は人に罵倒されることはあっても、感謝されることはほぼなかったからです。ホームレスになる人は、家族や親族との関係性が壊れている場合が多いんです。とはいえ、ホームレスの人が入院したり、亡くなったりした場合は家族や親族に連絡を取り、扶養援助や遺骨の引き取りをお願いしなければなりません。しかし、連絡が取れても「なぜそんな奴を助けないといけないのか」「役所で勝手に処理してくれ」と、たいてい断られるんです。私はそんななかでも、「人の命を救う仕事であり、ゆくゆくはホームレスの人が気力を取り戻して仕事を見つけてくれれば、歳出が減り、結果として住民のためになる」と考えて。一人ひとりと向き合ってきました。北海道から来た夫婦は、そうした私の気持ちを感じ取ってくれたのかもしれません。なによりも、遺骨ではありましたが、再会できたことを喜んでもらえました。

―この感謝の言葉はその後仕事にどう活かされましたか。

 改めて、ホームレスの人にもそれぞれ人生があり、家族や親戚との絆があるということを考えながら受給者と接するようになりました。また当時は、仕事に悩む若手のケースワーカーに対して、少しでも励みになればと「こういう受給者がいてね……」という話をしていました。部署は変わりましたが、いまでも印象深い大切な思い出です。

本稿は株式会社ホルグにご協力いただきました。


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jt_editorialdept@ishin1853.co.jp 『自治体通信』編集部

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