※下記は自治体通信 Vol.53(2023年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
自治体の職員は日々、住民生活の維持・向上を図るべく、業務に取り組んでいる。そうした日常でもらう住民からの「感謝の言葉」は、職員にとって励みとなり、ときには、業務の本質に改めて気づかせてくれるヒントにもなる。とはいえ、実際に住民から感謝の言葉をもらえる機会はそう多くはないに違いない。そこで本連載では、住民から感謝の言葉を受けた自治体職員をクローズアップ。エピソードを通じて、職員たちの誇るべき仕事ぶりを紹介する。
「共感」と「使命感」に基づく行動。その大切さにあらためて気づかされました
―感謝の言葉を伝えられた経緯を教えてください。
私はこの数年、パラレルキャリアの一環として、「佐野藍」という、佐野市で生産された藍草や藍染を発信するプロデュース活動を主導しています。その一つの成果として、昨年はニューヨークのファッションイベントで藍染の展示とPR動画の放映を実現しました。藍草生産者の男性から感謝の言葉をもらったのはそうしたタイミングでした。佐野の藍染づくりは、明治期から約100年の時を経て平成24年に復活したという背景があります。しかしその後、農家の減少に伴い、生産は再び縮小の道を辿っていました。そうしたなかでの活動の成果に男性は喜んでくれたのです。
―佐山さんがそのプロデュース活動を始めたのはなぜだったのですか。
発端は、私が自治体職員としての研修のなかで、佐野の藍染をテーマに取り上げたことでした。藍草の生産から染色までの藍染づくりを活性化させるために行政が打つべき施策を考察し、報告書にまとめたのです。これはあくまでも研修の一環だったので、最初は私も取材を行って報告書を作成するだけのつもりでした。しかし、取材で生産者たちとかかわるうちに、伝統産業の復興に対する人々の熱い想いに触発され、「報告書で示す産業活性化の提案を具体的な成果につなげたい」と考えるようになっていました。そこで、自治体職員としての業務の枠を超え、佐野藍のプロデュース活動に複業として取り組むようになったのです。
―感謝の言葉をどのように受け止めましたか。
目の前にいる人に抱いた共感を大事にすること。そして、決められた枠にとらわれることなく、抱いた使命感に基づいて行動をすること。自治体職員の仕事にも通じるものとして、それらの大切さにあらためて気づくことができました。私はその後、庁内でも佐野の藍染づくりに対する支援を呼びかけるようになりました。その結果、市として佐野藍のPRを後押しすることにもつながりました。「報告書」において復興のロードマップを描いた私には、それを実現させる使命があると思っています。その使命感のもと、今後も生産者や市の職員たちと協力しながら、佐野の藍染づくりを盛り上げていきます。
『自治体通信』では、自治体職員のみなさんが住民に感謝されたエピソードを募集しています。
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jt_editorialdept@ishin1853.co.jp 『自治体通信』編集部